罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

王都のメインストリートを、重厚な振動が支配していた。

石畳を叩くのは、ラペオ帝国軍特有の、底に鉄を打ち付けた軍靴の音だ。

儀仗兵たちの行進は一糸乱れず、その金属音は祝砲の轟きよりも雄弁に、帝国の武威を物語っていた。

沿道を埋め尽くす市民たちは、歓声を上げることも忘れ、ただ圧倒的な「力」の行進を見送る。

先頭を行く黒塗りの馬車には、帝国の双頭鷲の紋章が刻まれている。

風にはためく深紅の旗は、血の色を連想させ、見る者に本能的な畏怖を抱かせた。

王宮の大広場に到着した隊列が停止すると、同時に数百の槍が垂直に掲げられ、刃が陽光を反射して白い閃光を放つ。

静寂。

張り詰めた空気の中、馬車の扉が開かれた。

現れたのは、豪奢な礼服を着崩し、野性的な笑みを浮かべた青年――ラペオ帝国第三王子、コリンダであった。

彼は広場を見回し、出迎えに並ぶメニア王国の貴族たちを、獲物を品定めするような視線で一瞥した。

カシリアは、玉座の脇に立ち、その光景を冷徹に見下ろしていた。

背筋を伸ばし、表情筋の一つたりとも動かさぬよう意識を集中させる。

コリンダが大股で階段を上がり、カシリアの数歩手前で足を止めた。

形式的な礼を取るが、その黄金色の瞳は挑発的に細められている。

「遠路はるばる、歓迎に感謝するぜ、カシリア殿下」

口調は慇懃無礼。

儀式の場に相応しくない砕けた物言いに、周囲の文官たちが眉をひそめたが、コリンダは意に介さない。

「ようこそ、コリンダ王子。……貴国の来訪を、我が国は心より歓迎する」

カシリアは完璧な微笑で応じた。

握手を交わす。

コリンダの手は、王族のそれではなく、剣を握り続けた武人のように硬く、そして熱かった。

ギリ、と力が込められる。

カシリアもまた、無言で握り返した。

これは挨拶ではない。

前哨戦だ。

その夜、王宮で開かれた歓迎晩餐会。

カシリアは、グラスを片手にコリンダの相手を務めていた。

周囲では楽団が優雅な曲を奏でているが、二人の間の空気は剣呑だった。

「いい国だ。飯も美味いし、女も綺麗だ」

コリンダは赤ワインを呷り、皿の上の肉をナイフで乱暴に切り分けた。

「だが、一つ足りないものがあるな」

「……何かな?」

「骨のある奴だよ。……この国の貴族は、どいつもこいつも腑抜けた顔をしてやがる」