冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 スタスタと歩きながらも、頭の中はツォルの告白でいっぱいだった。
 ――まさか本当に告白されるとは。むしろそこで好きになるか? という突っ込みどころは、たくさんあったが。そこは人によるのだろう。しかし、本当に俺なんかで、いいのだろうか? 愛などほとんど知らずに、育った俺で。
「俺は、咎人だというのに」
 そんな言葉が、つい零れ落ちる。
 咎人であるが故に、愛し愛されていいわけではないと、思ってしまうのだ。ささやかなモノでも、幸せを噛み締めてはならないと。
 愛がどんなものかは、知らない。知るにはいい機会かもしれないが、それはかなり、勇気のいることではある。
 ――知らぬままでいるよりは、知って分析してからどう扱うか、考えてもいいかもしれん。
 そんなことを思う、ヴォーグなのだった。

 そのころツォルはというと、宿屋に帰って一人でそわそわしていた。
 告白したことに後悔はない。ヴォーグは戸惑っていた。
 人を好きになること、そのものが分かっていないように感じられた。
 ――人を好きになるのは、初めてだけど。
 そんなことを思いつつ、ツォルは冷静になるも、答えは変わらなかった。

 翌日の夕方、ヴォーグが昨日と同じ場所を訪れる。
 そこにはツォルがいた。
「待たせたか?」
「ちょっと早く、きただけだよ」
 ツォルがにこりと笑う。
「歩きながら、昨日の続きといこうか」
 ふっと笑ったヴォーグは、肩を並べて歩き出す。
「昨日の夜考えたんだけど、でも答えは変わらなかったな。ヴォーグは?」
「変わらなかったのかよ。俺にはとんと、分からないことだなとは思った。俺は愛されていたことも、愛したこともないからだ。人を想ったことがない。けれど、〝人を想う〟ことがどういうものなのか、知らぬままというわけにもいかない。だから、慣れないかもしれないが、お前の願いを聞き入れるところから、始めたい」
 ヴォーグはうっすらと、笑みを浮かべる。
「そ、それってつまり……?」
 ツォルは難しい顔をする。
「ストレートに言えば、お前には心のままにいてほしい。そして、俺に教えてほしい。人を好きになるとは、どういうことか」
「ありがとう、ヴォーグ!」
 ツォルの顔が、ぱあっと輝いた。
「そんなに嬉しいのか」
 こちらまでつい、笑顔になってしまうほどであった。
「これから、よろしくな」
「こちらこそ!」
 それが新たな関係を築くきっかけと、なったのだった。
 
 軍の中でヴォーグは、キューリを上手いこと使いながら、情報を得ていく。聞けば、なんでも答えてくれるからだ。
「そういえばだいぶ前に、ここから近い小さな町が、元軍人によって軍隊化して、誰かに壊滅させられたって聞いたな」
「そうなのか」