冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 ふたつの弾丸は、左肩と腕に命中。
 腹を蹴り飛ばし、胸にも弾丸を撃ち込む。
 男は壁に背中をぶつけ、ずるずると座り込んだ。
「ゴホッ!」
 血を吐きながら、唇を噛む男。
「ひとつ聞く。名は?」
「……酒寄」
 酒寄は低い声で言い、立ち上がる。
「酒寄、か。貴様を殺す者の名は、ヴォーグだ」
 口端を吊り上げて嗤い、ヴォーグが言い放つ。
「刺し違えてでもっ!」
 最後の気迫を込めた一撃を喰らっても、ヴォーグの唇に浮かぶ笑みは消えない。
「愚かなことを。散り際の言葉くらい、聞いてやるよ」
 ――全うできず申し訳ありません。先に逝っています。
 小さな声の最期の言葉を確かに聞いたヴォーグは、心臓と頭を撃ち抜いた。
 
 無言でリヴォルバーを仕舞うと、優月の許へ。
 車椅子を押しながら最奥に向かう。
「何故、酒寄がいないのじゃ! 何故、賊がここにおる⁉」
 ここの(あるじ)である金座が、半狂乱で叫ぶ。
「俺が殺した。ついでにそいつの、散り際の言葉を伝えてやるよ」
「なにっ⁉」
 ヴォーグは笑みを消して、忠実にその言葉を告げた。
「酒寄……!」
「なにを泣いている? 貴様も同じ地獄に、いくのだがな?」
 先ほどの表情とはうって変わり、口端を吊り上げて、ヴォーグが言う。
「兵ども、わしを守れ!」
 その一声で、二十人ほどの兵らが雪崩(なだ)れ込んできた。
「手始めに」
 ヴォーグは優月の近くにいた男達に、迷いのない弾丸を撃ち込む。一人につき一発と決め、優月の安全を確保。
「なんなんだよこいつ!」
「飛び道具しか、持ってねぇなら!」
「まったく。そんな考えしかできねぇから、強くなれないんだよ。貴様らは」
 襲いかかってくる男達相手に、愚痴を零したヴォーグは、左手に構えたリヴォルバーの引き金を三回引く。
 頭を撃ち抜かれた三人は、その場で絶命。
 骸を革靴で踏みながら、蹴りを繰り出す。
 巻き込まれた男三人が体勢を崩し、その隙をついて心臓に弾丸を撃ち込んだ。
 三回の重い音が響き、一瞬で男達を沈めていく。
 その間にもあちこちから鮮血が滴るのも構わず、ただただ命を奪っていく。
 周りで見ている男達からすれば、恐怖しか感じない。
 こんなボロボロなのに、人を殺める力がどこに存在するのだろうと、疑問に思う。
 そんな考えに浸る時間すら与えず、ヴォーグは命を狩る。
 一方的な殺戮(さつりく)を披露してみせたヴォーグに、金座は青い顔をする。
「そなたはいったい何故、その女を助けようとするのだ!」
 全身真っ赤に染まったヴォーグに対し、叫ぶことしかできない。
「自分のことしか頭のない奴が、よくもまあ、そんなことが言えるよな」
 低い声で、ヴォーグが吐き捨てる。
「そいつは人以下なのだぞ⁉」