冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

「旦那! できたよ」
 ヴォーグが優月を見るなり、薄く笑う。
「やはり似合うじゃないか」
「次はあなたの番だよ」
 嬉しそうに笑った、優月が言う。
 そんな優月を抱き上げて、店の隅にある椅子に座らせる。
「ここで待っていろ」
 その言葉に優月はうなずいた。

「毎回、悪いな。一揃い新しい服を頼む」
 ヴォーグは言いながら、背中に背負っているライフルと、二挺のリヴォルバーをホルスターごと外す。ぼろぼろのジャケットとワイシャツを脱ぐ。鮮血に塗れた手袋や、スラックスも脱ぐ。あらわになったのは晒し木綿の巻かれた引き締まった身体。
「それはいいんだけど。凄い身体だねぇ」
「なにが凄いって?」
 ヴォーグは首をかしげる。
「いかにも、戦う者って感じだね」
「そうか。新しいのは、ここにあるやつでいいのか?」
 ヴォーグは綺麗に畳まれた、真っ黒の衣服を見つけて尋ねる。
「そうだよ」
 手早くワイシャツ、スラックス、新しいベルトを身につける。ジャケットを着てボタンを留め、鉄黒のロングコートを着る。最後に黒の指ぬき手袋を嵌め、背中にライフルを背負い、外したリヴォルバー二挺を腰に装備する。
「これでいいな。あと、ほら」
 ヴォーグは懐から金を取り出し、支払いを済ませた。
「払わなくても、いいんだよ?」
 野々宮は、苦笑して言う。
「そういうわけには、いかねぇよ。じゃあな」
 野々宮に片手を上げたヴォーグは、その場を出ていく。
 
「待たせたな」
 店の中で女達と話をしている優月に声をかける。
「やっぱり似合うね」
「それはお前もだろう」
 微笑む優月を抱き上げて、洋服店を出た。
 
 帰宅の途につきながらヴォーグは思う。
 ――とにかく、生きていてくれてよかった。決して口には出せないが。
 そんなヴォーグの横顔には、苦笑が浮かんでいた。