罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

私兵たちはコリンダの命令を聞くと、すぐにそれぞれの馬から地面へと降り立った。

彼らは荘園の高い石壁にぴったりとくっついて生い茂る木々の根元へと移動し、乾燥した枯れ枝や落ち葉を手際よく集めていく。

作られた小さな火種が、用意しておいた油染みの布へと落とされた。

火はわざと大きくされ、乾燥した空気と森を吹き抜ける風にあおられて、あっという間に燃え広がっていく。

最初は細かった煙が、数分のうちに太く黒い柱へと変わり、空をすっかり覆い隠し始めた。

ものすごい熱が周りの空気を歪ませ、木々が内側から弾けるパチパチとした音が次々と響き渡る。

炎は荘園の中にある広い庭園へとどんどん燃え移っていく。

焼けつくような熱と大量の黒煙が逃げ場のない空間に立ち込め、あっという間に息苦しくしていった。

次の瞬間。

厩舎の奥から、耳をつんざくような馬のいななきが上がった。

繋がれたままの馬たちが火と煙にパニックを起こし、後ろ脚で扉を蹴り続ける。

乾いた木材が限界を迎え――

バキッという音とともに、扉が内側から吹き飛んだ。

十数頭の馬が、パニック状態のまま庭園へと雪崩れ込む。

白目を剥き、泡を撒き散らしながら、炎から逃れようとあちこち走り回るその大きな体は、まるで暴走する巨大な塊のようだった。

逃げ惑う人たちは、その勢いに巻き込まれる。

転倒。

踏み潰し。

悲鳴。

混乱は一瞬で頂点に達した。

エリナとコリンダは、炎と煙から少し距離を取り、それぞれ手にクロスボウを構えた。

二人の黄と赤の瞳は、煙に耐えきれずに荘園の中から飛び出してくる者たちの姿をしっかりと捉えている。

弦が弾かれる鋭い音が鳴るたび、放たれた矢が敵の体に突き刺さり、次々とその動きを止めていく。

数名の人間が倒れ伏し、土の地面が赤く染まっていく。

「お前ら、何者だ!ここをどこだと思っている!」

炎と煙の奥から、派手に飾られた服を着た大柄な男が現れ、怒鳴り声を上げた。

「俺たちの拠点を焼き討ちにするとは、生きて帰れると思うなよ!やっちまえ!」

男の号令に合わせて、三十名ほどの武装した兵士たちが炎の中から姿を現し、エリナたちと向かい合って陣形を組んだ。

コリンダは赤い瞳で敵の数を数え、口元を少しニヤリとさせた。

「これはちょっとやばいな。強さはこちらが上だが、数では負けている」

その声には、焦りよりも純粋に戦いを楽しむ響きが含まれていた。

エリナは黄色の瞳をコリンダに向け、挑発するように言った。

「ビビったか」

「は!お前のことが心配なだけだ。面頬(めんぽお)を着けろ」

コリンダは自分の顔に金属製の面頬を着け、エリナにも別の面頬を放り投げた。

エリナはそれを受け取り、しっかりと顔に着ける。

「これからは、真剣勝負だ」

コリンダの低い声が、戦い始まりの合図になった。