黒の煙管を口に含んで、難しい表情を浮かべているヴォーグ。
深く息を吸い込んで、細く、長く、吐き出す。
再度溜息を吐き、いつの間にか優月のことを考えていることに気づいて、つい苦笑を浮かべる。
――俺は自分のことよりも、他人のことを優先させる、と分かっているが。俺はあいつに対して、どのような印象を持っているのだろう。この際、自分なりの答えを、持ってもいいかもしれない。
ヴォーグは考え始める。
最初はただただ、助けなければと思って、動いていたのは確かであって。それにあいつを殴っている男達に腹が立った、というのもある。罰を恐れていない、罪を犯しているのに、その自覚がまったくない連中。本当に、不愉快な奴らだった。怒りもあったためだろう。命を奪う以外の、選択肢が存在しなかった。ああいう輩は、生かしておいても更生などしない、と分かっていたから。
助け出して、彼女の話に耳をかたむけて。そこで悟った。それだけではいけない。あいつらを殺して終い、ではなかったことに。あの連中があいつに植えつけ続けた〝人以下で、殴られるのが、奪われるのが当たり前〟という考えと、生きることの放棄と諦め。あんなクズに、殴られ続けた日々が、長すぎたからかもしれない。打てる手など存在しないのだから、そりゃあ、自棄にもなるだろう。
文字通り心も身体も、ボロボロになって。満足に歩くことすらできない。
彼女の心の傷は、俺なんかが想像もできないくらいに、深い。なにより、彼女はこっそりと泣いている夜があった、ということも知っている。
本人は隠しているつもりだろうし、あえて言ったりはしない。過去になったからといって、彼女がこれ以上苦しまないか、と聞かれると首をかしげてしまう。人を殺めて、生きているのだから。気を配るとしか、言えないのが現状である。
きっとこの地では、毎晩のように、骸がどこかしらで上がっている。〝射手の神〟が動かなくても、派閥に分かれた連中が、殺し合いを繰り返している。
根本的な解決には、繋がらないというのに。哀れというか、愚かというか。人とは何年過ぎようと、同じことを繰り返す、生き物なのだろうか。動乱になってから四十年は経過しているのに、何も変わっていないとは、どういうことだ、と思わずにはいられない。どちらかに統一されてしまえばいいのに、なんて他人事のように思っている。
――俺はこの国に関与しないと決めた。本土の連中がどうなろうと、知ったことではない。見限られたのは、確かなのだし?
そんなことを思いながら、ヴォーグは嘲笑を浮かべる。
酒を呑むことに集中しすぎたことに、苦笑しつつ、紫煙を吸い込んだ。
深く息を吸い込んで、細く、長く、吐き出す。
再度溜息を吐き、いつの間にか優月のことを考えていることに気づいて、つい苦笑を浮かべる。
――俺は自分のことよりも、他人のことを優先させる、と分かっているが。俺はあいつに対して、どのような印象を持っているのだろう。この際、自分なりの答えを、持ってもいいかもしれない。
ヴォーグは考え始める。
最初はただただ、助けなければと思って、動いていたのは確かであって。それにあいつを殴っている男達に腹が立った、というのもある。罰を恐れていない、罪を犯しているのに、その自覚がまったくない連中。本当に、不愉快な奴らだった。怒りもあったためだろう。命を奪う以外の、選択肢が存在しなかった。ああいう輩は、生かしておいても更生などしない、と分かっていたから。
助け出して、彼女の話に耳をかたむけて。そこで悟った。それだけではいけない。あいつらを殺して終い、ではなかったことに。あの連中があいつに植えつけ続けた〝人以下で、殴られるのが、奪われるのが当たり前〟という考えと、生きることの放棄と諦め。あんなクズに、殴られ続けた日々が、長すぎたからかもしれない。打てる手など存在しないのだから、そりゃあ、自棄にもなるだろう。
文字通り心も身体も、ボロボロになって。満足に歩くことすらできない。
彼女の心の傷は、俺なんかが想像もできないくらいに、深い。なにより、彼女はこっそりと泣いている夜があった、ということも知っている。
本人は隠しているつもりだろうし、あえて言ったりはしない。過去になったからといって、彼女がこれ以上苦しまないか、と聞かれると首をかしげてしまう。人を殺めて、生きているのだから。気を配るとしか、言えないのが現状である。
きっとこの地では、毎晩のように、骸がどこかしらで上がっている。〝射手の神〟が動かなくても、派閥に分かれた連中が、殺し合いを繰り返している。
根本的な解決には、繋がらないというのに。哀れというか、愚かというか。人とは何年過ぎようと、同じことを繰り返す、生き物なのだろうか。動乱になってから四十年は経過しているのに、何も変わっていないとは、どういうことだ、と思わずにはいられない。どちらかに統一されてしまえばいいのに、なんて他人事のように思っている。
――俺はこの国に関与しないと決めた。本土の連中がどうなろうと、知ったことではない。見限られたのは、確かなのだし?
そんなことを思いながら、ヴォーグは嘲笑を浮かべる。
酒を呑むことに集中しすぎたことに、苦笑しつつ、紫煙を吸い込んだ。
