やがて断罪の日が来た。
まもなく、罪人として私も法廷に入ることになる。
体格に合わない囚人服を着せられ、貴族の頂に立つ公爵令嬢だった私は、今やただの罪深き罪人に過ぎない。
「本件の犯人、リリスを前へ出せ!」
衛兵に無理やり押し出され、長く闇の中にいた私は、眩暈を覚えるほどの光に照らされた。
裁判は無意味な形式に過ぎない。
準王太子妃の毒殺未遂。
間違いなく万死に値する罪だ。
確約された死刑が、せめて苦しみの少ない死に方を与えてくれるのなら、感謝すべきなのかもしれない。
「やっぱリリスって昔から超傲慢だったよなー」
「さすがに準太子姫にまで手を出すなんて、やばすぎ」
観衆席の学生たちにとって、今日という日は孤高の完璧な令嬢が地に落ちる、格別な余興なのだろう。
けど、反論はできない。
私は確かに、異母姉エリナを毒殺しようとした。
「許してくれ」と言って許される事実ではない。
顔を上げるのが、怖い。
私のせいで傷ついた家族や、殺されかけたエリナ、王子……
かつて私を取り巻いていたすべての視線が、今はただ恐ろしい。
本当に、みっともない自分だった。
あとは、裁きが下されるのを待つだけ。
覚悟はしていたが、それでも恐怖が募る。
「静粛に! 今より、罪人リリスの刑罰を宣告する!」
「王族謀殺未遂の罪により、リリスを庶民へと落とし、火刑に処する!」
火刑……か。
さすがに、楽に死なせてはくれないか。
一瞬で死ねるものではない。
炎に少しずつ蝕まれ、血と肉が焼き尽くされるまで悲鳴を上げながら踊らされる、最悪の見世物だ。
あれが、私に訪れる未来なのか。
十分すぎるほど最悪を想定していたはずなのに、現実として突きつけられた恐怖が一瞬で全身に溢れ出した。
理性を失った四肢は震えを止められず、私は失禁してしまった。
爪を血が滲むほど深く掌に食い込ませても、心の恐怖は抑えられない。
……どうにもならなかった。
なんという無様な姿だろう。
絶望に呑み込まれる私をよそに、審判長は宣告を続けた。
「だが、被害者である準太子姫エリナ様、ならびに母ミカレン様の要請により、火刑を免除し、二十年の禁錮刑とする」
な、なに――!?
あまりの予想外の展開に、私は思わず顔を上げた。
特等席に座っていたのは、露骨に怒りを浮かべる王太子、カシリア殿下。
悲しみを隠せない父上とエリナ。
そして、憐れむような眼差しで私を見る継母。
みんな……エリナ……どうして……。
私は、あなたを殺そうとしたのよ……!?
――ああ、そういうことか。
ようやく、思い出した。
善良で可憐な姫。
容姿端麗な王太子。
彼らこそが、このラブコメの主役なのだ。
ならば、引き立て役である悪役の私は、ここで退場というわけか。
私は衛兵に押されながら、無様にこの舞台から降ろされた。
今日は、いい日だ。
これから王子は、運命の姫と幸せに暮らしていくのだろう。
そして重罪を犯した罪人も、やがて罰を受ける。
いい結末だった。
きっと。
めでたし、めでたし。
まもなく、罪人として私も法廷に入ることになる。
体格に合わない囚人服を着せられ、貴族の頂に立つ公爵令嬢だった私は、今やただの罪深き罪人に過ぎない。
「本件の犯人、リリスを前へ出せ!」
衛兵に無理やり押し出され、長く闇の中にいた私は、眩暈を覚えるほどの光に照らされた。
裁判は無意味な形式に過ぎない。
準王太子妃の毒殺未遂。
間違いなく万死に値する罪だ。
確約された死刑が、せめて苦しみの少ない死に方を与えてくれるのなら、感謝すべきなのかもしれない。
「やっぱリリスって昔から超傲慢だったよなー」
「さすがに準太子姫にまで手を出すなんて、やばすぎ」
観衆席の学生たちにとって、今日という日は孤高の完璧な令嬢が地に落ちる、格別な余興なのだろう。
けど、反論はできない。
私は確かに、異母姉エリナを毒殺しようとした。
「許してくれ」と言って許される事実ではない。
顔を上げるのが、怖い。
私のせいで傷ついた家族や、殺されかけたエリナ、王子……
かつて私を取り巻いていたすべての視線が、今はただ恐ろしい。
本当に、みっともない自分だった。
あとは、裁きが下されるのを待つだけ。
覚悟はしていたが、それでも恐怖が募る。
「静粛に! 今より、罪人リリスの刑罰を宣告する!」
「王族謀殺未遂の罪により、リリスを庶民へと落とし、火刑に処する!」
火刑……か。
さすがに、楽に死なせてはくれないか。
一瞬で死ねるものではない。
炎に少しずつ蝕まれ、血と肉が焼き尽くされるまで悲鳴を上げながら踊らされる、最悪の見世物だ。
あれが、私に訪れる未来なのか。
十分すぎるほど最悪を想定していたはずなのに、現実として突きつけられた恐怖が一瞬で全身に溢れ出した。
理性を失った四肢は震えを止められず、私は失禁してしまった。
爪を血が滲むほど深く掌に食い込ませても、心の恐怖は抑えられない。
……どうにもならなかった。
なんという無様な姿だろう。
絶望に呑み込まれる私をよそに、審判長は宣告を続けた。
「だが、被害者である準太子姫エリナ様、ならびに母ミカレン様の要請により、火刑を免除し、二十年の禁錮刑とする」
な、なに――!?
あまりの予想外の展開に、私は思わず顔を上げた。
特等席に座っていたのは、露骨に怒りを浮かべる王太子、カシリア殿下。
悲しみを隠せない父上とエリナ。
そして、憐れむような眼差しで私を見る継母。
みんな……エリナ……どうして……。
私は、あなたを殺そうとしたのよ……!?
――ああ、そういうことか。
ようやく、思い出した。
善良で可憐な姫。
容姿端麗な王太子。
彼らこそが、このラブコメの主役なのだ。
ならば、引き立て役である悪役の私は、ここで退場というわけか。
私は衛兵に押されながら、無様にこの舞台から降ろされた。
今日は、いい日だ。
これから王子は、運命の姫と幸せに暮らしていくのだろう。
そして重罪を犯した罪人も、やがて罰を受ける。
いい結末だった。
きっと。
めでたし、めでたし。
