「ちょっと怪我してるところ、全部見せてね?」
「どうしてですか? 足だけでもいいくらいです。しかも、他人のお金で見てもらうなら、必要最低限で構いません」
優月は言葉を紡ぐ。
「お金はヴォーグが払うって言ったのかい?」
「……ええ」
優月がうなずくと、男は顎を掻く。
「自己紹介がまだだったね。私は坂埜。ヴォーグとは顔見知りなんだ。ヴォーグは金に困ってないから、治療代くらいどうってことないよ。それよりも。君は多分、一人で頑張りすぎだ」
「え……?」
優月は混乱した。
「こんなに傷だらけでぼろぼろで。足が一番酷い。治療してすぐには歩けないよ?」
「え……。歩けないんですか……?」
優月は顔を青くする。
「これまでずっと、痛いのを我慢して歩いていたんでしょう? せめて、歩いても痛みがないくらいになるまで、きちんと治さないといけない。それに、家以外の場所ではちゃんと履物を使うこと。できれば家でもなるべく歩かないか、履物を使って。裸足で外を歩くなんて、もう二度としないで?」
「あたしには、履物を買うなんて、治療のために通うだなんて、そんな余力はありません。あたしは独りで、生きないといけないんです」
青ざめた顔をしながら、優月が言う。
「そう。まあ、それはおいおい考えよう。なにか困っていることはないかい?」
「……骸を見ると、呼吸が早くなって、なにも言えなくなるんです。それを嘲笑われたりしてきました」
優月はそれだけ口にする。
「辛かったね。きっとそれは、骸を見たくないっていう、強い拒絶反応かも」
「拒絶、反応?」
「君の場合はどうしても見ていられない、見ていたくないモノが骸、というだけだ。見たくないのなら、見ないですむ方法を考えて、それを徹底的に避ければいいだけ。全身全霊で拒絶しているのに、それを嘲笑う馬鹿のことなんてね、さっさと忘れていいんだよ」
凄みのある笑みに、優月は少し引いてしまう。
「でも、あたしはいつも、誰かに殴られ続けてきました。心を折られたり、してきました。それが当たり前だと、思ってます」
「物心ついたときからそうだったんなら、そう思っても仕方がないよね。でも、君はヴォーグに出会ってよかったと思うよ?」
優月は首をかしげることしか、できない。
「え?」
「君は自分の身体がこんなになっても、生きようと足掻いてた。そんな過酷な道、変えちゃえばいいんだよ。そんなに辛い荷物なら、ポイって捨てちゃえばいいんだよ。ヴォーグにはできないって言われたけど、君ならできると思うよ」
「ん……?」
優月はずきんと走った足の痛みに、顔をしかめた。
痛む両足を労わるように、塗り薬と油紙を押し当てられ、ぐるぐると晒し木綿を巻かれた。
「あと、化膿止めの粉薬も一緒に出しておくから、ちゃんと飲んでね。それから」
「それから……?」
「君は心も身体も酷使しすぎた。ゆっくり休むんだよ」
とびきりの優しい笑顔に、優月は戸惑った。
「どうしてですか? 足だけでもいいくらいです。しかも、他人のお金で見てもらうなら、必要最低限で構いません」
優月は言葉を紡ぐ。
「お金はヴォーグが払うって言ったのかい?」
「……ええ」
優月がうなずくと、男は顎を掻く。
「自己紹介がまだだったね。私は坂埜。ヴォーグとは顔見知りなんだ。ヴォーグは金に困ってないから、治療代くらいどうってことないよ。それよりも。君は多分、一人で頑張りすぎだ」
「え……?」
優月は混乱した。
「こんなに傷だらけでぼろぼろで。足が一番酷い。治療してすぐには歩けないよ?」
「え……。歩けないんですか……?」
優月は顔を青くする。
「これまでずっと、痛いのを我慢して歩いていたんでしょう? せめて、歩いても痛みがないくらいになるまで、きちんと治さないといけない。それに、家以外の場所ではちゃんと履物を使うこと。できれば家でもなるべく歩かないか、履物を使って。裸足で外を歩くなんて、もう二度としないで?」
「あたしには、履物を買うなんて、治療のために通うだなんて、そんな余力はありません。あたしは独りで、生きないといけないんです」
青ざめた顔をしながら、優月が言う。
「そう。まあ、それはおいおい考えよう。なにか困っていることはないかい?」
「……骸を見ると、呼吸が早くなって、なにも言えなくなるんです。それを嘲笑われたりしてきました」
優月はそれだけ口にする。
「辛かったね。きっとそれは、骸を見たくないっていう、強い拒絶反応かも」
「拒絶、反応?」
「君の場合はどうしても見ていられない、見ていたくないモノが骸、というだけだ。見たくないのなら、見ないですむ方法を考えて、それを徹底的に避ければいいだけ。全身全霊で拒絶しているのに、それを嘲笑う馬鹿のことなんてね、さっさと忘れていいんだよ」
凄みのある笑みに、優月は少し引いてしまう。
「でも、あたしはいつも、誰かに殴られ続けてきました。心を折られたり、してきました。それが当たり前だと、思ってます」
「物心ついたときからそうだったんなら、そう思っても仕方がないよね。でも、君はヴォーグに出会ってよかったと思うよ?」
優月は首をかしげることしか、できない。
「え?」
「君は自分の身体がこんなになっても、生きようと足掻いてた。そんな過酷な道、変えちゃえばいいんだよ。そんなに辛い荷物なら、ポイって捨てちゃえばいいんだよ。ヴォーグにはできないって言われたけど、君ならできると思うよ」
「ん……?」
優月はずきんと走った足の痛みに、顔をしかめた。
痛む両足を労わるように、塗り薬と油紙を押し当てられ、ぐるぐると晒し木綿を巻かれた。
「あと、化膿止めの粉薬も一緒に出しておくから、ちゃんと飲んでね。それから」
「それから……?」
「君は心も身体も酷使しすぎた。ゆっくり休むんだよ」
とびきりの優しい笑顔に、優月は戸惑った。
