罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

ザロが王立学院から急いで持ち帰ってくれた羊皮紙の束は、カヴィット・ミセシルが過去に提出したという、ごく普通の課題のレポートだった。

私は寝台の上にその束を広げると、服の奥にずっと隠し持っていた、あの忌まわしい闇組織からの脅迫状を取り出した。

部屋の隅にある燭台の灯りを頼りに、二つの紙に書かれた文字の筆跡をじっくりと見比べる。

筆圧の強弱、特定の文字の跳ね方、単語と単語の間の取り方。

意図的に字体を誤魔化そうとしても、無意識の癖はどうしても隠しきれずに残ってしまうものだ。

しばらくの間、じっと黙って見比べた末に、私は一つの結論にたどり着いた。

この二つの手紙を書いたのは、間違いなく同一人物だ。

カヴィット・ミセシル。

あの真面目で優秀な医学生こそが、私を脅迫し、精神的に追い詰めた闇組織の幹部だったのだ。

私は二枚の羊皮紙を静かに重ねて、ふうっと重い息を吐き出した。

この数枚の紙切れは、今タロシア公爵家を巡る絶望的な状況をひっくり返す、強力な武器になるはずだ。

私はその武器を膝の上に置き、夜の静けさの中、王宮から戻るカシリア殿下の足音を待ち続けた。

深夜。

重々しい扉がかすかな音を立てて開き、カシリア殿下が療養室へ入ってきた。

その顔はひどく疲れ切っていて、青い瞳からはいつもの鋭い光が失われ、深い疲労感が滲み出ていた。

彼は私のそばの椅子にどさりと腰を下ろすと、両手で顔を覆った。

「……リリス、状況は最悪だ」

彼の口から、重苦しい声がこぼれ落ちる。

「ミセシル伯爵家だけでなく、彼らと繋がりのある多くの貴族たちから、タロシア家への猛烈な抗議文が王宮に殺到しているんだ。さらに、公爵家そのものを守るために、タロシアの親戚筋からも、当主のカストに対する非難が噴出している状態だ」

私は黙って彼の言葉に耳を傾けた。

「それに、王都郊外の屋敷で勝手に実力行使に出たエリナとコリンダへの厳しい追及も始まっている。彼らは今、タロシア邸で軟禁状態にあるよ」

私の頭の中で、バラバラだった情報が急速に繋がっていく。

まさか、真っ先に行動を起こして、あの闇組織の拠点を焼き討ちにしたのは、エリナとあの帝国の狂犬だったなんて。

まったくの予想外だった。

エリナも、私のために……。

「カストは一切の事情を話そうとせず、ただ黙っている。理由もわからないまま武力を行使したことに父上は激怒して、カストを王宮内に軟禁する処分を下した。このままじゃ、タロシア公爵家は完全に潰れてしまう」

カシリア殿下は両手を下ろすと、自分を責めるような瞳で私を見つめた。

「リリス、ごめん。……この立場じゃ、オレは……」

「いいえ、殿下。謝らないでください」

私は彼の言葉を静かに遮ると、膝の上にあった二枚の紙を彼の目の前に差し出した。

「私には、もう解決策があります」

カシリア殿下は不思議そうな顔でその紙を受け取り、視線を落とした。

「これは……?」

「ザロにお願いして手に入れたカヴィット・ミセシルの過去の筆跡と、私に送られてきた闇組織からの脅迫状です」

私の声は、自分でも驚くほど冷たく響いた。

「カヴィット・ミセシルが闇組織の幹部であり、私を脅迫した犯人です。これを公の場に出せば、ミセシル伯爵家はただの被害者ではなくなります。王族の婚約者を薬物で脅迫し、国の秩序を根本から壊そうとした大罪の主犯格になるんです」

カシリア殿下がハッと目を見開いた。

「ミセシル伯爵は、息子の裏の顔を知らなかったか、知っていてわざと利用していたかのどちらかです。どちらにしても、この証拠は彼らにぐうの音も出させない、強力な切り札になります」

カシリア殿下は手元の羊皮紙をぎゅっと握り締め、ゆっくりと深呼吸をした。

「……確かに、これならいける。この筆跡を盾にすれば、ミセシル家を完全に黙らせることができる」

彼の声は低く、けれどはっきりとした不安が混じっていた。

「だけど同時に、これを証拠として公の場で暴くということは、君が重い鬱病で、違法な麻薬に依存していたという事実まで、王都中に知れ渡るということだ。これは君自身を破滅させる爆弾なんだぞ」

彼の指摘は、政治的な観点から見てもまったくその通りだった。

「ええ、その通りです。だからこそ、これを公にするのは最後の切り札にするつもりです」

私は桜色の長い髪を耳に掛け、彼の青い瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

「明日、ミセシル家の当主と、お姉さんのカロリン・ミセシルとの面会を取り付けてください」

私の心の奥底から、冷たい炎のような決意が湧き上がってくる。

「公の裁判ではなく、裏で交渉の場を設けるんです。そこでこの事実を突きつけて、今回のタロシア家の武力行使は不運な『誤解』だったということで、無理やりにでも納得させます」

目の前に立つ私の気迫に圧されたのか、カシリア殿下は言葉を失い、ただ静かに頷くことしかできなかった。