罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

私の名前で申し入れたところ、ミセシル家の当主と、カヴィットの姉であるカロリン・ミセシルは面会に応じてくれた。

その翌日。

王宮の奥にある特別応接室の前。

重々しい扉の前でカシリア殿下は立ち止まると、ひどく心配そうな顔で私を見つめた。

「カロリンはともかく、当主は今、かなり気が立っている。君一人で行かせるのは危険すぎるよ。オレも一緒に入る」

彼の声には、私を守ろうとする強い意志が込められていた。

私は静かに首を横に振り、その提案をきっぱりと断った。

「いいえ、殿下。殿下がいらっしゃると、私は彼らを徹底的に追い詰められないかもしれません。それに万が一、王家が裏で糸を引いていると思われたら、事態がもっとややこしくなってしまいます」

私は殿下に一礼して、一人で扉の前に立った。

怖くないと言えば嘘になる。

心臓の鼓動が早まり、胸の奥がぎゅっと痛む。

足の震えも、自分の意志ではどうにも止められなかった。

ミセシル家の人間を殺したタロシア公爵家の娘なのだから、強烈な恨みを買うのは当然のことだ。

私だって、こんな重大な事件の尻拭いなんてしたことがない。

だけど、今この場で、あの武器を一番効果的に使えるのは、私しかいない。

私は震える右手にぐっと力を込め、冷たいドアノブを回して部屋の中へと足を踏み入れた。

部屋の中には、ミセシル伯爵と、カヴィットの姉のカロリンが座っていた。

二人の視線が私を捉えた瞬間、部屋の温度がすっと下がったかのように錯覚するほどの強い敵意を向けられた。

私は勧められた席には座らず、まずはタロシア公爵家の娘として深く頭を下げた。

「この度は、父カスト・タロシアの暴走により、ミセシル伯爵家に多大な損害と犠牲を強いてしまったこと、深くお詫び申し上げます」

私が淡々とした声で言い終わるより早く、ミセシル伯爵がバンッと机を激しく叩いた。

「謝って済む問題か! 貴様ら野蛮なタロシア家は、我が一族を血祭りに上げたのだぞ。お前らを絶対に許さん。王家に訴え出て、必ず同じだけの報いを受けさせてやる!」

伯爵の口から、憎しみと復讐心にまみれた言葉が次々と投げつけられる。

カロリンもまた、黙ったまま氷のような冷たい視線で私を睨みつけていた。

私は表情一つ変えずに、彼らの怒声が完全に収まるまで、じっと立ったまま聞いていた。

荒い息遣いになり、言うべきことを言い尽くしたのを確認してから、私は静かに顔を上げた。

「お話は、お済みでしょうか?」

私は服の奥から、違法な麻薬である『幸せの実』が詰まった小さなガラス瓶を取り出し、ことりと机の上に置いた。

「こ、それは……」

カロリンの眉がぴくりと動く。

「王都の闇組織から流れてきた、最高級品の麻薬です」

私はその場でガラス瓶の蓋を開けると、金色の錠剤を一つ取り出した。

部屋の中に、独特の甘ったるい匂いがふわりと広がる。

私は少しの迷いもなくその錠剤を口に放り込み、ごくりと飲み込んだ。

数秒後、薬効が脳に届き、全身を縛り付けていた恐怖感が嘘のように消え去っていく。

足の震えもピタリと止まり、恐ろしいほどの冷静さが私の中に満ちていった。

「お前……正気か?」

ミセシル伯爵の声が、怒りから困惑へと変わる。

私の行動の意図がわからず、二人の顔からさっと血の気が引いていくのがわかった。

「ええ。ご覧の通り、私はもう壊れているんです。毎日これを飲まなければ正気でいられない、完全な欠陥品なんですよ」

私はにっこりと微笑んで見せた。

カロリンは慌てて立ち上がり、机の上のガラス瓶を奪い取ると、中身をじっと見つめ、匂いを嗅いで確かめた。

彼女の顔が驚きに染まる。

「私がこんなにも素晴らしい状態になれたのは、ご自慢の息子、カヴィット・ミセシルのおかげなんです」

私はそう言いながら、懐に隠し持っていた闇組織からの脅迫状と、カヴィットが過去に書いた課題の束を机の上に並べた。

「筆跡を見比べてみてください」

ミセシル伯爵は震える手で二つの紙を手に取り、そこに書かれた文字を見比べた。

「何……だと。これ……は……」

「以前治療を受けたときに、カヴィット・ミセシルからこの薬をいただきました。それが麻薬だと知らずにずっと飲み続けた結果、私はもうすっかり薬漬けの廃人になってしまったんです」

私の冷たい声が、静かな部屋に響き渡る。

「ふざけたことを言うな!」

ミセシル伯爵は突然激昂し、手にしていた証拠の羊皮紙をビリビリに破いて床へ投げ捨てた。

「お見事な腕力ですね。感服しました。でもご安心ください、同じものはまだたくさん保管してありますから。必要なら後でご自宅へお送りしましょうか?」

私の言葉に、伯爵の顔は怒りで真っ赤に染まった。

「貴様……! 作り物かもしれない紙切れで、俺が屈するとでも思っているのか。むしろ貴様こそ、麻薬に溺れる廃人のくせに、よくも王太子殿下と婚約を続けていられるな。王家の名誉をなんだと思っている。俺が陛下にこの事実を突き出せば、お前など完全に終わりだぞ!」

伯爵の言うもっともな指摘に対しても、私は少しも動じることなく、さらに笑みを深めた。

「構いませんよ。私はもう壊れているんですから。おっしゃる通り、この事実が公になれば、私は公爵家から廃嫡されて追放され、最悪の場合は処刑されるでしょうね」

私は机に両手をつき、顔を彼らの方へと近づけた。

「でも、私が処刑されるその前に。未来の王太子妃に麻薬を売りつけ、脅迫して、莫大なお金を巻き上げようとしたミセシル家に対して、王家がどう出るか、私もすごく楽しみなんです。私みたいな廃人一人を道連れに、ミセシル家の輝かしい未来を奪えるなら、どう考えても悪くない取引ですよね?」

重い沈黙が落ちた。

私の言葉は、決して交渉などではない。

事実を王家にバラせば、私が破滅するよりも早く、ミセシル家は王家から重い罰を受けることになるという、純粋で絶対的な脅迫だった。