カシリアは、彼女の独り大食いショーに半ば感心しながら、ゆっくりと肉を口に運んでいた。
一方の彼女は、誰にも食べ物を奪わせまいとするような警戒の表情を浮かべつつも、実に気持ちよさそうに食事を楽しんでいる。
「誰も奪ったりしないんだから、そんなに急いで食べなくてもいいんじゃないか?」
「そうだけどさ、ママにこんな食べ方をしてるところを見られたら、きっと機嫌が悪くなるんだ。だから、あんたみたいにこっそり隠れて食べてるの」
「オレみたいに隠れて食べるって、オレはただ――」
言いかけて、カシリアは言葉を飲み込んだ。
自分が王子だと気づかれれば、彼女は慌てて取り繕い、貴族らしい仮面を被るだろう。
それでは、この自然な姿は二度と見られなくなる。
「……コホン。まあ、確かにオレも隠れて食べていたのは事実だな」
これは嘘ではない。
実際、彼は今まさに、貴族たちの社交の輪から逃げてここに来ている。
「やっと認めたな!せっかく誰もいない場所まで来たんだから、男らしく豪快に食べなよ」
「フッ。オレは君みたいに乱暴な食べ方はできないんだ」
まさか、自分がこんなおとぎ話のような会話を交わす日が来るとは思ってもみなかった。
彼女は食べながら、さらにカシリアをからかってくる。
「あんたさ、男なのにそれだけしか取ってこなかったの?それで足りるの?」
そう言いながら、自分の山盛りの皿を誇らしげに掲げ、その中から大きな蟹をつまみ上げて、目の前にぶら下げた。
「これ、すごく美味しいよ。もっと取ってくればよかったのに」
「結構だ。オレはこれで十分だ」
王族として生まれ、飽きるほど贅沢な料理を口にしてきたカシリアにとって、食事はもはや栄養補給のための作業に近かった。
味に感動することは、ほとんどなくなっていた。
「あんたのそのノロノロした食べ方、まるで貴族のお嬢さんみたいじゃない?男ならもっとガツガツ食べなよ」
この言葉には、さすがに笑いをこらえきれなかった。
「それを言うなら、君のほうこそ男みたいに食べていることになるな?」
「だって仕方ないじゃん。ここの料理、全部美味しいんだもん。ママが許してくれるなら、全部持って帰りたいくらいだよ」
彼女は少し残念そうな顔をしながら、それでも手を止めずに食べ続けていた。
「……ははは」
カシリアはついに吹き出した。
「君のドレスに付いているサファイア一錠で、何か月も好き放題に飲み食いできるはずだが」
「そんなことしないよ。これはパパが買ってくれた新しいドレスなんだから。勝手に売ったりしたら怒られる」
その言葉を聞いて、カシリアはある可能性に気づいた。
メニア王国の前身であるトスアイト帝国は、かつて一夫多妻制を採用していた。
それが原因で後継争いが激化し、やがて止めどない内乱へと発展し、帝国は分裂して滅びた。
その反省から、現在のメニア王国では――
貴族は一夫一妻制、長子相続制、そして私生児は一族に迎え入れない、という厳格な法律が定められている。
王族を除き、貴族は表向きは一夫一妻だが、実際には欲望を抑えきれず、外に子を作る者も少なくない。
しかし法の下では、私生児は家名も爵位も継げず、一生「平民」として生きることになる。
生活水準だけは貴族並みであっても、社交界の輪に入ることは決して許されない。
一方の彼女は、誰にも食べ物を奪わせまいとするような警戒の表情を浮かべつつも、実に気持ちよさそうに食事を楽しんでいる。
「誰も奪ったりしないんだから、そんなに急いで食べなくてもいいんじゃないか?」
「そうだけどさ、ママにこんな食べ方をしてるところを見られたら、きっと機嫌が悪くなるんだ。だから、あんたみたいにこっそり隠れて食べてるの」
「オレみたいに隠れて食べるって、オレはただ――」
言いかけて、カシリアは言葉を飲み込んだ。
自分が王子だと気づかれれば、彼女は慌てて取り繕い、貴族らしい仮面を被るだろう。
それでは、この自然な姿は二度と見られなくなる。
「……コホン。まあ、確かにオレも隠れて食べていたのは事実だな」
これは嘘ではない。
実際、彼は今まさに、貴族たちの社交の輪から逃げてここに来ている。
「やっと認めたな!せっかく誰もいない場所まで来たんだから、男らしく豪快に食べなよ」
「フッ。オレは君みたいに乱暴な食べ方はできないんだ」
まさか、自分がこんなおとぎ話のような会話を交わす日が来るとは思ってもみなかった。
彼女は食べながら、さらにカシリアをからかってくる。
「あんたさ、男なのにそれだけしか取ってこなかったの?それで足りるの?」
そう言いながら、自分の山盛りの皿を誇らしげに掲げ、その中から大きな蟹をつまみ上げて、目の前にぶら下げた。
「これ、すごく美味しいよ。もっと取ってくればよかったのに」
「結構だ。オレはこれで十分だ」
王族として生まれ、飽きるほど贅沢な料理を口にしてきたカシリアにとって、食事はもはや栄養補給のための作業に近かった。
味に感動することは、ほとんどなくなっていた。
「あんたのそのノロノロした食べ方、まるで貴族のお嬢さんみたいじゃない?男ならもっとガツガツ食べなよ」
この言葉には、さすがに笑いをこらえきれなかった。
「それを言うなら、君のほうこそ男みたいに食べていることになるな?」
「だって仕方ないじゃん。ここの料理、全部美味しいんだもん。ママが許してくれるなら、全部持って帰りたいくらいだよ」
彼女は少し残念そうな顔をしながら、それでも手を止めずに食べ続けていた。
「……ははは」
カシリアはついに吹き出した。
「君のドレスに付いているサファイア一錠で、何か月も好き放題に飲み食いできるはずだが」
「そんなことしないよ。これはパパが買ってくれた新しいドレスなんだから。勝手に売ったりしたら怒られる」
その言葉を聞いて、カシリアはある可能性に気づいた。
メニア王国の前身であるトスアイト帝国は、かつて一夫多妻制を採用していた。
それが原因で後継争いが激化し、やがて止めどない内乱へと発展し、帝国は分裂して滅びた。
その反省から、現在のメニア王国では――
貴族は一夫一妻制、長子相続制、そして私生児は一族に迎え入れない、という厳格な法律が定められている。
王族を除き、貴族は表向きは一夫一妻だが、実際には欲望を抑えきれず、外に子を作る者も少なくない。
しかし法の下では、私生児は家名も爵位も継げず、一生「平民」として生きることになる。
生活水準だけは貴族並みであっても、社交界の輪に入ることは決して許されない。
