罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

北の森を貫く街道を、七騎の馬が駆けていく。

背後の木々が遠ざかるにつれて、先頭を走るコリンダの口角が、ゆっくりと上がっていった。

「森に荘園を構えるとは、随分と優雅なものだ。間違いなく、相手は貴族だろうな」

彼は隣を走るエリナの横顔へ、面白がるような視線を向ける。

「さて、どうする? 公爵令嬢殿。貴族相手に、本気で事を構えるのか」

その挑発的な言葉を後ろで聞いていたコリンダの私兵の一人が、血相を変えて馬を寄せてきた。

「殿下! それだけは! 貴族に手を出すなど…!」

兵士の悲痛な叫びに対し、エリナは前を向いたまま、冷ややかな声で言い放った。

「ああ、構わん。全ての責任は、私が背負う」

その言葉を聞いたコリンダは、楽しそうに喉を鳴らした。

「聞いたか。公爵令嬢自らが、我々の盾となってくれるそうだ」

彼は何かを言いかけた兵士の顔を鋭く睨みつけ、その言葉を無理やり飲み込ませた。

約20分後、彼らは深い森の中にふいに現れた荘園の前に立っていた。

男が吐いた情報通り、そこには古い貴族の館が静かに佇んでいる。

しかし、その規模は彼らの予想をはるかに超えていた。

高い石壁に囲まれ、周囲には手入れの行き届いた広い庭園が広がっている。

エリナとコリンダ、そして五人の私兵。

わずか七名の戦力では、この巨大な要塞を落とすことはどう見ても不可能だった。

「はは、これはまた……とんでもないお城だな」

コリンダが乾いた笑いを漏らす。

「下手に中へ入れば、罠にかかって全滅がいいところだ。まともに戦っても、人数的に勝ち目はない」

正面からの突入は、自殺行為に等しい。

どう攻めるべきかという重苦しい空気が、彼らの上にのしかかる。

全員が荘園の立派さに言葉を失う中、エリナだけが、全く別のものに目を向けていた。

彼女の視線は、建物を囲むようにびっしりと植えられた、見事な木々に向けられている。

「……木がたくさん植わっているな。どれも、上等な木だ」

エリナが、独り言のように呟く。

その黄色の瞳が、獲物を見つけた肉食獣のようだ。

「いい薪になる。燃やしてやれば、中にいるネズミも自分から出てくるだろう」

正面から入れないのなら、巣ごと焼き払えばいい。

彼女の考え方は、いつも一番合理的で、一番手っ取り早く壊せる答えを導き出す。

エリナの言葉を聞いた瞬間、コリンダは一瞬ぽかんと呆気にとられた。

数秒の沈黙の後、彼のお腹の底から大爆笑が弾けた。

「ははははは! 派手なやり方だな! 気に入った! やはりお前は最高に狂っている!」

彼の赤い瞳が、これから始まる大暴れを想像して、嬉しそうにギラギラと輝き出す。

「いいだろう! その狂気に、俺も付き合ってやる!」

コリンダは馬の上で振り返り、後ろに控える私兵たちへ向かって、高らかに命令を下した。

「全員! 聞いた通りだ! この荘園を、根こそぎ燃やし尽くせ!」