冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

「軍というのは、人の性格を歪ませるようだな」
「え?」
「あいつは確かに俺に言ったぞ。〝軍人らしくありたいが故に、家族を全員殺してくれ〟と」
「そんな……!」
「泣き(わめ)くなり、騒ぐなり勝手にしろ。だが、ここで死ね」
 ヴォーグは言い放つと、今度は狙いを心臓に定めて引き金を引いた。
「この、嘘吐き……!」
 女はそんな言葉を残して、物言わぬ骸になった。
「な、なにをした⁉」
 家の奥から、初老の男が声を荒げる。
 ずかずかと中に入ると、怯えている子ども二人いた。彼らを守ろうとでもいうのか、初老の女がこちらを睨みつけている。
「見てのとおりだが?」
「引きつけておくから逃げ……!」
「邪魔をするな」
 ヴォーグは吐き捨てながら、子どもを守ろうとしている老女の頭を撃ち抜く。
「そんなっ!」
 初老の男はただその場で、固まってしまって動けない。
「恐怖から逃げることなど、誰にもできやしねぇよな」
 ヴォーグが呟きながら、両手にリヴォルバーを構え、同時に引き金を引いた。
 ふたつの弾丸は、子ども二人の頭を撃ち抜く。
 彼らはなにが起こったのか、理解できぬまま、骸となった。
「邪魔な連中は殺したぞ」
「邪魔だと! 大事な家族を殺しておいて、お膳立てしたみたいな、言い方をするなっ!」
 男は壁にかかっていた刀を手にして鞘を捨て、突きを繰り出してきた。
「哀れだな。そんな武器による突きで、俺が弱るとでも思ったのか?」
 その攻撃はヴォーグの腹を刺し貫くも、当の本人は冷たく嗤うだけ。
「なっ!」
 痛みを痛みと思っていないことに気づいた男は、顔から血の気が引く。
「こんなのはただの、掠り傷(・・・)だろう?」
「なんなんだよ、お前えええ⁉」
 男は傷を抉らんと、刀を動かしながら叫ぶ。
「人ではない、とだけは言っておこう。そうでなければ、こんな目の色はしてねぇよ」
 ヴォーグは腹の傷を抉られても一切表情を変えず、男の両肩を両手に構えたリヴォルバーで撃ち抜く。
 右手に構えたリヴォルバーを仕舞い、左手に構えたリヴォルバーのグリップで頭を打ち据える。
 どさりと倒れた男を睨みつけながら、腹に刺さっている刀を一息に抜く。
 床に投げ捨てた刀を足で踏みながら、強引に曲げる。それで刀は二度と使い物にならなくなった。
「ああああ……。なんて奴だ……」
 唯一あった武器が使えなくなった男は、絶望の(ただ)中に突き落とされたような顔をする。
「俺のことをなんと言おうが、構わねぇ。依頼を達成するだけだ。どんな(・・・)()()使って(・・・)()
 そんな男にかける言葉は、恐ろしいほど冷たいものだった。