冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

「よくもっ!」
 そこにいた男達が殺気立つ中、女に異変が起こる。
「は、は、は、は……っ!」
 骸を目にしたまま、浅い息を繰り返している。こういう時はなにも言えなくなってしまうのが、女は悔しくてたまらない。
「お? 始まったぞ? こいつ、骸を見るたびにこうなるんだぜ? 無力にもほどがあるよなぁ?」
 嘲笑う声を聞き、男の頭の中でなにかがぷつんと切れた音を聞く。
「おい、おい、おい!」
 男は女に駆け寄り、肩を揺さぶる。
「は……?」
 女はぽかんとした顔をする。
「今から言うことをよく聞け。耳と目を塞いでくれ。俺が軽く肩を叩いたら、耳から手を離せ」
 女はきょとんとしながらも、素直にそれに従った。
 目と耳を塞いだ女は、がくがくと震えていた。恐怖がその身体に沁みついて離れないのだろう。
 そんな女を哀れに思いながら、男はリヴォルバーを構える。
「貴様らの命はここで潰える」
「やれるもんならやってみろ!」
 四人の男達がいっせいに襲い掛かる。
 時折蹴りも混ぜながら男達を翻弄し、次々に命を奪う。
 最後の一人が叫ぶ。
「何なんだ⁉ お前!」
「吸血鬼、だよ」
 男は冷たい笑みを浮かべた。
「ひっ!」
 恐怖に歪んだ顔を睨みつけながら、男はとどめを刺した。
 
 男は一度空を見上げる。日の光が射してこないことを確認し、ふうっと息を吐く。
 リヴォルバーを仕舞って、ロングコートを脱ぐ。
 ロングコートを肩から足にかけてやり、そのまま抱き上げて、彼女の肩を叩く。
「終わった、の?」
 耳から手を離した女が尋ねる。
「ああ。移動するから、悪いがそのままじっとしていてくれ」
「ん? ……うん」
 自分の置かれている状況が理解できないため、分からないながらも女がうなずく。
「名は? 俺はヴォーグ、という」
 ヴォーグは尋ねる。
()(づき)。え、え? ヴォーグさん?」
「いい名だな、さん付けは勘弁してくれ」
 ヴォーグは苦笑しながら言う。
「じゃあ、ヴォーグ」
「おう」
 ヴォーグは鼻で嗤った。
 
 骸からだいぶ離れた町中までいくと、ヴォーグが声をかける。
「あの場所からは、だいぶ離れた。目を開けてくれ」
「えっ⁉」
 優月はそうっと目を開けて、仰天した。
 全身を黒い布のようなもので(くる)まれていて、初対面の男にお姫様抱っこされていたからだ。
「驚いてもいいが、暴れるなよ? 少し足を見させてもらった。あれだけの傷と出血だからな。痛みを我慢してでも、歩かせるわけにはいかねぇ。だから、じっとしてろ」
「……うん。今は、どこへ?」
「なにかと世話になっている、腕のいい医者のところへな。……何故、骸を見ただけでああなったんだ?」