この間、私の部屋の電球が切れたんですよ。
電球ってわりと突然切れるじゃないですか?
まぁ、点滅したりとか電球の光が完全に切れる前にちょっと暗くなったりとか前兆があるケースもあるんでしょうけど私の部屋の電球は違いました。
で、ふと思ったんです。
電球みたいな別れもあるよなぁって。
……いや、そんな私の部屋の電球事情はどうでもいいですよね。
先輩にお時間を取らせてるんですし。
え? 大丈夫? ありがとうございます。優しいですよね。
私が構内で迷っているところを助けていただいたのが出会いですし。
私、先輩に聞いてもらいたいことがありまして。
先輩、四年前の夏休みに大怪我して入院していたという話を聞かせてくれたじゃないですか? しばらく意識すらなかったって!
それから考えていたことでして……。
もしかしてって。たぶん、違いますけど。
前置きがごちゃごちゃ長過ぎますよね?
すみません。
とにかく、本題に入りますね。少々、長くなるかもしれませんが。
五年前の話です。
私がまだ中学生で、引きこもりだった頃の……。
あ、驚きますよね?
ちょっと、あの頃は……どうしてだろう? いや、何となくはわかっているんですよ。
学校に行けなくなってしまって。
いじめられてたわけではないんですが。思春期って色々ありますよね? 人間関係に疲れたのかもしれません……。とにかく、行けなくなってしまった。
ラインの連絡も見たくなくてあの頃はスマホとかもろくに触ってませんでしたね。代わりにパソコン使ってました。
すべてのこれまでの学校の人間関係をシャットアウトしたかったんです。
でも、そのうち誰かと話したくなって……。
で、パソコンで、とあるSNSに登録しました。
電球通信ってやつです。電球ロゴのSNS。
知っている?
そうなんですね。
わりとマイナーなんですが、先輩ってやっぱり……。
この電球通信って一対一のやりとりじゃないですか? そして二人のやりとりは他人には見られないシステム。誰かが、メッセージを流して、それを誰かが拾って会話開始みたいな。
そして、適当に電球通信のメッセージを拾って返信したり流したりしてました。
まあ、長くは続かなかったんですけど。
でもある日、一年ほどやりとりする友達が出来ました。私の一歳上の男の子。
え? 本当はおじさんかもって? さぁ、どうですかね?
ある日私が、「来週はペルセウス座流星群が見れるみたい。見ようかなぁ」ってメッセージ書いたんですよ。
そうしたら、彼が私のメッセージに返信を送ってくれたんですよ。
「自分も見るつもりです。でも、雨予報ですから見れないかもしれません」って。
それで私は天気予報を見てみました。
日本中、ほとんど雨予報でしたね。
「日本のほとんど、雨予報ですね。残念です」と私は送りました。
「本当、残念ですよね。でも、ペルセウス座流星群は来年の夏もありますから、それを楽しみにしましょう。冬にも流星群がありますし」って返信が来ました。
「星についてお詳しいんですね」って返しました。
「そんなことないですよ。ただの趣味です」
「さっき、検索しましたよ。ペルセウス座流星群って三代流星群の一つなんですね」
「はい。三代流星群は、他に、冬のしぶんぎ座流星群、ふたご座流星群があるんです」
「冬にも見てみたいと思います」
「いいですね。俺も毎年、見てますよ」
みたいなやりとりが始まりました。
それから、星の話以外にもたわいのない話をしました。
ダラダラと好きな食べ物とか漫画とか語ったり。
彼は将来は星の研究がしたいって言ってました。
私は夢とか特になかったんですよ。
それなら一緒に星の研究をしようって言ってくれて。
本気というより気を使ってくれたのかもしれないですけど。
その時には彼から星の話を聞いて自分でも調べたりするようになっていたのでそれもいいなぁと思いました。
ユーチューブとかでそういう動画見たりとか程度ですけどね。
初めて観たのは流星群の動画で次は太陽についての動画。
