罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

リリス様が、輝くような笑顔でガロス卿や騎士たちと今後の計画を語っている。

その声は鈴を転がすように軽やかで、言葉の一つ一つが周囲の人々の心を明るく照らしていく。

僕はその光景を背に、誰にも気づかれぬよう、音もなくその場を離れた。

彼女の幸福そうな姿が、僕の胸を締め付ける。

自室に戻り、重い木の扉を閉めると、外の喧騒が遠ざかり、部屋は再び静寂に包まれた。

僕は机の引き出しを開け、奥に隠していた小さな硝子瓶を取り出した。

リリス様の誘拐事件が発生前に、一部の貴族の間で出所の知れない薬物が密かに流行していた。

使用者は一時的に気分が高揚し、万能感を得られるが、やがて心身ともに蝕まれ、廃人同様になる。

その薬物は、乾燥させた植物の葉をタバコのように吸引するものだったと聞く。

僕は手のひらの上の硝子瓶を光にかざした。

鈍い金色をした、固形の錠剤。

形状も、使用方法も、記憶にある薬物とは全く違う。

だが、あの闇医者の目、そしてこの薬がもたらす急激な精神の変化。

僕の疑念は、どうしても晴れなかった。

確証が欲しかった。

この薬が本当にリリス様を救う治療薬なのか、それとも彼女を破滅へと導く毒なのか。

僕は小刀の先端で薬の表面を微かに削り取った。

爪の先に付着するほどの、ごく微量な粉末。

僕はそれを、躊躇うことなく舌の上に乗せた。

微かな苦味が口内に広がる。

僕は目を閉じ、身体に起こるであろう何らかの変化を待った。

しかし、何も起こらなかった。

心拍数は変わらず、思考も明晰なままだ。

量が少なすぎたのか。

それとも、この薬は心を病んだ者にしか作用しないのか。

あるいは、これは本当にただの治療薬で、僕の疑いはただの杞憂なのか。

一錠で十銀貨。

平民が数ヶ月は暮らせる金額だ。

リリス様が唯一の顧客であるとは到底考えられない。

王都のどこかで、他にもこの薬を求める貴族がいるはずだ。

そこから辿れば、薬の正体や、あの闇医者の素性も掴めるかもしれない。

だが、今の僕にはその術がない。

ガーナー領という辺境の地から、王都の裏社会を探ることなど不可能に近い。

表立って動けば、王家の騎士である僕の立場が、リリス様の秘密を衆目に晒す危険を孕む。

僕は固く拳を握りしめた。

爪が掌に食い込み、鈍い痛みが走る。

何もできない。