「生存している家族全員」
「お前、本当に後悔しないのか」
低い声でヴォーグが尋ねる。
「もう決めたことだ。迷いはない」
毅然とした口調で、言い放つ男。
「ならば、金をもらうぞ」
「ここに。今日のために搔き集めた」
男は札束の山を渡してきた。
「金は本物のようだな。では、その家族の苗字を教えてくれ」
「酒本だ。徴兵していると言えば、すぐに分かる」
「今夜、出向く。後日また会おう」
「分かった」
男は軍人らしく、敬礼をして立ち去った。
「戻ったぞ」
ヴォーグが優月の待つ部屋へ顔を出す。
「お帰りなさい。その袋は……?」
「次の依頼を受けたときに、もらった札束だよ。後で仕舞うが、話が先だ」
低い声で言うヴォーグに、首をかしげる優月。
「え?」
ヴォーグは袋をサイドテーブルに置き、小さな椅子に腰かける。
「今回の依頼、どうも引っかかる。軍人らしくありたいと思うのは勝手だが、家族を代わりに殺してくれ、と。大事な家族だろうに、そのためだけに斬り捨てるというのは、な」
「……家族よりも、自分のことしか、頭にないんじゃないの?」
優月は思ったことを口にする。
「そうだよな。都合が悪いから消してくれ、と。当人がやろうとするとこじれるし、そんな時間が取れない、というのが本音だろ」
「軍人らしさってそんなに重要なのかな? だって家族より大事って、ほぼ聞かないけれど?」
優月は考えながら言う。
「らしさなんてもんは捨てちまえ、とは言えねぇしな。言ったら、面倒なことになりそうだ」
ヴォーグは顔をしかめる。
「そうだよね。どちらの派にも与しないとは言ってあるの?」
「ああ。その上で依頼をしてきた」
「そう。ちゃんと、戻ってきてね?」
「もちろんだ。心配だろうが待っていてくれ」
その言葉に優月はうなずいた。
すっかり日も暮れた時刻となり、ヴォーグは装備品のチェックをしてから、洋館を出た。
酒本の実家に向かったヴォーグは、引き戸を叩きながら言う。
「徴兵中の酒本さんのお宅ですか?」
左手は腰のリヴォルバーの、グリップを握っている。
「我が家になんの用ですか?」
出てきたのは、それなりに若い女だった。
「兵として国のために、戦っている本人からの申し出だ。貴様ら全員を殺す」
ヴォーグは冷然と嗤いながら告げ、リヴォルバーをホルスターから引き抜く。
「ひいいいっ!」
撃たれると分かった女が、悲鳴を上げる。
――バシュッ!
「よく見てみろ」
「え……?」
女は地面に視線を向ける。足のすれすれに弾丸が撃ち込まれていた。
「本当に、死ぬのっ⁉」
「そうだ。本人の望みだからな」
「あんな家族思いの人が、そんなこと言うわけない!」
「お前、本当に後悔しないのか」
低い声でヴォーグが尋ねる。
「もう決めたことだ。迷いはない」
毅然とした口調で、言い放つ男。
「ならば、金をもらうぞ」
「ここに。今日のために搔き集めた」
男は札束の山を渡してきた。
「金は本物のようだな。では、その家族の苗字を教えてくれ」
「酒本だ。徴兵していると言えば、すぐに分かる」
「今夜、出向く。後日また会おう」
「分かった」
男は軍人らしく、敬礼をして立ち去った。
「戻ったぞ」
ヴォーグが優月の待つ部屋へ顔を出す。
「お帰りなさい。その袋は……?」
「次の依頼を受けたときに、もらった札束だよ。後で仕舞うが、話が先だ」
低い声で言うヴォーグに、首をかしげる優月。
「え?」
ヴォーグは袋をサイドテーブルに置き、小さな椅子に腰かける。
「今回の依頼、どうも引っかかる。軍人らしくありたいと思うのは勝手だが、家族を代わりに殺してくれ、と。大事な家族だろうに、そのためだけに斬り捨てるというのは、な」
「……家族よりも、自分のことしか、頭にないんじゃないの?」
優月は思ったことを口にする。
「そうだよな。都合が悪いから消してくれ、と。当人がやろうとするとこじれるし、そんな時間が取れない、というのが本音だろ」
「軍人らしさってそんなに重要なのかな? だって家族より大事って、ほぼ聞かないけれど?」
優月は考えながら言う。
「らしさなんてもんは捨てちまえ、とは言えねぇしな。言ったら、面倒なことになりそうだ」
ヴォーグは顔をしかめる。
「そうだよね。どちらの派にも与しないとは言ってあるの?」
「ああ。その上で依頼をしてきた」
「そう。ちゃんと、戻ってきてね?」
「もちろんだ。心配だろうが待っていてくれ」
その言葉に優月はうなずいた。
すっかり日も暮れた時刻となり、ヴォーグは装備品のチェックをしてから、洋館を出た。
酒本の実家に向かったヴォーグは、引き戸を叩きながら言う。
「徴兵中の酒本さんのお宅ですか?」
左手は腰のリヴォルバーの、グリップを握っている。
「我が家になんの用ですか?」
出てきたのは、それなりに若い女だった。
「兵として国のために、戦っている本人からの申し出だ。貴様ら全員を殺す」
ヴォーグは冷然と嗤いながら告げ、リヴォルバーをホルスターから引き抜く。
「ひいいいっ!」
撃たれると分かった女が、悲鳴を上げる。
――バシュッ!
「よく見てみろ」
「え……?」
女は地面に視線を向ける。足のすれすれに弾丸が撃ち込まれていた。
「本当に、死ぬのっ⁉」
「そうだ。本人の望みだからな」
「あんな家族思いの人が、そんなこと言うわけない!」
