冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

「〝言葉の暴力〟の方が、(たち)が悪いんだよ! しかも、言葉ってのはな、目に見えないナイフと、同じなんだ!」
「なにを、言ってるんだ……?」
「理解できないのであれば、それでもいい。だがな、貴様は一人の人間を、恐怖のどん底に、突き落とした」
 ヴォーグは怒気を孕んだ、低い声で告げる。
「それはあいつが全部悪いからっ!」
「否! 己の非を一切認めねぇだけじゃなく、誰かのせいにして楽になりたかったんだろ? 女に矛先を向けた。やっていることは最低だよ」
 ぞくりとするほど冷たい目で、ヴォーグは男を睨みつける。
「僕は被害者だ!」
 男はそんなことを口走る。
「まだ言うか! 貴様にはこの手で〝痛み〟と〝恐怖〟を教え込んでやる!」
「やめ……! ぎゃああああっ!」
 男の制止を遮るように、ヴォーグはリヴォルバーの引き金を引いた。
 その弾丸は右脚を撃ち抜き、鮮血が零れ出す。
 男は焼けるような痛みに、地面に倒れ、のたうち回る。
 ――一発撃ち込んだだけで、この反応か。よほど〝痛み〟に、耐性がないと見える。
 ヴォーグはその様子を、呆れながら見つめる。
「痛い痛い痛い! これじゃあ、歩けない!」
「まったく(やかま)しい。どうだ、ひとつずつ、できなくなっていく感覚は? 恐ろしかろう?」
 本音を吐き捨てつつ、ヴォーグは口端を吊り上げて嗤う。
「怖い怖い! 早くこの男を、僕の前から排除してよ! 誰かー!」
 第三者に助けを求めようと、声を張り上げる男だったが、様子を見に来る者などは誰もいない。
 路地の向こうには、人の気配が確かにある。けれど、さっきの大声で誰かがいるというのは、通行人達も気づいたはず。興味がないか、面倒事を避けたいというのが本音だろう。
 あるいはあれだけ、あちこちに話して回ったのだから、もうどうでもいいと思っている者も、いるかもしれない。
「助けにくる変わり者なんざ、誰一人としていねぇんだよ。貴様は誰からも、生きていてほしい、と思われていないようだな。……当然だが」
「ぼくは、死ぬの? ……こんなところで?」
 青ざめた男が、口走ると同時に、強い拒絶の意思が出てきたらしい。じりじりと動き始める。
「そうだ。もっと己の行動を見直し、人の〝痛み〟に気づいていたら、こんなことにはならなかっただろうよ。そして、俺がこうして出張(でば)ることもなかった」
 ヴォーグは逃げようという意思を感じ取り、もう一発左脚に撃ち込む。
「ぎゃああああ! 痛い痛い!」
 男は悲鳴を上げる。
「ついでに言っておくが、痛む所は増えていく一方だからな? それがやんだ時、貴様は死ぬ」
 ヴォーグは口端を吊り上げ、恐ろしいほど冷たい笑みで嗤う。
「ししし、死にたくないっ! こんなところから……」