罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

客室の窓辺。

軟禁されているラペオ帝国の第三王子コリンダは、腕を組みながら、眼下の中庭を見下ろしていた。

彼の赤い瞳の先には、数人の使用人に囲まれて、的確な指示を出すリリス・タロシアの姿があった。

指示を受けた使用人たちは心から慕うような表情を浮かべ、すぐに行動を始めた。

まったく無駄のない、的確な指示。

それと同時に、自然と人の心を開かせるような微笑み。

コリンダは、人の上に立つ者としての彼女の才能をまざまざと見せつけられ、短く息を吐き出した。

「カシリア。あの女が、お前の婚約者か。お前より強そうに見えるな」

背後のソファに座っているメニア王国の第一王子へ、コリンダは振り返ることなく問いかけた。

「ああ。リリスは強いよ」

カシリアは、迷うことなくそう断言した。

「ははっ。なんだ、意外とムキにならないんだな」

コリンダは面白そうに口元を綻ばせた。

「野生動物みたいなやつに負けたお前に、反論する気はないさ」

カシリアの冷ややかな言葉に、室内の空気が少しピリッとする。

「手加減してやってるだけさ。俺が本気を出せば、あんな猿みたいなやつ、すぐに押さえ込んでやる」

コリンダは鼻を鳴らして、肩をすくめた。

彼の頭の中には、剣術のテストで自分を地面に叩きつけたエリナの姿がちらついていた。

「隠していた自分の兵を動かして、命がけで彼女の暴走に付き合ってやったっていうのに、ずいぶんと素直じゃないな」

カシリアは手元の書類から顔を上げ、コリンダの赤い瞳を真っ直ぐに見つめた。

もしリリスが、今回の闇組織とミセシル家の事件を完璧に片付けられていなかったらどうなっていたか。

エリナのために全力を尽くし、一緒に荘園を襲撃したこの異国の王子は、間違いなくすべての罪をかぶせられ、帝国の皇族という身分を奪われたうえで、地下牢に閉じ込められていただろう。

カシリアは、目の前にいる男の不器用な優しさをしっかりと理解していた。

「……うるさいな。俺は自分の獲物を守っただけだ」

コリンダは目をそらし、低い声で言い返した。

「まあ、エリナにはお似合いだな。タロシア公爵家の婿になる準備は、もうできているのか?」

カシリアが薄く笑みを浮かべながら、からかうように言った。

「おいおい!なんだお前っ!喧嘩売ってんのか!」

コリンダは窓際から離れると、カシリアが座るソファへ大股で歩み寄り、声を荒げた。

勢いよく詰め寄るコリンダに対して、カシリアは書類を束ねて机に置き、静かに立ち上がった。

二人の間に、険悪な空気はない。

お互いの大切な人を守るために、別々の場所でギリギリの状況を乗り越えた経験が、二人の間に敵同士とは違う、不思議な絆を生み出していたのだ。