「ひいいいっ!」
その雰囲気に完全に呑まれた男は、プライドもなにもかもを投げ捨てて、逃走を試みる。
「逃がすわけねぇだろ」
次の瞬間、男は焼ける痛みを感じながら、転ぶ。
見れば右脚を、撃ち抜かれていた。これでは逃げられない。なにより、撃たれた脚が、痛くてたまらない。
「痛い痛い痛い痛い!」
「まったく。痛みに〝耐性〟がないとはなぁ」
均衡のとれている顔故か、口端を吊り上げて嗤うと、狂気が滲み出る。
容赦のなさで引き金を引くヴォーグに対し、痛みに暴れる男。
絶叫を散々聞いてから、ヴォーグはとどめを刺した。
「ようやく、夜らしい静寂が訪れた」
呟きながら、ふと思い出して長く指笛を吹く。
「呼んだ?」
そこにはそこら辺にいる町人と同じような恰好をした、深緑色の着物を着た男が顔を出す。ごく普通の顔をしていて、背丈は人間の中では高い部類に入るが、ヴォーグほどではない。
「ああ。これの後を頼む」
「これはまた。ずいぶんと殺したねぇ?」
惨劇に眉一つ動かさず、男が言う。
「ざっと三十くらいだが?」
「何人でも殺せる、みたいに言わないでよ? まったく〝射手の神〟の異名を、持つだけのことはあるね」
困ったような顔をした男を、ぎろりとヴォーグが睨む。
「事実だろうが。俺はすべきことをしているだけだ」
ヴォーグが、低い声で言い放つ。
「はいはい。まったく、敵に回したくないよ」
「敵にはならねぇから、心配するな」
くつくつと、ヴォーグが嗤う。
「そりゃよかった。ここは引き受けるから、さっさと手当てしてもらった方がいいよ? ヴォーグの旦那」
「そうさせてもらう。またな、二野」
「じゃあねぇ!」
二野と呼ばれた男は、ぶんぶんと手を振ってヴォーグを見送った。
ヴォーグが立ち去った後の、惨劇をあらためて眺めた二野は、笑みを消して手を叩く。
そこにはずらずらと、男達が控えていた。
「今宵は大量だ。素早く丁寧に。綺麗に片づけよう」
「は!」
控えていた男達はその声で、骸の運び出しから始めた。
地面が見えるようになるまで、運び出しを優先。地面が見えるようになったところで、土を掘り返し、鮮血の跡を消していく。その後足で踏み固めれば、偽装はできる。
幸いなのか何なのか不明だが、此度は袋小路の壁には一切血の痕は残っていなかった。
それはそれで助かると思った二野は、作業を見守る。
骸を運び出してからすぐに、そのまま袋に入れるわけにいかないので、大振りの包丁で切断。
まるで、魚の解体でも、しているかのように見える。ただ、扱うのが人肉というだけで。
骸も鮮度が命である。だから、証拠隠滅と、質のいい骸を手に入れることが重要なのだ。
ヴォーグに出会うまでは、なかなか腕のいい暗殺者がおらず、かなり苦戦を強いられていたことを、思い出しつつ。
その雰囲気に完全に呑まれた男は、プライドもなにもかもを投げ捨てて、逃走を試みる。
「逃がすわけねぇだろ」
次の瞬間、男は焼ける痛みを感じながら、転ぶ。
見れば右脚を、撃ち抜かれていた。これでは逃げられない。なにより、撃たれた脚が、痛くてたまらない。
「痛い痛い痛い痛い!」
「まったく。痛みに〝耐性〟がないとはなぁ」
均衡のとれている顔故か、口端を吊り上げて嗤うと、狂気が滲み出る。
容赦のなさで引き金を引くヴォーグに対し、痛みに暴れる男。
絶叫を散々聞いてから、ヴォーグはとどめを刺した。
「ようやく、夜らしい静寂が訪れた」
呟きながら、ふと思い出して長く指笛を吹く。
「呼んだ?」
そこにはそこら辺にいる町人と同じような恰好をした、深緑色の着物を着た男が顔を出す。ごく普通の顔をしていて、背丈は人間の中では高い部類に入るが、ヴォーグほどではない。
「ああ。これの後を頼む」
「これはまた。ずいぶんと殺したねぇ?」
惨劇に眉一つ動かさず、男が言う。
「ざっと三十くらいだが?」
「何人でも殺せる、みたいに言わないでよ? まったく〝射手の神〟の異名を、持つだけのことはあるね」
困ったような顔をした男を、ぎろりとヴォーグが睨む。
「事実だろうが。俺はすべきことをしているだけだ」
ヴォーグが、低い声で言い放つ。
「はいはい。まったく、敵に回したくないよ」
「敵にはならねぇから、心配するな」
くつくつと、ヴォーグが嗤う。
「そりゃよかった。ここは引き受けるから、さっさと手当てしてもらった方がいいよ? ヴォーグの旦那」
「そうさせてもらう。またな、二野」
「じゃあねぇ!」
二野と呼ばれた男は、ぶんぶんと手を振ってヴォーグを見送った。
ヴォーグが立ち去った後の、惨劇をあらためて眺めた二野は、笑みを消して手を叩く。
そこにはずらずらと、男達が控えていた。
「今宵は大量だ。素早く丁寧に。綺麗に片づけよう」
「は!」
控えていた男達はその声で、骸の運び出しから始めた。
地面が見えるようになるまで、運び出しを優先。地面が見えるようになったところで、土を掘り返し、鮮血の跡を消していく。その後足で踏み固めれば、偽装はできる。
幸いなのか何なのか不明だが、此度は袋小路の壁には一切血の痕は残っていなかった。
それはそれで助かると思った二野は、作業を見守る。
骸を運び出してからすぐに、そのまま袋に入れるわけにいかないので、大振りの包丁で切断。
まるで、魚の解体でも、しているかのように見える。ただ、扱うのが人肉というだけで。
骸も鮮度が命である。だから、証拠隠滅と、質のいい骸を手に入れることが重要なのだ。
ヴォーグに出会うまでは、なかなか腕のいい暗殺者がおらず、かなり苦戦を強いられていたことを、思い出しつつ。
