罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

静かな療養室で、私はカシリア殿下に向き直った。

「殿下。私、タロシア公爵邸へ戻ろうと思うんです。お父様やお姉様と、もう一度家族としてやり直すために」

私の言葉を聞いて、カシリアは少し眉をひそめた。

「……リリス。君の決意は尊重するよ。でも、まだ体調が万全じゃないだろう。一人で帰すわけにはいかない」

カシリアは私の手を取ってくれた。

「オレも一緒に行くよ。君を一人にはしない」

彼の強い意志を感じる瞳を見て、私は小さく頷いた。

数日後。

私とカシリアを乗せた馬車は、タロシア公爵邸の正門を通り抜けた。

窓の外には、見慣れたお庭の景色が流れていく。

馬車が玄関の前で止まると、カシリアが先に降りて、私に手を差し伸べてくれた。

その手を取って、地面に降り立つ。

玄関の扉が開くと、一列に並んだ使用人たちの姿が目に入ってきた。

その一番前に立っていたのは、私の一番の側仕えであるロキナだった。

「お嬢様……!」

ロキナは私の姿を見るなり、両手で顔を覆って大粒の涙をぽろぽろとこぼした。

他の使用人たちもみんな目を赤くして、ハンカチで目元を押さえている。

私はゆっくりとロキナのところへ歩み寄った。

「ロキナ。ただいま戻ったわ」

私の声を聞いて、ロキナはその場にへたり込んでしまった。

「お帰りなさいませ、お嬢様……。ずっと、ずっとお待ちしていました」

ロキナの声は、激しい泣き声で震えていた。

私は彼女の肩にそっと手を置いた。

「心配をかけたわね。もう大丈夫よ」

ロキナは顔を上げて、私の顔をじっと見つめた。

「お嬢様、お痩せになりましたね……。王宮で過労で倒れられたと聞いて、本当に生きた心地がしませんでした」

彼女の目には、私への深い思いやりと愛情があふれている。

「ごめんなさいね、ロキナ。でも、少し休んだおかげで、ずいぶんと良くなったのよ」

私は優しく微笑んだ。

彼女は、私が心を病んでいることを知らない。

単なる過労で倒れたと信じてくれているのだ。

「さあ、お嬢様。お部屋へご案内しますね。温かいお茶をご用意してありますから」

ロキナは立ち上がって、私の手を引いた。

その手の温もりが、帰るべき場所へ戻ってきたんだなと、私に実感させてくれた。