太陽の寿命はあと五十億年くらいと、彼が教えてくれました。それで気になって太陽の動画をユーチューブで検索したんです。
私たちが生きている間も、死んでからも輝き続けるなんて不思議と思いました。
本当に星について興味が出たのはその時だったかもしれませんね。
ともかく、彼と私は会話を続けました。とはいっても、お互いの本名も知りませんでしたが。
お互い、訊くこともありませんでした。
ただメッセージを送り続ける関係性。
冬には流星群を見ました。
彼も見ていて……。
どこに住んでいるかも知らないのに、同じ夜空を同じ流星を眺めているなんて、変な感じと思いました。でも、嬉しかったなぁ。
それで、夏のペルセウス座流星群も一緒に見ようねって約束したんです。
一緒にっていっても、同時刻に空を眺めるだけなんですけど。同じ場所に集合して一緒に眺めるわけでもなくて。
それで、また夏になったんですよね。
でも、ペルセウス座流星群の二週間前くらいだったかな。
電球通信のサービス終了が決まったんですよ。
奇しくもサービス終了日はペルセウス座流星群の日でした。
彼とは当然、他のSNSでまた連絡を取り合えばいいやと思っていました。
でも、その日から彼から返信が来なくなって。
何でかはわかりません。
それまで普通に会話してましたから。
心配になりました。事故に遭った? まさか死んでしまった?
いや、それともたんに私と会話するのが面倒になっただけなのか……?
とにかく理由はまったくもってわかりませんが、彼との会話は突然終わりを告げました。
この間、急に電球が切れた時に彼のことを思い出しましたよ。
……それで、私は特に日常が変わるわけでもなく……歯磨きしたり……ベッドでゴロゴロしたりする時に彼のことを思い出したりしてました。
今思えば、初恋だったんですよねぇ。
名前も顔も知らないのに。
で、二週間たって一人でペルセウス座流星群をぼんやりと見てました。
電球通信のサービス終了日。
私はパソコンを立ち上げて、ひと言送りました。
「本日は晴天。ペルセウス座流星群がよく見えます」
とだけ。
彼が見たのか見てないのかはわかりませんけど。
で、もういいや、と思いました。
パソコンをシャットダウンして、久しぶりにスマホを見ました。
どんだけスマホ見てなかったんだよって話ですけど。
ラインの通知とかも見て……。
まぁ、ぶっちゃけ嫌な内容も送られてましたけどなぜかどうでもよく思えましたね。
で、星のことをもっと知りたい。だから学校に行くか、と思いました。
高校に行って、大学に行って……それで星の勉強をしようって……。その時はぼんやりしたビジョンでしたけど。そうしようと思いました。
その後、親にも学校に行くって話をして。親にはうれし泣きされましたね。
迷惑かけてて申し訳ないなぁと思いました。
それから高校進学して、その後、この大学に入ったってわけです。
それで構内で迷ってたら先輩が助けてくれて……。
ああ、はい。
やっぱり、違いますよね……。
そんな偶然、あるわけないというか……。
え? 今でも、彼を好きなのかって? うーん、好きというか懐かしいというか。
古い写真見て懐かしいなと思うような感覚というか。よく言えませんが。
というか、ダラダラこんな話、聞いてくれてありがとうございます。先輩には関係なかったのに。
……太陽ですか?
太陽は、生きてる間は電球みたいに切れないでしょうね。まだ五十億年も寿命がありますから。
……えっ?
……そりゃ、驚きますよ。予想外過ぎるというか……。
先輩、私のこと好きだったんですか……?
俺が太陽になる……? それなら生きている間に切れたりしないだろう? ……ですか? 先輩……たまに突拍子もないこと言いますよね。
……少し、考えさせてくれませんか?
びっくりしちゃって。
はい、ありがとうございます。
ええ、また連絡しますね。
今日はありがとうございました。
電球ってわりと突然切れるじゃないですか?
