ナミスは、薄紫のドレス越しに私の細い背中と腰を両腕で力強く抱きすくめ、その胸元へと引き寄せたまま離そうとしない。
私は唇を微かに震わせ、静けさの中に細い声を落とす。
「……ねえ、ナミス」
「今夜だけでいいの」
「もう少し……一緒にいてもいい?」
私の我儘な懇願に、ナミスは無言で、ゆっくりと頷いた。
彼は抱きしめていた腕の力をそっと緩め、私を支えながら立ち上がる。そのまま私の身体をふわりと抱き上げ、冷たい石の床から離してくれた。
数歩歩いて、部屋の奥にある寝台へと向かう。
彼は私を、柔らかい毛布の上にそっと寝かせた。
薄紫の絹のドレスが、シーツの上に音もなく広がる。
ナミスはそのまま身体を起こし、寝台の傍らの木の椅子に座ろうとした。
「お願い……もっと私を、抱きしめて……」
抑えきれない感情が、声になってこぼれ落ちた。
私は右手を伸ばし、離れようとするナミスの左手にすがりつく。
彼の栗色の瞳が、寝台に横たわる私を見下ろす。
その瞳には、激しい葛藤が揺らめいていた。
主君の寝台に上がり、その身体を抱きしめるということ。騎士としての崇高な理性と、私からの甘い欲求の狭間で、彼の呼吸が微かに乱れる。
私は彼の手を両手で包み込み、自分の胸元へとぎゅっと引き寄せた。
薄いドレス越しに、熱を持った肌と、早鐘のように打つ心臓の音が、彼の手のひらに直接伝わっていくはずだ。
「前回……みたいに……」
声はかすれ、自分でもわかるほど震えている。
「私を、抱きしめてくれる?」
ナミスは私の顔をじっと見つめた後、観念したように深く息を吐き出した。
彼は腰を落とし、私のそばに片膝をつく。
「……わかりました」
低く、落ち着いた声が部屋の空気を震わせる。
「前回と同じように。リリス様が誇りを取り戻し、心からの笑顔を見せてくださるその日まで」
彼は空いた右手で、私の頬に残る涙の跡をそっと拭った。
「僕は、リリス様の清らかさを守り抜きます」
それは、一点の曇りもない、騎士としての絶対的な誓いだった。
私という存在を丸ごと肯定し、こんなにも壊れてしまった今でも、決して私を貶めないという真っ直ぐな意志。
ナミスは立ち上がると、腰の剣を外して床に置いた。
重い革のマントと胸当てを脱ぎ、寝台の足元に置く。
靴を脱ぎ、音を立てずに寝台へ上がると、私の背中側にそっと横たわった。
狭い寝台の上で、彼のがっしりとした身体が背中にぴたりとくっつく。
ナミスのたくましい腕が私の腰に回り、私をその厚い胸板へと力強く引き寄せた。
彼の高い体温が、薄いドレスを透かして、私の身体の芯まで直接流れ込んでくる。
骨が軋むほど、きつく、強い抱擁。
ほんの少し痛いくらいのその力が、私が今ここに生きていて、彼に守られているんだということを、痛いほどに教えてくれる。
薬がくれるあの派手で偽物の幸せなんかじゃない。静かで、絶対に揺るがない安心感が、私をすっぽりと包み込んでいく。
私は身をよじって彼の腕の中で寝返りを打ち、正面から彼と向き合った。
彼の真っ直ぐな栗色の瞳が、すぐ目の前で私を見つめている。
二人の吐息が混ざり合う。
私はそっと顎を上げ、彼の顔に近づいた。
目を閉じ、彼の唇に、自分の唇を軽く押し当てる。
熱い吐息と、ほんの少しの湿り気。
ほんの数秒触れ合った後、私は唇を離し、彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「私、ナミスのこと……愛しているわ」
それは、公爵令嬢として計算し尽くした演技でも、薬のせいでおかしくなった頭のせいでもない。私の心のずっと奥底から自然にこぼれ落ちた、嘘偽りのない本当の気持ちだった。
ナミスはハッと息を呑み、私を抱きしめる腕の力をさらにぎゅっと強めた。
彼の唇が微かに開き、低く、熱っぽい声が耳元に降り注ぐ。
「……僕も、お慕いしております」
その言葉が、静寂の中に甘く溶けていく。
