冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 それに気づいた男達だったが、一歩遅い。
 戸崎は額を、撃ち抜かれて倒れた。
「不意を突くのが、お得意なようで?」
「そりゃな」
 低い声で言いながら、不敵に嗤うヴォーグ。
「少し甘く見ていたようですねぇ。あっさり殺してしまうとは、思っていませんでしたよ」
 その言葉が合図なのか、男達がいっせいに抜刀する。
「仕方ねぇ。相手になってやるよ」
 溜息混じりに言うヴォーグの挑発に乗った男達が、殺気を纏って襲いかかる。
 右肩と右腕、左肩を深く斬りつけられても、一切動じなかった。
 ヴォーグは、引き金を三回引く。
 それぞれ額を、撃ち抜かれ即死。
 平然としたまま、ヴォーグは鮮血がだらだらと、零れ落ちる右腕を一瞥。
「なんなんだよ、こいつ!」
「傷を負ったって、思ってねぇんじゃねぇの⁉」
「こいつ、なんか変だ!」
 その様子を見ていた、男達が叫ぶ。
「殺すだけ、なんですがねぇ。なにを恐れているのか、さっぱりです。さっさとしなさい」
 動じずに男が、指示を下す。
「どっちもおかしい奴だ!」
「逃げるぞ! 付き合ってられない!」
 男達は戦意を捨て、わらわらと逃げ出す。
「……はあ」
 その様子を見ていたヴォーグは、盛大な溜息を吐く。
 次の瞬間、ヴォーグは逃げ出した男達に、弾丸を撃ち込む。
 一撃につき一人と決めて、確実に頭数を減らしていく。
 敵意の有無は関係なく、この場にいるという理由だけで、殺戮を開始。
 死人に口なしとは、よく言ったもの。黙らせるのには殺すのが一番だった。
 夜闇に紛れて、ヴォーグの中の〝怪物〟が目を覚ます。
 次々に男達を始末していき、骸を足で踏み潰す。
 交互に弾を込めながら、動きは止まらない。
 容易く命を奪い、誰一人として生かさぬように。傷はいくら増えても、構わない。
 〝痛み〟を代償として、差し出すことしかできないのだ。
 血を血で洗う、この戦い。
 指示を出していた男だけを残し、全員を骸へと変えた。
 その間、幾度となく攻撃もその身に受け、斬りつけられた部分から、とめどなく鮮血が溢れ出している。
「なんなんですか! あなたは⁉」
 数多くの骸を踏み潰して歩くヴォーグに、とてつもない恐怖を覚えた男が叫ぶ。
 ヴォーグの放つ暗い雰囲気に、呑まれているのが伝わってくる。
 そんな中、ヴォーグが口端を吊り上げて嗤う。
「さて、なんだろうなぁ?」
 右半身を鮮血で真っ赤に染めた状態で、不気味に微笑んでいるのは恐怖でしかない。
「なんでこれだけの人間を殺しておいて、不気味に笑っているのですか⁉ 快楽殺人者ですか⁉」
 半狂乱になった男が言う。
「あ? 殺している自分に酔う、クズじゃねぇぞ? そんな馬鹿がいたら、さっさと殺している」
 狂気に満ちた笑みに、強い怒りの色が浮かぶ。