まぁ、点滅したりとか電球の光が完全に切れる前にちょっと暗くなったりとか前兆があるケースもあるんでしょうけど私の部屋の電球は違いました。
で、ふと思ったんです。
電球みたいな別れもあるよなぁって。
……いや、そんな私の部屋の電球事情はどうでもいいですよね。
先輩にお時間を取らせてるんですし。
え? 大丈夫? ありがとうございます。優しいですよね。
私が構内で迷っているところを助けていただいたのが出会いですし。
私、先輩に聞いてもらいたいことがありまして。
先輩、四年前の夏休みに大怪我して入院していたという話を聞かせてくれたじゃないですか? しばらく意識すらなかったって!
それから考えていたことでして……。
もしかしてって。たぶん、違いますけど。
前置きがごちゃごちゃ長過ぎますよね?
すみません。
とにかく、本題に入りますね。少々、長くなるかもしれませんが。
五年前の話です。
私がまだ中学生で、引きこもりだった頃の……。
あ、驚きますよね?
ちょっと、あの頃は……どうしてだろう? いや、何となくはわかっているんですよ。
学校に行けなくなってしまって。
いじめられてたわけではないんですが。思春期って色々ありますよね? 人間関係に疲れたのかもしれません……。とにかく、行けなくなってしまった。
ラインの連絡も見たくなくてあの頃はスマホとかもろくに触ってませんでしたね。代わりにパソコン使ってました。
すべてのこれまでの学校の人間関係をシャットアウトしたかったんです。
でも、そのうち誰かと話したくなって……。
で、パソコンで、とあるSNSに登録しました。
電球通信ってやつです。電球ロゴのSNS。
知っている?
そうなんですね。
わりとマイナーなんですが、先輩ってやっぱり……。
この電球通信って一対一のやりとりじゃないですか? そして二人のやりとりは他人には見られないシステム。誰かが、メッセージを流して、それを誰かが拾って会話開始みたいな。
そして、適当に電球通信のメッセージを拾って返信したり流したりしてました。
まあ、長くは続かなかったんですけど。
でもある日、一年ほどやりとりする友達が出来ました。私の一歳上の男の子。
え? 本当はおじさんかもって? さぁ、どうですかね?
ある日私が、「来週はペルセウス座流星群が見れるみたい。見ようかなぁ」ってメッセージ書いたんですよ。
そうしたら、彼が私のメッセージに返信を送ってくれたんですよ。
「自分も見るつもりです。でも、雨予報ですから見れないかもしれません」って。
それで私は天気予報を見てみました。
日本中、ほとんど雨予報でしたね。
「日本のほとんど、雨予報ですね。残念です」と私は送りました。
「本当、残念ですよね。でも、ペルセウス座流星群は来年の夏もありますから、それを楽しみにしましょう。冬にも流星群がありますし」って返信が来ました。
「星についてお詳しいんですね」って返しました。
「そんなことないですよ。ただの趣味です」
「さっき、検索しましたよ。ペルセウス座流星群って三代流星群の一つなんですね」
「はい。三代流星群は、他に、冬のしぶんぎ座流星群、ふたご座流星群があるんです」
「冬にも見てみたいと思います」
「いいですね。俺も毎年、見てますよ」
みたいなやりとりが始まりました。
それから、星の話以外にもたわいのない話をしました。
ダラダラと好きな食べ物とか漫画とか語ったり。
彼は将来は星の研究がしたいって言ってました。
私は夢とか特になかったんですよ。
それなら一緒に星の研究をしようって言ってくれて。
本気というより気を使ってくれたのかもしれないですけど。
その時には彼から星の話を聞いて自分でも調べたりするようになっていたのでそれもいいなぁと思いました。
ユーチューブとかでそういう動画見たりとか程度ですけどね。
初めて観たのは流星群の動画で次は太陽についての動画。
