学院のパーティー会場は、さすが父王主催というだけあり、きらびやかな装飾と豪華な料理に彩られ、目を見張るほど華やかだった。
普段つつましく暮らす平民はもちろん、下級貴族にとっても、人生で一度あるかどうかの贅沢な宴だろう。
この盛大なパーティーのため、王国各地から貴族が集まり、身分ごとに自然とグループを作り、交流を深めていた。
カシリアはこうした場に慣れている。
国王の挨拶、自分の挨拶、すべてが滞りなく進み、儀礼的な流れは整然と終わった。
用事を終えると、彼は適当な理由をつけて、自分を取り囲んでいた貴族の少年少女たちの輪から素早く抜け出した。
――やるべきことは済んだ。
あとは食べ物を取って、さっさと離れよう。
そう考えながら会場の隅へ向かった、そのときだった。
不意に、人目につかない片隅に、見慣れない貴族の夫人の姿が目に入った。
その女性は、どのグループにも加わることができない様子で、静かに壁際に立っていた。
自分から誰かに話しかけることもなく、ただ場の様子をうかがっている。
だが彼女が身にまとっているのは、サファイアを散りばめた最新流行の豪奢なドレスだった。
その素材や装飾から判断すれば、少なくとも伯爵家以上の出身であることは間違いない。
おかしい。
最近、学院に新たな生徒が入学したという話はない。
仮に生徒の家族だとしても、上流貴族であれば、カシリアが知らないはずがない。
それに、今回のパーティーは父王自らが出席している。
警備は通常よりもはるかに厳重だ。
簡単に部外者が紛れ込める状況ではない。
だとすれば、あの夫人は、どこかの高位貴族の新たな婚約者、あるいは愛人なのだろうか。
しかし、彼女はどの男性貴族とも接触せず、ただ緊張した面持ちで、誰かを探すように視線をさまよわせている。
本当に妙な夫人だ。
もっとも、カシリアは深く気に留めなかった。
貴族の家庭事情など、自分には関係のない話だ。
できるだけ人付き合いを避けるため、彼は片手にグラス、もう片方に肉料理を山盛りにした皿を持ち、無言のままバルコニーへ向かった。
通常、パーティーでバルコニーに出る者はほとんどいない。
せいぜい、社交に疲れた者が景色を眺めに来る程度で、談笑の場になることはまずなかった。
ホールとバルコニーの間には厚手のカーテンが垂れ下がっており、多少だらしない姿を晒しても、外からは見えない。
カシリアにとって、そこは数少ない安息の場所だった。
彼はそっと最奥のバルコニーへ向かい、カーテンを開けて外に出た。
「あ……」
そこには、思いがけず先客がいた。
しかも、自分と歳の近い貴族の女性だ。
――待て、貴族?
目の前の若く美しい女性は、料理を山ほど載せた皿を抱え、必死に口へ食べ物を運んでいる。
……あれは。
どう見ても、貴族としてあるべき姿ではなかった。
普段つつましく暮らす平民はもちろん、下級貴族にとっても、人生で一度あるかどうかの贅沢な宴だろう。
この盛大なパーティーのため、王国各地から貴族が集まり、身分ごとに自然とグループを作り、交流を深めていた。
カシリアはこうした場に慣れている。
国王の挨拶、自分の挨拶、すべてが滞りなく進み、儀礼的な流れは整然と終わった。
用事を終えると、彼は適当な理由をつけて、自分を取り囲んでいた貴族の少年少女たちの輪から素早く抜け出した。
――やるべきことは済んだ。
あとは食べ物を取って、さっさと離れよう。
そう考えながら会場の隅へ向かった、そのときだった。
不意に、人目につかない片隅に、見慣れない貴族の夫人の姿が目に入った。
その女性は、どのグループにも加わることができない様子で、静かに壁際に立っていた。
自分から誰かに話しかけることもなく、ただ場の様子をうかがっている。
だが彼女が身にまとっているのは、サファイアを散りばめた最新流行の豪奢なドレスだった。
その素材や装飾から判断すれば、少なくとも伯爵家以上の出身であることは間違いない。
おかしい。
最近、学院に新たな生徒が入学したという話はない。
仮に生徒の家族だとしても、上流貴族であれば、カシリアが知らないはずがない。
それに、今回のパーティーは父王自らが出席している。
警備は通常よりもはるかに厳重だ。
簡単に部外者が紛れ込める状況ではない。
だとすれば、あの夫人は、どこかの高位貴族の新たな婚約者、あるいは愛人なのだろうか。
しかし、彼女はどの男性貴族とも接触せず、ただ緊張した面持ちで、誰かを探すように視線をさまよわせている。
本当に妙な夫人だ。
もっとも、カシリアは深く気に留めなかった。
貴族の家庭事情など、自分には関係のない話だ。
できるだけ人付き合いを避けるため、彼は片手にグラス、もう片方に肉料理を山盛りにした皿を持ち、無言のままバルコニーへ向かった。
通常、パーティーでバルコニーに出る者はほとんどいない。
せいぜい、社交に疲れた者が景色を眺めに来る程度で、談笑の場になることはまずなかった。
ホールとバルコニーの間には厚手のカーテンが垂れ下がっており、多少だらしない姿を晒しても、外からは見えない。
カシリアにとって、そこは数少ない安息の場所だった。
彼はそっと最奥のバルコニーへ向かい、カーテンを開けて外に出た。
「あ……」
そこには、思いがけず先客がいた。
しかも、自分と歳の近い貴族の女性だ。
――待て、貴族?
目の前の若く美しい女性は、料理を山ほど載せた皿を抱え、必死に口へ食べ物を運んでいる。
……あれは。
どう見ても、貴族としてあるべき姿ではなかった。
