冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

「頭なんて下げないでいいから、そのまま作業を進めな! 今回はかなりの急ぎなんだから、でも丁寧に確実に頼むよ。雑な仕事したら、承知しないよ?」
 間髪入れずに野々宮が言うと、女達はいっせいにうなずいた。
 ――あんなに暗いだけじゃなく、知ろうとすることだけでも、躊躇いが生まれるほどの、安易に踏み込ませない雰囲気……。本当に謎に、包まれている人だよ。
 そんなことを思いながら、野々宮は女達の様子を見つつ、指示を出した。

 * * *

 野々宮はそこまで振り返って、ふーと息を吐き出す。
 ――旦那はなにを思ってるのかねぇ。
 ヴォーグに思いを馳せた。

 そのころヴォーグは、優月の部屋にいた。
「俺がどうやって、女しか対応しないあの店で信頼を勝ち取ったのか。それを話しておきたい」
「長くなってもいいから、聞きたい」
 優月は興味津々、といった顔をしている。
「俺は店に入るなり、店の事情を聞いた。俺の事情も伝えた上で、女達が殺してほしいという者達の名を聞いた。そして一日待った」
 遠い目をして、ヴォーグは語り出した。

 * * *

 ヴォーグは一日の間に、五人の男達について徹底的に調べた。
 情報は多いに、越したことはない。
 どんな罪を犯し、生きているのか。
 それくらいは、知っておかねば。
 とくに夜はどこにいるのかの把握と、名前の確認に余念がない。
 五人すべてを調べ終え、ヴォーグは顔をしかめる。
 様々な者がいる。どれもクズであることに、変わりないが。
 精神攻撃、物理攻撃、束縛、脅迫、依存。
 どれもこれも、行き過ぎている、としか言いようがない。
 こんな奴がよくもまあ、生きているなと、思わずにはいられない。
 不愉快極まりないし、こんな連中、逃げられても文句は言えないはず。
 と思っていたのだが、少し様子を探ったところ、周囲に逃げられたことを聞かれて、愚痴を披露する始末。
 救いようもない、馬鹿な連中である。
 様子を探ったときに殺してやろう、と思うくらいには、どいつもこいつも酷い。
 
 なんとか、一日辛抱したヴォーグは、午前中に服屋を訪れる。
「あの五人、救いようがないほど馬鹿だ」
 ヴォーグは低い声で、ぼそっと吐き捨てる。
「というと?」
 野々宮が首をかしげる。
「嫁に逃げられたのは、あいつらのせいだろ。なのに嫁のせいに、してやがった。しかも愚痴として、言いふらしている」
「五人全員がですか?」
「ああ。不愉快極まりない」
 ヴォーグの言葉を聞いた、女達も顔をしかめる。
「困った男達だね」
 野々宮の言葉にヴォーグがうなずく。
「どう見ても、あいつらの方がおかしいんだ。無自覚とは……呆れてなにも言えん」
「立ち話はいったん、ここまで。仕立終わってるよ」
「無理を言ってすまない」