冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 * * *

「思いのほか長くなったな」
 すまない、とヴォーグが付け足す。
「いいの、それは大丈夫だけれど……」
 優月が心配そうな顔をしている。
「うん?」
 ヴォーグが首をかしげる。
「ここ、座って? 怖くないから、大丈夫だから」
 優月はベッドを指さす。
「分かったよ」
 ヴォーグはそうっとベッドまでいき、腰を下ろす。
「辛かったね」
「昔のことさ」
 と言いながらも、ヴォーグの顔には、遣る瀬無い笑みが浮かんでいる。
 その笑みを見た瞬間、優月は心が絞めつけられるような感覚になった。
「ヴォーグっ!」
 優月は思わず、ヴォーグに抱きついた。
「優月⁉」
 ヴォーグは、驚きの声を上げる。
「辛かったね、苦しかったね、哀しかったね。独りきりで、頑張りすぎちゃったんだね」
「それは、優月も同じだろう? 痛かっただろうに」
 優しく抱きしめて、ヴォーグが告げる。
「確かに痛かったけれど、ヴォーグが助け出して、くれたでしょう? あれからずっと、感謝してるのよ?」
 優月ははっきりと言う。
「感謝?」
「そう。言いあらわせないほどの感謝の気持ちが、あたしの中にあって。あの出会いがなかったら、あたしの地獄は現在進行形だったし、きっともっと悪化してたと思う。それがあと少しで、歩ける状態にまで回復したのよ? だから、本当に、ありがとう」
 優月は顔を上げて、ヴォーグを見つめる。
「どういたしまして。優月は凄いな。ちゃんとここまで休んでいて。俺なら少しでも休む時間をなくしたいから、勝手に動いてしまう」
 ヴォーグはうっすらと、笑みを浮かべて答える。
「あんまり休みたくないからって、無茶したら怒られるよ?」
「あいつの怒りなど、大して怖くはないからな」
「いや、そういう問題じゃないでしょ?」
 呆れながら、優月がムッとする。
「だが、優月の哀しむ顔が見たくないから、そこは気をつけよう」
「ありがと」
 優月はふふふと笑った。
「疲れただろう? 少し休め。だが、ここにいてもいいか? ワインでも飲みながら、起きるのを待っている」
 優しい声で言うと、優月が嬉しそうな顔をする。
「いいよ? そういえば全然、ワイン飲むところ、見たことなかったなぁ」
「少し、待っていろ」
 ヴォーグはそれだけ告げると自室に戻って、ワインの入った瓶と、グラスを持ってくる。

「待たせたな。注ぐとこんな色なんだ」
 ヴォーグは興味津々という顔をしている優月の前に、グラスを見せると注いで見せる。
 色に驚く優月。
「へえ! 綺麗な色……」
「分かりやすく言えば、葡萄(ぶどう)酒だなぁ。これは赤ワインだが、白いのもあるんだ」
 くすりと笑いながら、ヴォーグが説明する。
「白いのもあるの⁉」
 優月が目を丸くする。