冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 優月は変わった笑い方をする人だな、と思った。
「刀鍛冶をしている、変わり者だ」
「変わり者のお前さんに、言われたくない。腹が立つ」
 光圀は悪戯っぽく、笑っている。
「ヴォーグに助けてもらったのがきっかけで、一緒に洋館で暮らしてる」
「お前さんが人を助けたのか……。珍しいことだな」
 光圀は眉を上げる。
「一方的に殴られて、裸足でいたんだぞ。助けるしかなかろうが」
 不満げにヴォーグが告げる。
「それもそうだな。だから歩かないってことか?」
「歩かないんじゃねぇよ。歩けない(・・・・)んだ」
 ヴォーグはいちいち、訂正を入れる。
「そうなんだな。歩けない状態になって、だいぶ経つのか?」
 光圀の言葉に、ヴォーグがうなずく。
「坂埜って医者に診てもらっている。俺が知るいい医者はあいつしかいないし」
「ふむふむ。まあ、その方がいいだろうしなぁ」
 光圀は二度うなずく。
「話はすんだ。帰るか」
「ちょっと待てよ! って、行っちまったな……」
 光圀の制止も届かず、ヴォーグと抱かれた優月は立ち去った。

 洋館への帰り道。この日は曇り空であったが、ヴォーグはフードを目深に被っている。
「刀鍛冶の人、面白かったわ」
「そりゃ、なによりだよ」
 つい苦笑を浮かべるヴォーグ。
「ねえ、ヴォーグ。血が欲しいときってどうしてるの?」
「大体我慢できるが、どうにもならんときは、洋館の脇にある山にこもる」
「動物の血で、何とかなるもの?」
 きょとんとした顔で優月が尋ねる。
「ああ。慣れるまでにだいぶかかったが」
「そう」
「話題になったついでに言うが、近々山にこもってもいいだろうか? 最近は血を飲んでいなかった」
「それは終わるまで、洋館で待ってればいい、ってことでしょ? ヴォーグにとっては必要だから、あたしに気兼ねしないで」
「……ありがとうな」
 ヴォーグは優月を、まっすぐに見つめた。