残酷すぎる事実に、ヴォーグは頭を抱える。
「血は! どうしても必要なものなんだ! 生きるためには、飲まなきゃならない! あああああ!」
小さな身体を丸めて、ヴォーグが叫ぶ。
「ここで始末する!」
泣き叫んでいるヴォーグに、銃口が向けられる。
男が引き金を引こうとした瞬間、その間に一人の女が立ちはだかる。
「邪魔をするな、この変わり者めが!」
「それはこっちの台詞! なにも教えないでおいて、都合が悪くなったら消す? この子の命の重さを、軽視してるとしか言えないね!」
女がそこまで言うと、震えているヴォーグの背に触れる。
「ああああああ……」
「よくお聞き。あんたはこの私が守る。だから、少しの血で満足するように、一緒に頑張らないかい?」
「少しの血で、満足するかな……? また人を殺しちゃいそうだよ……」
弱々しくヴォーグが呟く。
「ならひとつ、約束をしよう。血が飲みたい衝動はあってもいい。けれど、人間の血を吸ってはいけない。代わりは山にいけばたくさんあるし」
「人の血は吸っちゃだめなんだね? 頑張って守ってみる」
ヴォーグは宣言をした。
「よし、いい子だ。名前は?」
女がヴォーグの頭を撫でて尋ねる。
「ヴォーグ」
「私の名前はミューリ。さて、こんなところから、おさらばしないと。抱えて走るけどいいかな?」
ミューリの言葉にこくんとうなずいた。
ヴォーグはミューリに抱えられて、小さな町を出た。
二人は山の麓にある、小さな家に辿り着く。
「ここが私の家だよ。もう抱えなくても大丈夫だね」
ヴォーグは地面に下ろされて、トコトコと歩いていく。
が、石に躓いてこてんと転ぶも、泣かずに立ち上がって歩き出す。
その様子を見ていた、ミューリは首をかしげた。
それから何年か経ったある日、ヴォーグはさまざまな知識と血の衝動を抑える術を身につけた。
見た目で言えば二十八歳くらいにはなっていたが、それよりも成長することはなかった。ぱたりと、成長が止まってしまったかのようにも思えた。
薪割りをし終えて家に戻ると、ミューリが声をかけてきた。
「ヴォーグ。これがなんだか分かるかい?」
「リヴォルバーだな。それがどうした?」
首をかしげたヴォーグが、聞き返す。
「いずれ、私は死ぬから。その前に独りで生きていく術を、身につけないと。今のままじゃ、生き残れないからさ」
「新たな修行ってところか。ぜひ頼みたい」
ヴォーグは口端を、吊り上げて嗤う。
あまりに整いすぎているその表情に、ミューリは驚いてしまう。
「じゃあ、明日からビシバシ鍛えるから覚悟して? 逃げたら許さないよ?」
「逃げないから」
ヴォーグはつい苦笑した。
「血は! どうしても必要なものなんだ! 生きるためには、飲まなきゃならない! あああああ!」
小さな身体を丸めて、ヴォーグが叫ぶ。
「ここで始末する!」
泣き叫んでいるヴォーグに、銃口が向けられる。
男が引き金を引こうとした瞬間、その間に一人の女が立ちはだかる。
「邪魔をするな、この変わり者めが!」
「それはこっちの台詞! なにも教えないでおいて、都合が悪くなったら消す? この子の命の重さを、軽視してるとしか言えないね!」
女がそこまで言うと、震えているヴォーグの背に触れる。
「ああああああ……」
「よくお聞き。あんたはこの私が守る。だから、少しの血で満足するように、一緒に頑張らないかい?」
「少しの血で、満足するかな……? また人を殺しちゃいそうだよ……」
弱々しくヴォーグが呟く。
「ならひとつ、約束をしよう。血が飲みたい衝動はあってもいい。けれど、人間の血を吸ってはいけない。代わりは山にいけばたくさんあるし」
「人の血は吸っちゃだめなんだね? 頑張って守ってみる」
ヴォーグは宣言をした。
「よし、いい子だ。名前は?」
女がヴォーグの頭を撫でて尋ねる。
「ヴォーグ」
「私の名前はミューリ。さて、こんなところから、おさらばしないと。抱えて走るけどいいかな?」
ミューリの言葉にこくんとうなずいた。
ヴォーグはミューリに抱えられて、小さな町を出た。
二人は山の麓にある、小さな家に辿り着く。
「ここが私の家だよ。もう抱えなくても大丈夫だね」
ヴォーグは地面に下ろされて、トコトコと歩いていく。
が、石に躓いてこてんと転ぶも、泣かずに立ち上がって歩き出す。
その様子を見ていた、ミューリは首をかしげた。
それから何年か経ったある日、ヴォーグはさまざまな知識と血の衝動を抑える術を身につけた。
見た目で言えば二十八歳くらいにはなっていたが、それよりも成長することはなかった。ぱたりと、成長が止まってしまったかのようにも思えた。
薪割りをし終えて家に戻ると、ミューリが声をかけてきた。
「ヴォーグ。これがなんだか分かるかい?」
「リヴォルバーだな。それがどうした?」
首をかしげたヴォーグが、聞き返す。
「いずれ、私は死ぬから。その前に独りで生きていく術を、身につけないと。今のままじゃ、生き残れないからさ」
「新たな修行ってところか。ぜひ頼みたい」
ヴォーグは口端を、吊り上げて嗤う。
あまりに整いすぎているその表情に、ミューリは驚いてしまう。
「じゃあ、明日からビシバシ鍛えるから覚悟して? 逃げたら許さないよ?」
「逃げないから」
ヴォーグはつい苦笑した。
