冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 ヴォーグと優月は幸せを噛み締めながら、笑い合う。
「この縁は大事にする。哀しませることも多いかもしれないが、一緒に地獄を歩もう? 俺独りで歩いていたら、二度と戻れなくなるかもしれん。優月を闇から戻るための(くさび)としてもいいか? 闇に、鮮血に、塗れたこの手を、握ってくれ」
 なんとも言えぬ表情で告げるのを見た優月は、すぐにヴォーグの右手を握って指を絡める。
「うん。地獄だろうがなんだろうが、二人で歩けばなにも怖くないよ? あたしはちゃんと、傍にいるし離れない」
「ありがとう。俺が言いたいのはたった一言。お前を、優月を、愛している」
 優月の言葉を受けたヴォーグは、安堵したように微笑む。左手で優月の頬を愛おしそうに撫で、そっと口づけた。
 ――うん、あたしもだよ。ヴォーグ。
 冷たい口づけに内心で少し驚きながらも、優月はぎゅうっとヴォーグを抱きしめた。
 
 こうしてささやかだが、大事な〝愛〟を手に入れた二人。
 二人はどのように、それを育んでいくのだろうか。
 そして、待ち受ける依頼の数々に、なにを想うのだろうか。
 
 この時はまだ知らなかった。
 この決断がさらなる闇を(もたら)す、ということに……。