冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 手早く身支度を整え、今まで暮らした狭い家に向かって一礼。
 無表情で陽の国の都から、言われた場所へと旅立った。

 ヴォーグに下された沙汰は、どちらにも与さぬというのであれば、陽の国最北端の肴へ追放を命じる、というものだった。
 今の将軍家の武力をもってしても、暗殺者一人消すのは難しいと判断したのかもしれない。影響が及ばぬ地を、勝手に決められたのだろう。
 ――ある意味、清々した。
 思いながら肴の地を訪れると、見放された地らしいというべきか、人々の顔には、色濃い絶望が感じられた。
 それをひしひしと感じながら、誰も近づかないボロボロの洋館を見つける。
 建物自体はしっかりしているが、人の気配が無くなって長いのだろうな、と思わずにはいられなかった。
 整備しようにも、人手がいるなと思っていたヴォーグは、店を細々と続けている主に声をかけると、驚きの言葉が返ってきた。
「あんたも誰かに見限られたのかい?」
「まあな、ここはどんな町なんだ? きたばかりで、なにも分からない」
 面食らいながらも、ヴォーグが首をかしげる。
「ここは誰かから見限られたり、見捨てられた者達が集まる町さ。まあ、最後の居場所って感じかな。傷つけられた者同士、なんとか生きてるよ」
「そうか。あの洋館、誰に言えば住めるように、手配してもらえるだろうか?」
「あんた、あそこに住むってのかい⁉」
 主が目を見開く。
「ああ。こんな身なりだしな。洋館の方がなにかと、都合がいいんだよ」
「ああ……。そういうことなら、人集めて整備しよう」
「助かる。礼は……」
「要らねぇよ! 住んでくれるだけで十分だ!」
 笑顔を見せた店の主に、ヴォーグは苦笑することしかできなかった。

 * * *

「話が逸れたな、悪い」
 ヴォーグは申しわけなさそうに言う。
「別にいいのよ。でも、いろいろ、分かった気がする」
「それはなにより。さて、そろそろ休め」
 うなずいた優月を見つめて、ヴォーグは部屋を出ていった。
 手早く身支度を整え、今まで暮らした狭い家に向かって一礼。
 無表情で陽の国の都から、言われた場所へと旅立った。

 ヴォーグに下された沙汰は、どちらにも与さぬというのであれば、陽の国最北端の肴へ追放を命じる、というものだった。
 今の将軍家の武力をもってしても、暗殺者一人消すのは難しいと判断したのかもしれない。影響が及ばぬ地を、勝手に決められたのだろう。
 ――ある意味、清々した。
 思いながら肴の地を訪れると、見放された地らしいというべきか、人々の顔には、色濃い絶望が感じられた。
 それをひしひしと感じながら、誰も近づかないボロボロの洋館を見つける。
 建物自体はしっかりしているが、人の気配が無くなって長いのだろうな、と思わずにはいられなかった。
 整備しようにも、人手がいるなと思っていたヴォーグは、店を細々と続けている主に声をかけると、驚きの言葉が返ってきた。
「あんたも誰かに見限られたのかい?」
「まあな、ここはどんな町なんだ? きたばかりで、なにも分からない」
 面食らいながらも、ヴォーグが首をかしげる。
「ここは誰かから見限られたり、見捨てられた者達が集まる町さ。まあ、最後の居場所って感じかな。傷つけられた者同士、なんとか生きてるよ」
「そうか。あの洋館、誰に言えば住めるように、手配してもらえるだろうか?」
「あんた、あそこに住むってのかい⁉」
 主が目を見開く。
「ああ。こんな身なりだしな。洋館の方がなにかと、都合がいいんだよ」
「ああ……。そういうことなら、人集めて整備しよう」
「助かる。礼は……」
「要らねぇよ! 住んでくれるだけで十分だ!」
 笑顔を見せた店の主に、ヴォーグは苦笑することしかできなかった。

 * * *

「話が逸れたな、悪い」
 ヴォーグは申しわけなさそうに言う。
「別にいいのよ。でも、いろいろ、分かった気がする」
「それはなにより。さて、そろそろ休め」
 うなずいた優月を見つめて、ヴォーグは部屋を出ていった。