罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

黄金の欠片が、冷たい水と共に喉の奥へと滑り落ちていく。

数回の呼吸の間に熱を帯び、痺れるような甘い感覚となって血管を駆け巡り始めた。

濁りきっていた思考の霧が急速に晴れ渡り、手足にまとわりついていた鉛の重さが嘘のように消え失せる。

偽りの多幸感が、私の内側にあった不安や自己嫌悪を一時的に塗りつぶし、力強い鼓動を強要する。

カシリア殿下の痛ましげな視線を背中に受けながら、私は丁寧な礼をして療養室を後にした。

大理石の床を踏みしめる足取りは羽よりも軽く、私の顔にはタロシア公爵令嬢としての完璧な微笑みが貼り付いていた。

胸の奥底で燻る罪悪感は、薬の分厚い膜に覆い隠されて声を持たない。

今の私は、誰から見ても非の打ち所のない、気高く美しい令嬢そのものだ。

そうであらねばならない。

謁見室の重厚な扉の前に到着すると、衛兵が静かに扉を押し開いた。

玉座に続く緋色の絨毯の奥、巨大な執務机の向こうに、メニア王国国王カナロアが腰を下ろしていた。

私は静かに歩みを進め、淀みのない動作で膝を折り、深々と頭を下げる。

完璧な角度と、計算し尽くされた敬意の表現。

「お呼び立ていただき、光栄に存じます、陛下」

澄んだ声を響かせると、カナロア陛下は手元の書類から視線を上げ、私を値踏みするような鋭い目で捉えた。

「ほー。やっぱり昔とあまり変わりがないようだな」

陛下の低く響く声には、微かな冷笑が混じっている。

私は小首を傾げ、純粋な疑問を顔に浮かべた。

「陛下は、なんのことでしょうか」

カナロア陛下は椅子に深く背中を預け、組んだ両手の上に顎を乗せた。

「政治の目的を達成するために、自分の領地で火災を起こした張本人が、少しは欲深い顔つきに変貌しただろうと思っていた。だが、今でもそうやって清らかな顔の裏に本性を隠し通している。流石に統治の才能があるよな」

その言葉が耳に届いた瞬間、心臓が僅かに跳ねた。

陛下はガーナー領での私の非情な行い、あの火災の自作自演をすべて把握しているのだ。

カシリア殿下を欺き、領民を恐怖と恩恵で支配するための冷酷な策略。

だが、薬によって補強された私の仮面は、微塵も崩れることはない。

私はふわりと微笑みを深め、顔を上げた。

「はい。陛下の試練のお陰様で、かなり成長いたしました」

カナロア陛下は私の返答を聞き、満足げに喉の奥で笑い声を鳴らした。

「よろしい。ところで、領地から戻って、もう数日間もずっと王宮で療養しているんだな。カシリアにしては、そうさせるのは珍しい挙動だ」

灰色の瞳が、私の顔色を注意深く探る。

表向きは過労による療養という名目だが、陛下には何か不自然なものを感じ取っているのだろう。

私は微動だにせず、穏やかな声で答えた。

「はい。すべては殿下の優しさでございます。過労で倒れた私に、少しゆっくりできる空間を作ってくださいました」

「そうか。だが、今の君はかなり元気に見えているがな」

陛下の指摘は鋭い。

薬の力で強引に引き上げられた生気は、本来の療養患者が持つべき衰弱とは無縁の輝きを放っている。

「それは……」

私が言葉を濁すと、カナロア陛下は興味深げに口角を上げた。

「まあ、余は男女の恋事情に口を挟むほど野暮な人間ではない。ただ、少し気になってな。余の記憶では、カシリアはどうやら普通の貴族の女にはまったく興味がないように見えていた。例え君相手でも、領地へ行く前までは無関心にしか見えなかったのだ」

無関心。

その単語が、薬の膜を越えて私の内側を冷たく撫でた。

「だから最初、カシリアが君と婚約を決意したと聞いた時はびっくりしたな。まあ、政治的には非の打ち所がない相手だから何も言えないが」

陛下の言葉は、私が心の底で最も恐れ、同時に最も確信していた事実を突きつけてくる。