罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

「君は……その――」

「そういえばさ、あんたも私と同じで、ここでこっそり食べてるの?」

カシリアが口を開くより早く、耳を疑うような言葉が飛んできた。

――は?

なにを言っている。

からかっているのか?

カシリアは生まれてこの方、ここまで無遠慮な言葉を投げつけられたことはなかった。

だが、この少女は悪意というより、本当に世間知らずの子供のようにも見える。

彼は大きく息を吸い、気持ちを落ち着かせた。

「……君は、この学院の生徒なのか?」

彼女の問いには答えず、逆に質問を投げ返す。

生徒でなければ、どうやってこの場に入り込んだというのか。

もし生徒だとすれば――いったいどんな教育を受ければ、ここまで礼儀が崩壊するのか。

いや、下手をすれば、普通の平民の方がよほど作法をわきまえている。

「え、私?今はまだ違うけど、これからそうなるみたい。高等部二年生になるって言われたよ。で、あんたもここの生徒?」

……なんという馬鹿げた質問だ。

この国の王子を知らないとでも言うのか。

貴族であれば、どれほど愚鈍でも顔くらいは知っている。

仮に顔を覚えていなくとも、王家の紋章入りの礼服を見れば一目で分かるはずだ。

「……君は、オレが誰か知らないのか?」

苦笑を浮かべながら、探るように尋ねる。

「知るわけないじゃん。今、初めて会ったんだし。でも服がすごいから、きっと偉い貴族なんだよね?」

――貴族、だと?

あまりに大雑把な評価に、さすがのカシリアも脱力した。

本当にどこの家の令嬢だ。

保護者を呼び出して説教したい。

だが、このあまりにも天然なやり取りに、なぜか胸の奥が少し軽くなった。

思わず笑いが込み上げそうになる。

カシリアは答えず、少女の様子を眺めながら必死に表情を抑えた。

「……ねえ、なんで黙ってるの?失礼じゃない?」

少女は唇を尖らせ、不満そうに言った。

――こんな貴族、本当に存在するのか。

ついに我慢できず、カシリアは小さく笑い声を漏らした。

「君は、ひょっとして……オレの名前すら聞いたことがないのか?」

「あるわけないでしょ。あんた、なんて名前?」

即答だった。

嘘をついている様子もない。

……まあ、知っていてこの態度なら、それこそ一族ごと処罰ものだ。

「カシリアだ。……君は?」

「カシリアね。ふむふむ。で、苗字は?」

少女は首を傾げる。

――本気か。

呆れを通り越して、逆に少し哀れにすら思えてくる。

「次は君の番だ。自分の名前くらい分かるだろう?」

「私?私はエリナ。ちゃんと覚えてね!」

少し誇らしげに胸を張る。

「……名前だけか?ファミリーネームは?」

「ふふ~ん、秘密。あんたも教えてくれなかったでしょ?だからおあいこ!」

あまりにも予想外で、しかしどこか予想通りでもある返答に、カシリアは苦笑するしかなかった。

――自分と同格の家柄だとでも思っているのだろうか。

大きくため息をついたが、不思議と気分は軽かった。

この少女と話しているだけで、張り詰めていた心がほどけていく。

理由もなく、ただ楽しい。

【本当に、奇妙で、そして面白い少女だ。】