罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

「……申し訳ございません、陛下。ただ、私はこれほどの暴挙を働いた大罪人。もはや、公爵の地位には向いていないかと存じます。つきましては、公爵位を娘のリリスに譲りたいのです」

淡々と告げられたその言葉に、カナロアの眉が微かにピクリと動いた。

「……それがお前の目的か。自らを犠牲にして、娘に全てを譲るための免罪符か」

「…………」

沈黙で肯定するカストに対し、カナロアは大きなため息をつき、皮肉な笑みを浮かべた。

「親心としては涙ぐましいが……だが、残念だ。もう遅かった」

「……何?」

カストは顔を上げた。予想していた『処罰』や『家督譲渡の許可』とは全く違う言葉に、思考が止まる。

「既にミセシル家から、『すべては誤解だった』との公式な報告がきた」

「な、なんだと。どういうことだ……!?」

カストは床から弾かれたように立ち上がり、信じられないという顔でカナロアに問い返した。

自分が自らの手を汚し、血を流してまで築き上げた『大罪』が、たった数日で『誤解』として処理された?

それでは、自分が公爵位を降りる大義名分がなくなってしまう。

混乱するカストに、カナロアは背を向け、扉の方へ歩きながら言い残した。

「被害を受けた本人が否定している以上、王家がお前を裁く法的な理由がなくなったんだ。お前の軟禁はこれで終わりだ。娘たちの監視もすでに解かれている」

誰かが、あの強欲でプライドの高いミセシル伯爵を完全に黙らせ、カストの不器用な自己犠牲のシナリオすらも強引にへし折ったのだ。

「まあ、詳しいことが知りたければ、リリスに聞くんだな」

リリス。

その名前が部屋に響いた瞬間、カストの胸の奥から、強い痛みと熱が同時にこみ上げてきた。

心はボロボロで、薬に頼らなければならない状態なのに。彼女は父親の愚かな計画を見透かした上で、自らその手を汚し、この絶望的な事態を完全に収束させたというのか。

「……リリス」

自らの策の浅はかさと、娘が背負ってしまった業の深さに、カストは両膝を震わせた。

「陛下……! どうか、私とリリスを面会させてください」

カストの口から、すべてのプライドを捨て去った、必死の願いがこぼれ落ちた。