私は彼の硬い胸に額をこすりつけ、静かに目を閉じた。
私は唇を微かに震わせ、静けさの中に細い声を落とす。
「……ねえ、ナミス」
「今夜だけでいいの」
「もう少し……一緒にいてもいい?」
私の我儘な懇願に、ナミスは無言で、ゆっくりと頷いた。
彼は抱きしめていた腕の力をそっと緩め、私を支えながら立ち上がる。そのまま私の身体をふわりと抱き上げ、冷たい石の床から離してくれた。
数歩歩いて、部屋の奥にある寝台へと向かう。
彼は私を、柔らかい毛布の上にそっと寝かせた。
薄紫の絹のドレスが、シーツの上に音もなく広がる。
ナミスはそのまま身体を起こし、寝台の傍らの木の椅子に座ろうとした。
「お願い……もっと私を、抱きしめて……」
抑えきれない感情が、声になってこぼれ落ちた。
私は右手を伸ばし、離れようとするナミスの左手にすがりつく。
彼の栗色の瞳が、寝台に横たわる私を見下ろす。
その瞳には、激しい葛藤が揺らめいていた。
主君の寝台に上がり、その身体を抱きしめるということ。騎士としての崇高な理性と、私からの甘い欲求の狭間で、彼の呼吸が微かに乱れる。
私は彼の手を両手で包み込み、自分の胸元へとぎゅっと引き寄せた。
薄いドレス越しに、熱を持った肌と、早鐘のように打つ心臓の音が、彼の手のひらに直接伝わっていくはずだ。
「前回……みたいに……」
声はかすれ、自分でもわかるほど震えている。
「私を、抱きしめてくれる?」
ナミスは私の顔をじっと見つめた後、観念したように深く息を吐き出した。
彼は腰を落とし、私のそばに片膝をつく。
「……わかりました」
低く、落ち着いた声が部屋の空気を震わせる。
「前回と同じように。リリス様が誇りを取り戻し、心からの笑顔を見せてくださるその日まで」
彼は空いた右手で、私の頬に残る涙の跡をそっと拭った。
「僕は、リリス様の清らかさを守り抜きます」
それは、一点の曇りもない、騎士としての絶対的な誓いだった。
私という存在を丸ごと肯定し、こんなにも壊れてしまった今でも、決して私を貶めないという真っ直ぐな意志。
ナミスは立ち上がると、腰の剣を外して床に置いた。
重い革のマントと胸当てを脱ぎ、寝台の足元に置く。
靴を脱ぎ、音を立てずに寝台へ上がると、私の背中側にそっと横たわった。
狭い寝台の上で、彼のがっしりとした身体が背中にぴたりとくっつく。
ナミスのたくましい腕が私の腰に回り、私をその厚い胸板へと力強く引き寄せた。
彼の高い体温が、薄いドレスを透かして、私の身体の芯まで直接流れ込んでくる。
骨が軋むほど、きつく、強い抱擁。
ほんの少し痛いくらいのその力が、私が今ここに生きていて、彼に守られているんだということを、痛いほどに教えてくれる。
薬がくれるあの派手で偽物の幸せなんかじゃない。静かで、絶対に揺るがない安心感が、私をすっぽりと包み込んでいく。
私は身をよじって彼の腕の中で寝返りを打ち、正面から彼と向き合った。
彼の真っ直ぐな栗色の瞳が、すぐ目の前で私を見つめている。
二人の吐息が混ざり合う。
私はそっと顎を上げ、彼の顔に近づいた。
目を閉じ、彼の唇に、自分の唇を軽く押し当てる。
熱い吐息と、ほんの少しの湿り気。
ほんの数秒触れ合った後、私は唇を離し、彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返した。
「私、ナミスのこと……愛しているわ」
それは、公爵令嬢として計算し尽くした演技でも、薬のせいでおかしくなった頭のせいでもない。私の心のずっと奥底から自然にこぼれ落ちた、嘘偽りのない本当の気持ちだった。
ナミスはハッと息を呑み、私を抱きしめる腕の力をさらにぎゅっと強めた。
彼の唇が微かに開き、低く、熱っぽい声が耳元に降り注ぐ。
「……僕も、お慕いしております」
その言葉が、静寂の中に甘く溶けていく。
私は彼の硬い胸に額をこすりつけ、静かに目を閉じた。
