かつて、親友だった私たちへ

「沙耶ちゃん、私のこと覚えてる?」

新学期、教室に入った瞬間そう言われた。
黒髪にロングヘア、かわいい子だなと思った。

「ごめんなさい、覚えてないです」

「あー、だよね!いいよ、今から親友になればいいんだから」

親友……?
本当に運が悪い。 親友は作らないと、昨日決めたばかりなのに。

「わたし、親友は作らないって決めてるので」

「え、なんで?」

「とにかく!わたしは親友になりません。
そもそも誰かわからない人と親友って… おかしいでしょ」

「えー? 別に良くない? 面白くていいじゃん」

「…トイレ行ってきます」

理由を話せばわかってくれるのだろうか。
わたしに親友なんて、また作っていいのかな…
自分だけが幸せになるなんて、あの子に失礼だと思う。

「あー!沙耶ちゃん帰ってきたんだ! おかえりー!」

… わたしはこの子から逃げられないらしい。

「ただいま…? あと誰ですか」

「私は〜 鈴菜 真凛! あなたは、清水沙耶ちゃんだよね!」

「まりん… かわいい名前ですね。 あと沙耶であってます」

「あー良かった! あと敬語やめてよ! 仲良くしよーよ」

「…友だちなら…」

「やった! 友だち!」

わたしが作れないのは親友で。
友だちなら全然作っても大丈夫なはず…
あんまり仲良くしなければ、あんな風にはならないだろうし。

「じゃあ、よろしくね! 沙耶!」

そう呼ぶ真凛の笑顔は、少しあの子を感じるものだった。