冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 そんな休憩を挟んだヴォーグは、翌日の夜まで待つ。
 ライフルを背負い、リヴォルバーを両腰に身につけると、優月に一言告げてから洋館を出た。
 
 戸崎小助の居場所は分かっていたが、近くの高い建物に向かう。
 なんにせよ、誘い出さなければならない、と思ったからだ。
 その場に人の気配がないことを探ってから、ライフルを手に伏せる。
 弾を装填し、スコープを覗く。
 なんの気なしに歩いている対象者を見つけ、すれすれに弾丸を撃ち込む。
 それにビビった様子の男を見てから、ライフルを手にしたままそこから飛び降りる。
 華麗に着地し、左手に持ったライフルを背に装備する。
「戸崎小助!」
 ヴォーグが声を張ると、着物を着た男が振り返る。
「なんだよっ! 今なんか飛んできた気がして、混乱してんだけど⁉」
 戸崎が叫ぶ。
「そうか、場所を変えるぞ」
 ヴォーグはそんな戸崎の首根っこを左手でつかむと、ずるずると引き摺った。
 
 バタバタと暴れる戸崎だったが、首をつかまれてはなにもできなかった。
 だからと思って叫びまくっていたのだが、首に冷たいものが押し当てられる。
「このまま死にたくはなかろう? さっさと黙れ」
 戸崎は青い顔をして黙った。
 ――こいつ一体どんな武器持ってるんだ? 殺気を纏うとめちゃくちゃ怖い!
 戸崎はただただ、引き摺られるままに歩いた。
 
 ヴォーグは人の気配がない、袋小路まで歩いていくと、乱暴に左手を離す。
「さて」
「いきなり、こんなところに、連れてきて! なんなんだよ、お前!」
 戸崎はヴォーグの手が離れると、叫び出す。
「貴様を殺す者、だが?」
 ヴォーグが、リヴォルバーを(もてあそ)ぶ。
「ひっ! 黙って、殺されるわけねぇだろ!」
 戸崎は言いながら、「たまやー!」と叫んだ。
 ヴォーグは無言で、戸崎を睨みつけつつ、周囲に気配を感じ取った。
「これはこれは。なにかと思って、きてみれば。〝射手の神〟に目をつけられたのですねぇ」
 あらわれた男達は皆、腰に刀を帯びている。
「〝狩る者〟のお出ましか」
 至極嫌そうな顔をして、ヴォーグは背後の男達を睨む。
 〝狩る者〟とは、鎖国派の連中で構成されており、洋装や異国の民を忌み嫌い、何人もの異国人が彼らによって殺されている。ヴォーグの敵対している連中。と言ってもいいが、そんな連中が多すぎて、覚えていないヴォーグなのであった。
「さっさと終わらせようと思ったが、な」
 左手にリヴォルバーを構えたヴォーグが面倒そうに、男達を睨みつける。
「そうでしょう、そうでしょう。我らを前にして怖気づいているのですね!」
「怖気づく? 馬鹿か貴様は。んなわけねぇだろうが」
 怒りを滲ませたヴォーグに怯えたのは、戸崎だけだった。
「戸崎様、そんなに怯えなくとも。我らが退治してみせますので」
「そうか。ならば」
 怒りを滲ませたままのヴォーグは、戸崎に狙いを定めて引き金を引く。