冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 ヴォーグは逃げると言おうとした男の台詞を遮るように、引き金を引く。
 ――バシュッ!
「あああああっ!」
 男は右肩を撃たれ、またも悲鳴を上げる。そこから一歩も動く気力を無くした。
 必死に足掻いていたと言っても、ろくに進んでいない。
「はっ。ようやく、死から逃れられないと、理解したようだな?」
 ヴォーグは二度、引き金を引く。
 二度の銃声が響き、さらなる痛みに男が顔を歪める。
「あが! うぐっ!」
 左肩と左腕を、撃ち抜く。
 ヴォーグは逃げ道を塞ぐように、男の前方に移動して、その場に片膝をつく。
 男の頭に、リヴォルバーの銃口を押し当てて、告げる。
「貴様は救いようもない、馬鹿な男だ。甘ったれたことも、言っていたな。まったくこういうクズ、なんでこんなにも多いんだ」
 ヴォーグは男の右手が、なにかを探るように動いているのを横目で見つつ、溜息を吐く。
「敵相手に、なにもできずに死ぬのは嫌だ!」
 男は血を吐きながら、右手に握った古びたナイフを握って振り下ろす。
「目の前にいるのは、大人のフリをした餓鬼だったか」
 そのナイフを右腕に受けたヴォーグが、冷然と嗤う。
「黙れっ……。この、命を奪うことを(たの)しむ者め……!」
 その言葉を聞いたヴォーグの目に、恐ろしいほどの冷たさが宿る。
 とどめの銃声が響く。
 男の意識はそこで途切れ、二度と息を吹き返すことはなかった。
 頭を撃ち抜いたのだから、当然とも言えるが。
「人を殺すことが愉しいという、愉快犯ではない。そうさな……。最も重い業を背負うことしかできない、ただの射手。神なんてモノじゃない」
 自嘲するように、ヴォーグは呟くとナイフを抜き捨て、その場を後にした。

 続いて向かったのは、女に暴力を振り続けていた男。
 調べによるとこの男、無言でただただ殴る。
 それは女からしたら怖いだろうと、ヴォーグは思う。
 男はヴォーグの少し前を、歩いている。
「おい」
 ヴォーグが低い声を出し、男を呼び止める。
「なんの用?」
 男はヴォーグほどではないが、がっしりとした身体つきをしている。
 ――ふむ。人を殴るには最適、ともいえる身体だな。
「黙ってついてこい。己の命が惜しいならば。貴様に拒否権はない」
 ヴォーグは男の背中に銃口を押し当て、低い声で告げる。
「分かった」
 その言葉を聞いてから、ヴォーグは突きつけていたリヴォルバーを引っ込める。
「ついてこい」
 男の視線が左手に持ったリヴォルバーに、釘付けなのを感じつつ、ヴォーグは歩き出した。
「どこに連れていこうって言うんだ」
 大通りから続く細い道に移動すると、ヴォーグが言いながら振り返る。
「この世ではない場所に」
 左手に握られたリヴォルバーが、日の光に照らされて、ぎらりと光る。