太陽の寿命はあと五十億年くらいと、彼が教えてくれました。それで気になって太陽の動画をユーチューブで検索したんです。
私たちが生きている間も、死んでからも輝き続けるなんて不思議と思いました。
本当に星について興味が出たのはその時だったかもしれませんね。
ともかく、彼と私は会話を続けました。とはいっても、お互いの本名も知りませんでしたが。
お互い、訊くこともありませんでした。
ただメッセージを送り続ける関係性。
冬には流星群を見ました。
彼も見ていて……。
どこに住んでいるかも知らないのに、同じ夜空を同じ流星を眺めているなんて、変な感じと思いました。でも、嬉しかったなぁ。
それで、夏のペルセウス座流星群も一緒に見ようねって約束したんです。
一緒にっていっても、同時刻に空を眺めるだけなんですけど。同じ場所に集合して一緒に眺めるわけでもなくて。
それで、また夏になったんですよね。
でも、ペルセウス座流星群の二週間前くらいだったかな。
電球通信のサービス終了が決まったんですよ。
奇しくもサービス終了日はペルセウス座流星群の日でした。
彼とは当然、他のSNSでまた連絡を取り合えばいいやと思っていました。
でも、その日から彼から返信が来なくなって。
何でかはわかりません。
それまで普通に会話してましたから。
心配になりました。事故に遭った? まさか死んでしまった?
いや、それともたんに私と会話するのが面倒になっただけなのか……?
とにかく理由はまったくもってわかりませんが、彼との会話は突然終わりを告げました。
この間、急に電球が切れた時に彼のことを思い出しましたよ。
……それで、私は特に日常が変わるわけでもなく……歯磨きしたり……ベッドでゴロゴロしたりする時に彼のことを思い出したりしてました。
今思えば、初恋だったんですよねぇ。
名前も顔も知らないのに。
で、二週間たって一人でペルセウス座流星群をぼんやりと見てました。
電球通信のサービス終了日。
私はパソコンを立ち上げて、ひと言送りました。
「本日は晴天。ペルセウス座流星群がよく見えます」
とだけ。
彼が見たのか見てないのかはわかりませんけど。
で、もういいや、と思いました。
パソコンをシャットダウンして、久しぶりにスマホを見ました。
どんだけスマホ見てなかったんだよって話ですけど。
ラインの通知とかも見て……。
まぁ、ぶっちゃけ嫌な内容も送られてましたけどなぜかどうでもよく思えましたね。
で、星のことをもっと知りたい。だから学校に行くか、と思いました。
高校に行って、大学に行って……それで星の勉強をしようって……。その時はぼんやりしたビジョンでしたけど。そうしようと思いました。
その後、親にも学校に行くって話をして。親にはうれし泣きされましたね。
迷惑かけてて申し訳ないなぁと思いました。
それから高校進学して、その後、この大学に入ったってわけです。
それで構内で迷ってたら先輩が助けてくれて……。
ああ、はい。
やっぱり、違いますよね……。
そんな偶然、あるわけないというか……。
え? 今でも、彼を好きなのかって? うーん、好きというか懐かしいというか。
古い写真見て懐かしいなと思うような感覚というか。よく言えませんが。
というか、ダラダラこんな話、聞いてくれてありがとうございます。先輩には関係なかったのに。
……太陽ですか?
太陽は、生きてる間は電球みたいに切れないでしょうね。まだ五十億年も寿命がありますから。
……えっ?
……そりゃ、驚きますよ。予想外過ぎるというか……。
先輩、私のこと好きだったんですか……?
俺が太陽になる……? それなら生きている間に切れたりしないだろう? ……ですか? 先輩……たまに突拍子もないこと言いますよね。
……少し、考えさせてくれませんか?
びっくりしちゃって。
はい、ありがとうございます。
ええ、また連絡しますね。
今日はありがとうございました。


