冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 三人目は女を、監禁し続けた男だった。
 周囲に二人以外、誰もいない広場だった。
「あああああ、あんなに可愛かった人が、どこを探してもいない! あの人は一人では、生きていけないのに!」
「貴様の歪んだ愛情に、嫌気が差したんだよ。閉じ込めていいことなんざ、ひとつもねぇだろ」
 低い声でヴォーグが吐き捨てる。
「誰だ⁉」
「名乗りはしねぇぞ」
「たたた、助けてくれ! しし、死にたくない!」
 男は震えながら逃げ出す。
「女一人を恐怖のどん底にまで落としたのに、てめぇは生きたい? ふざけるんじゃねぇよ」
 ヴォーグは男の発言が頭にきたので、顔すれすれに弾丸を撃ち込む。
「ぎゃっ! 血があああ! 痛い痛い!」
 男は弾丸か掠ったのを感じ取って、怯え出す。
「なんでこういう連中は、いちいち騒ぐんだ」
 ヴォーグはぼそりと呟いたが、男には聞こえていなかった。
「痛い痛い! 誰かこいつを追い払ってよお!」
「そんな奴、どこを探してもいねぇぞ」
 ヴォーグの言葉に、ハッとする。
「そうなのっ⁉」
御託(ごたく)はいい。死にたくないんだったら、足掻いてみせろよ? どこまで通用するんだか」
 呆れつつ、ヴォーグが言う。
 男は周囲に視線を走らせ、落ちていたボロボロの刀を手に取って、斬りかかる。
「おらあああっ!」
 基礎がなっていなかったが、まぐれでも起きたか、その切っ先はヴォーグの左腕を斬り裂く。
 だが、切れ味が恐ろしいほど悪く、いくら力を込めても、ほんの少ししか斬れなかった。
「馬鹿だなー。ちゃんと武器を見てから使えってんだ」
 呆れ果てた、ヴォーグの声が響く。
「う、うるさい! こうなったら……!」
 逃げることを察したヴォーグが、男の足許に弾丸を撃ち込む。
 銃声が響く。
「だから、何度も言わせるなよ。貴様はここから逃げられないし、ここで死ぬんだ」
「嫌だ、嫌だ! も、もうこんなことしないから! お願いだから、殺さな……!」
 ――バシュッ!
 ヴォーグは男の命乞いを、途中で遮る。
 喉を撃ち抜かれた男は、無言で顔を青くする。
「貴様の意思なんか、どうでもいい。重要なのは、貴様の死を願う者がいる、ってことだけだ。生きることすらもできないくらい、重い罪を犯した。死んで当然なんだよ」
 恐ろしく冷たい声で言い放つヴォーグの口許には、冷笑が浮かんでいる。
 しまいには男が泣き出す。子どものように〝死〟から逃れようと、後ずさる。
 ヴォーグは馬鹿な男だ、と嘲笑しながらとどめの一撃を放つ。
 心臓を撃ち抜かれたそれはもう二度と動くことがなかった。