冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 すべての感情を封じても、こんな気持ちがこんこんと、湧いてくることがある。それは愛したい、という願望だった。ずっとずっと、強引に自覚しなかったフリをして、抑えつけて。それでも、気持ちが変わることはなく。どうしたものかと困り続けていたその時、優月に出会ったのだ。ボロボロの彼女を見て、かつての自分と重なり、助けずにはいられなかった。しかし、助けただけ(・・)では、ダメだった。人としての生き方を捨てて、何もかも投げやりになっていた彼女には、誰かが傍にいなくては、自死を選んでしまいそうな、危うさがあった。時間をかけて、何度も何度も言い聞かせて。少しずつ、優月は人らしさを取り戻しつつあった。毎日顔を合わせているのだ。少なからず、情もわくだろう。
 そんな生きることに一生懸命な姿を見て、思ったのだ。生きることは、惨いだけではないかもしれない、と。魅力に気づいていなかっただけ、かもしれないと。
 それはヴォーグにとっては衝撃的すぎる発見で、かなり驚いたのを憶えている。
 傍にいることで、少しずつ自分が安堵しているような感覚になって戸惑った。他愛のない会話をしているだけなのに、話が楽しいと思えるようになっていた。
 過去を話しても、どんなに闇に染まっているかを語っても、優月はいなくならなかった。それについては、感謝しかない。
 
 * * *

「ここでひとつ、問いたい」
 真面目な顔をしてヴォーグが告げる。
「なあに?」
 首をかしげた優月が可愛いと思いつつ、口にする。
「優月はどう思うだろうか? 俺がお前に惚れていると言ったら」
「えっ⁉」
 優月は思わず、目を丸くして考え込む。
「驚くよな、悪い」
「いや、それは全然いいの。……こんなあたしでいいの?」
 考えながら優月が言う。
「こんな、は余計だ。優月じゃなきゃ、ダメなんだ。嫌ならそう言ってくれて構わねぇが、俺は優月とともに、生きてみたい」
 ヴォーグはまっすぐに優月を見て告げる。
「嫌なわけないじゃない。それはあたしも思ってたの。いいわよ、一緒に歩こう?」
 優月は照れくさそうに笑う。
「感謝する、優月」
 ヴォーグはベッドに座っている優月を抱き寄せる。
「ふふふ。受け容れられないかも、って思った? 怖かった?」
 幸せそうに微笑みながら、優月が尋ねる。
「正直、拒絶される覚悟はしていた。そんな覚悟、要らなかったみたいだが」
 ヴォーグはつい苦笑する。
「恩人を拒絶なんて、できると思って? 逆の立場ならできる?」
「無理だな」
「ふふふ」