罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

翌日。

太陽が昇り、そして沈む。

時間の流れは確実に存在しているはずなのに、私の内側では一切の針が進んでいない。

同じ色彩の朝を迎え、同じ沈黙の夜を待つ。

豪奢な絹のシーツに沈んだままか、あるいは窓枠に寄りかかり、切り取られた四角い空を眺めるだけで一日が消費されていく。

ここは間違いなく、私を外部の脅威から保護するための安全で優しさに満ちた療養室だ。

けれど、私の肉体と精神の奥底には、黄金の薬から逃げ切れない惨めな自分が確実に巣食っている。

何をしているのか、私。

何をすべきなのか、私。

亡き母の気高い期待を裏切った。

身を尽くしてくれたナミスの愛を裏切った。

そして、私の罪を背負おうとするカシリア殿下の愛すらも裏切っている。

薬の微小な欠片を摂取しなければ呼吸すらままならない、ただの廃人。

そんな救いようのないゴミクズのような人間を、私自身が誰よりも激しく嫌悪している。

そのままではいけない。

痛いほど理解している。

けれど、心が私の意志に反して完全に硬直し、一歩も動けない。

思考を重ねるほどに迷路は深まり、焦燥感を抱くほどに苦痛が増していく。

婚約を破棄できない現状のまま、私の中にあるナミスへの情を明確に告白してしまえば、彼は王家を欺いた罪で確実に処刑される。

耐えきれずにもっと薬が欲しいと懇願すれば、今度こそ私の醜悪な本性が露呈し、王宮から追放され、一生涯幽閉される運命が待っている。

だからこそ、私は大人しく治療を受け入れなければならない。

順調に回復へと向かっているという、完璧な嘘を構築し続けなければならない。

カシリア殿下が与えてくれる優しさに対して、感謝の言葉を適切な角度の微笑みと共に返さなければならないのだ。

今日が終わり、また明日も同じ空虚な時間が繰り返される。

窓ガラスの冷たさを額で感じながら、私はひたすらに感情の波を平坦に均す作業を続けていた。

静かなノックの音が室内の停滞した空気を揺らす。

重厚な扉が開き、カシリア殿下が足を踏み入れた。

私は窓辺からゆっくりと体を離し、鏡の前で何度も練習した通りの、タロシア公爵家令嬢として最も美しいとされる角度で口角を上げた。

「リリス。今日の調子はどうだい」

殿下が、私の全身を細かく観察する。

「お陰様で、日々回復しております。お気遣いいただき、本当にありがとうございます」

流れるような声。

訓練された完璧な礼儀作法。

「オレが用意した食事は口に合っているか。何か欲しいものはないか」

殿下は私に歩み寄り、距離を縮める。

「すべてが素晴らしい品でございます。今の私には、これ以上のものは必要ありませんわ」

言葉の意味を脳で咀嚼することなく、模範的な回答を出力する。

殿下の眼差しが微かに曇ったように見えたが、私はそれ以上深く思考することを意図的に放棄した。

感情を交えれば、必ずほころびが生じる。

今の私にできる最大の防衛は、心を死滅させた美しい人形であり続けることなのだから。

「なら良かった。それなら、今日ちょっとオレに付き合ってもらおうか」

殿下の口から紡がれた予想外の提案に、私の内側で動かなくなっていた歯車が一瞬だけ軋んだ音を立てた。

「はい、喜んで。……どこへお出かけになりますでしょうか。準備を整えませんと」

動揺を表情筋の裏側へ押し込み、従順な婚約者としての言葉を返す。

「オレたちが、初めて会ったあの場所へ行くんだ」

「っ……」

喉の奥で息が詰まり、微笑みが一瞬だけ凍りつく。

初めて、カシリア殿下と会った場所。

それは私が十二歳の頃、タロシア公爵家で催された絢爛な披露会の会場。

華やかな光と音楽の中で、必死に完璧な令嬢を演じていたあの夜。

なぜ、今になってその場所へ向かうのか。

ついに、この時が来たのだ。

中身のない空っぽの器に過ぎない私に、彼が完全に愛想を尽かす日が。

思い出の始まりの場所で、これまでの関係を精算し、私という存在を完全に切り捨てるための儀式。

それは王太子から下される、最も優しく、そして最も残酷な最終処分。

私はゆっくりとまぶたを伏せた。

「……はい」