罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

幼い頃から厳しい教育を受けてきたカシリアは、常に「完璧な王子」として見られるためにはどう振る舞うべきかを考え続けてきた。

そのため彼は慎重を重ね、隅々にまで神経を配り、あらゆる場面で完璧を演じてきた。

どれほど些細な仕草であっても、そこには王族としての威厳が求められた。

それは周囲が彼に課した期待であり、同時に、彼自身が背負わされた王国の未来でもあった。

カシリアにとって「王」という言葉は、地位や権力の象徴というより、もはや避けられぬ運命に近い。

まるで、偶然聖剣を引き抜いてしまった者が、人々の期待に応えるため、自らの夢を捨てて勇者として戦うことを強いられるようなものだ。

第一王子として生まれた瞬間から、その未来は定められていた。

本人の意思とは無関係に、現実として押し付けられる運命だった。

貴族たちは幼い頃から徹底的に仕込まれる。

自分より下位の者の扱い方、上位の者への取り入り方、さらには王子の機嫌の取り方まで、貴族としての思考様式は骨の髄まで叩き込まれる。

少女たちは王子に見初められ、王妃となり、家に栄光と権力をもたらすことを夢見る。

少年たちは王子の側近となり、政治的影響力を得ることを望む。

誰もが同じ方向を向き、例外は存在しない。

それは代々受け継がれてきた貴族社会の思考であり、変化を許されない「型」だった。

【その結果生み出された貴族たちは、まるで量産された工芸品のように、整ってはいるが画一的で、精巧でありながら、そこに生きた美しさは存在しなかった。】

皮肉なことに、こうした強固な階級意識があるからこそ、王家は混乱なく王位を継承し、国家は安定を保ってきた。

無数の社交の場を経験してきたカシリアにとって、貴族の少年少女たちの作り笑いと計算された媚びは、もはや日常の風景だった。

毎日が同じことの繰り返しで、退屈という言葉すら生ぬるい。

だが――今、目の前にいる女性は明らかに違った。

【彼女はカシリアを「王子」としてではなく、対等に近い一人の貴族として扱っていた。】

何も隠さず、遠慮なく感情を表に出し、奇妙ですらある振る舞いを平然と見せる。

そんな存在に出会ったのは初めてだった。

王族としての心得を叩き込まれ、暗記するほど身体に染みついていたカシリアにとって、彼女の言動はすべてが予測不能で、不可解で、それでいて強く心を引きつけた。

これほど興味を抱かされた女性は、これまで一人もいなかった。

その自由奔放な態度は作られたものではなく、生まれつきのものだ。

純粋で、活発で、裏のない自然な在り方。

――羨ましい。

心の底から、羨ましい。

もし自分が王族でなかったなら。

この女性のように、縛られず、好きなように生きることができたのではないか。

だが、それは決して手に入らない幻想だ。

ある意味で――

カシリアは、とても不幸な人間なのかもしれなかった。