ある日、ヴォーグは過去を語ろうと思い立った。
――どうせ、怪我が治るまでは動けねぇし。ま、優月次第だが。
明日、聞いてみようと思って、ベッドに身を投げた。
翌朝ヴォーグが少しだけ緊張しながら、優月の部屋を訪れる。
「おはよ」
「ああ」
ヴォーグが日の光から逃れるように、コートのフードを目深に被って、窓に背を向ける。両手は腕組みをすることで隠す。日光に当たると分かる痛みがないことに、安堵の溜息を吐く。
「こんな時には、いつもは部屋にいるはずなのに。……どうしたの?」
優月が首をかしげる。
「なに。どうしても話しておきたいことがある」
「分かったけれど……。今日、日射し強そうだよ」
「なら……。これを使えばいい」
ヴォーグは天蓋つきのベッドの、カーテンをひく。
四方をそれで覆うと、いくらか暗くなった。でも、お互いの顔が分かる程度だった。
「さっきまであんなに、日が当たってたのに」
「日を遮ってくれるものだとは、思わなかったな、まさかここまでとは」
「え? 使ってみるまで分からなかったの?」
優月がくすくすと笑う。
「普段から使ってなかった。仕方ないだろ」
ヴォーグは美しい顔を少し歪める。
「じゃあ、しょうがないね」
微笑みながら優月が言う。
「さて、昔話を始めよう」
ヴォーグは仕切り直すように、咳払いをして語り出した。
* * *
ヴォーグの最初の記憶は、まだ幼かったころ。
血が飲みたくて仕方がなくなり、両親の血を限界まで飲み干してしまったこと。
血が飲みたい衝動のコントロールができる歳でもなく。
満足してやっと、両親が動かないことに気づいて首をかしげる。
「なんなんだこいつ……!」
「二人とも死んでるぞ!」
この時のヴォーグは、自分のせいで両親が死んだことすら分からなかった。
ぽかんとしたヴォーグは男達に連れ出され、檻の中へ。
織に入れられて大分過ぎたある日。
またも血が飲みたい衝動に駆られ、ここにいては血がないことを本能で悟ったヴォーグ。
ヴォーグは鉄格子を強引に破壊して外に出た。
「なんで外にいるんだ⁉」
駆け出してすぐに見つけた男に襲いかかり、血を思う存分吸った。
あれから時間が経ったせいか、一人の人間が死ぬくらいの血の量で満足するようになった。
さすがに二人分は、もう飲めない。
「こっちだ!」
騒ぎを聞きつけた男達が、集まってくる。
「このバケモノめ!」
「なんで……? 血が飲みたかったから飲んだだけだよ?」
ヴォーグはそこで初めて喋った。
「お前のせいで、三人が死んでるんだぞ⁉」
「え……?」
「最初はお前を引き取った両親。次はこいつ。お前が血を飲みたいって衝動さえ抑えれば、彼らは死ななかった!」
――どうせ、怪我が治るまでは動けねぇし。ま、優月次第だが。
明日、聞いてみようと思って、ベッドに身を投げた。
翌朝ヴォーグが少しだけ緊張しながら、優月の部屋を訪れる。
「おはよ」
「ああ」
ヴォーグが日の光から逃れるように、コートのフードを目深に被って、窓に背を向ける。両手は腕組みをすることで隠す。日光に当たると分かる痛みがないことに、安堵の溜息を吐く。
「こんな時には、いつもは部屋にいるはずなのに。……どうしたの?」
優月が首をかしげる。
「なに。どうしても話しておきたいことがある」
「分かったけれど……。今日、日射し強そうだよ」
「なら……。これを使えばいい」
ヴォーグは天蓋つきのベッドの、カーテンをひく。
四方をそれで覆うと、いくらか暗くなった。でも、お互いの顔が分かる程度だった。
「さっきまであんなに、日が当たってたのに」
「日を遮ってくれるものだとは、思わなかったな、まさかここまでとは」
「え? 使ってみるまで分からなかったの?」
優月がくすくすと笑う。
「普段から使ってなかった。仕方ないだろ」
ヴォーグは美しい顔を少し歪める。
「じゃあ、しょうがないね」
微笑みながら優月が言う。
「さて、昔話を始めよう」
ヴォーグは仕切り直すように、咳払いをして語り出した。
* * *
ヴォーグの最初の記憶は、まだ幼かったころ。
血が飲みたくて仕方がなくなり、両親の血を限界まで飲み干してしまったこと。
血が飲みたい衝動のコントロールができる歳でもなく。
満足してやっと、両親が動かないことに気づいて首をかしげる。
「なんなんだこいつ……!」
「二人とも死んでるぞ!」
この時のヴォーグは、自分のせいで両親が死んだことすら分からなかった。
ぽかんとしたヴォーグは男達に連れ出され、檻の中へ。
織に入れられて大分過ぎたある日。
またも血が飲みたい衝動に駆られ、ここにいては血がないことを本能で悟ったヴォーグ。
ヴォーグは鉄格子を強引に破壊して外に出た。
「なんで外にいるんだ⁉」
駆け出してすぐに見つけた男に襲いかかり、血を思う存分吸った。
あれから時間が経ったせいか、一人の人間が死ぬくらいの血の量で満足するようになった。
さすがに二人分は、もう飲めない。
「こっちだ!」
騒ぎを聞きつけた男達が、集まってくる。
「このバケモノめ!」
「なんで……? 血が飲みたかったから飲んだだけだよ?」
ヴォーグはそこで初めて喋った。
「お前のせいで、三人が死んでるんだぞ⁉」
「え……?」
「最初はお前を引き取った両親。次はこいつ。お前が血を飲みたいって衝動さえ抑えれば、彼らは死ななかった!」
