「俺は想われるような、奴じゃない」
「そう。でも、あなたはいつだって〝誰か〟のことを、考えてきたんじゃない? 自分のことなんて、ほっぽり出してさ。そりゃ、想う人が増えていくわけだよ。あなたのその優しさに、魅了されてるんだから」
優月はふっと笑う。
「なんだと……? 俺が優しいのか……?」
「人の痛みに寄り添えるんだから、それが一番しっくりくると思うよ? みんな、あなたが幸せに生きることを、望んでいたんだと思うな」
優月はにこりと笑う。
「俺は……幸せになどなってはならない」
ヴォーグは涙しながら、言葉を紡ぐ。
「人を殺して、生きているから?」
優月の問いにうなずく。
「そうだ。俺は光の中より、闇の中の方が落ち着く」
優月はかける言葉を無くし、ただヴォーグに寄り添うことしかできなかった。
「今まで、辛かったね。辛いときは、泣いていいんだよ?」
優月も目に涙を浮かべて言う。
「……そうだな」
ヴォーグはそれだけ言い、涙を流している。頬に伝う涙を何度も拭うがキリがない。
「ねぇ、ヴォーグ。まだ話してないこと、あるでしょう?」
優月は悪戯っぽく笑う。
「なんで、分かるんだよ」
ヴォーグは泣きながら笑う。
「だって、この国にすぐきたわけじゃ、なさそうだし? ただの勘なのだけれど」
くすくすと笑う優月に、ヴォーグはつい頭を小突く。
「え?」
「痛くはしてないから、よしとしてくれ。また、聞かせてやるから」
「うん。……少しは落ち着いた?」
「それはこちらの台詞だ」
「ふふ」
「くくく」
二人は顔を見合わせて、吹き出した。
それからしばらく話をした後、ヴォーグは自室に引き上げた。
形見である煙管を、大事そうに眺めて思う。
この煙管は、ミューリが片時も離さず、身につけていたもの。
恩人の大事にしていたものなら、形見としてもらってもいいだろうとのことで、愛用しているのだ。
――最初の別れからもう、大分経つのか……。
ヴォーグはそんなことを思い出していた。
一人になった優月はというと。
ベッドの上で声を押し殺して泣いていた。
ヴォーグの手前、感情を爆発させてはいけないのかと思っていた。だから、我慢していた。
いなくなった途端、涙が溢れて、止まらなくなってしまった。
――なんで、あんなに辛い話を、無表情で他人事みたいに話すのよ……!
それがあまりにも切なかったし、感情を無理に抑えているのではない、と悟った。
感情を表に出さないように、意識しているようにも思えた。
長く生きてきたからなのか、感情などいらないと思ったのかもしれない。
「そう。でも、あなたはいつだって〝誰か〟のことを、考えてきたんじゃない? 自分のことなんて、ほっぽり出してさ。そりゃ、想う人が増えていくわけだよ。あなたのその優しさに、魅了されてるんだから」
優月はふっと笑う。
「なんだと……? 俺が優しいのか……?」
「人の痛みに寄り添えるんだから、それが一番しっくりくると思うよ? みんな、あなたが幸せに生きることを、望んでいたんだと思うな」
優月はにこりと笑う。
「俺は……幸せになどなってはならない」
ヴォーグは涙しながら、言葉を紡ぐ。
「人を殺して、生きているから?」
優月の問いにうなずく。
「そうだ。俺は光の中より、闇の中の方が落ち着く」
優月はかける言葉を無くし、ただヴォーグに寄り添うことしかできなかった。
「今まで、辛かったね。辛いときは、泣いていいんだよ?」
優月も目に涙を浮かべて言う。
「……そうだな」
ヴォーグはそれだけ言い、涙を流している。頬に伝う涙を何度も拭うがキリがない。
「ねぇ、ヴォーグ。まだ話してないこと、あるでしょう?」
優月は悪戯っぽく笑う。
「なんで、分かるんだよ」
ヴォーグは泣きながら笑う。
「だって、この国にすぐきたわけじゃ、なさそうだし? ただの勘なのだけれど」
くすくすと笑う優月に、ヴォーグはつい頭を小突く。
「え?」
「痛くはしてないから、よしとしてくれ。また、聞かせてやるから」
「うん。……少しは落ち着いた?」
「それはこちらの台詞だ」
「ふふ」
「くくく」
二人は顔を見合わせて、吹き出した。
それからしばらく話をした後、ヴォーグは自室に引き上げた。
形見である煙管を、大事そうに眺めて思う。
この煙管は、ミューリが片時も離さず、身につけていたもの。
恩人の大事にしていたものなら、形見としてもらってもいいだろうとのことで、愛用しているのだ。
――最初の別れからもう、大分経つのか……。
ヴォーグはそんなことを思い出していた。
一人になった優月はというと。
ベッドの上で声を押し殺して泣いていた。
ヴォーグの手前、感情を爆発させてはいけないのかと思っていた。だから、我慢していた。
いなくなった途端、涙が溢れて、止まらなくなってしまった。
――なんで、あんなに辛い話を、無表情で他人事みたいに話すのよ……!
それがあまりにも切なかったし、感情を無理に抑えているのではない、と悟った。
感情を表に出さないように、意識しているようにも思えた。
長く生きてきたからなのか、感情などいらないと思ったのかもしれない。
