罪人令嬢は、二度目の人生でも幸せになれない~誰にも愛されていないと信じたまま、私はまた笑う~

王家学院のサロンは、今日も甘い砂糖菓子の香りと、それ以上に甘美で残酷な毒の香りに満ちていた。

磨き上げられた大理石の床、天井から吊り下げられたシャンデリアの煌めき、そして色とりどりのドレスを纏った令嬢たちの高らかな笑い声。

一見すれば、そこは地上の楽園のように美しく、平和な光景に見えるだろう。

だが、その実態は、扇の裏で交わされる囁き声によって構成された、目に見えない処刑場であった。

ファティーナは、紅茶のカップを持つ手が震えるのを必死に抑えていた。

耳に入ってくる言葉の一つ一つが、まるで鋭利なナイフのように、彼女の心を切り刻んでいくからだ。

「ねえ、聞きましたこと?あの噂」

隣のテーブルで、派手な羽飾りをつけた令嬢が、扇で口元を隠しながら隣の友人に囁いた。

「ええ、もちろん存じておりますわ。あの野蛮な編入生……エリナ・タロシア様のことでしょう?」

「タロシア公爵家の隠し子だなんて、信じられませんわね。しかも、あのような無作法な方が、次期公爵候補だなんて」

クスクスという忍び笑いが、さざ波のように広がる。

それは嘲笑であり、同時に、他人の不幸を蜜として楽しむ貴族特有の嗜虐的な響きを含んでいた。

「可哀想なのはリリス様ですわね。婚約発表があったとはいえ、急に辺境のガーナー領へ行かれたのは……つまり、そういうことでしょう?」

「ええ、きっと。後継者争いに敗れて、厄介払いされたのですわ。優秀な妹が、ぽっと出の姉に追い出されるなんて、まるで三文芝居の悲劇ですこと」

カチャン、と硬い音が響いた。

ファティーナが、カップをソーサーに叩きつけるように置いた音だ。

周囲の視線が一瞬彼女に集まったが、ファティーナは気に留めなかった。

彼女の胸中では、煮えたぎるような憤怒の炎が渦を巻いていた。

リリス様。

あの完璧で、美しく、そして誰よりも誇り高い私の親友。

彼女がどれほどの努力を重ねてきたか、ファティーナは知っている。

血の滲むような学習、完璧な作法、そして王太子妃としての過酷な責務。

それら全てを、リリス様は涼しい顔で、優雅にこなしてみせた。

それなのに。

あのような、礼儀も知らず、言葉遣いも荒い、泥の中から出てきたような女に、全てを奪われるなどあってはならない。

リリス様が辺境へ追いやられたのが、あの女のせいだというのなら。

あの女が、厚かましくも公爵家の家督を狙い、リリス様の居場所を奪ったというのなら。

それは罪だ。

許されざる、簒奪の罪だ。

ファティーナは立ち上がり、サロンを出た。

廊下を歩く彼女の足音は、かつてないほどに力強く、そして攻撃的だった。

彼女は決意していた。

リリス様は優しすぎる。

あの方は高潔すぎて、自らの手を汚してあの女を排除しようとはなさらないだろう。

だからこそ、友である私がやらなければならない。

リリス様が帰ってくる場所を守るために。

あの方が、再び王都で輝ける日のために。

あの泥棒猫に、貴族社会の厳しさと、分不相応な野心を抱いた代償を教えてやらなければならない。

ファティーナの瞳に、暗い決意の光が宿る。

彼女は懐から、一枚の羊皮紙を取り出した。

そこには、エリナを孤立させ、精神的に追い詰めるための、綿密で陰湿な計画が記されていた。

茶会への招待状を装った罠。

公衆の面前での恥辱。

そして、彼女の出自を徹底的に嘲笑うための舞台装置。

すべては、親友のため。

「待っていてくださいませ、リリス様。……貴女の敵は、このわたくしが排除いたしますわ」