冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 その隙をつこうとでもいうのか、男二人が襲いかかってくる。
「おらああああっ!」
「遅い」
 ヴォーグは瞬時に、狙いを定めて引き金を引く。
 二人は心臓を撃ち抜かれて、その場で倒れる。
「なんとしても我が主を守るのだ! かかれっ!」
 誰かの叫び声を聞き、ヴォーグは嘲笑う。
「貴様ら如きが人を守るなど、不可能に決まっているだろう」
 ヴォーグは立て続けに五回引き金を引く。
 その狙いは正確で、一発も外す気配はない。
 ヴォーグの背後には骸がいくつも折り重なっている。
「こいつ!」
「ふん」
 鼻で嗤ったヴォーグは、その男の頭を撃ち抜く。
 返り血に目を細めつつ、骸を革靴で踏む。
 数多くの死に怯むことなく、狂気に染まることもない。
 冷静に敵を(ほふ)るのみ。
 こいつらを一人でも、生かしてはならない。悪の芽を摘んでおくに越したことはない。
 そんなことを考えながら、ヴォーグは引き金を引き続けた。
 
 それから大分経って、人の気配が無くなったかと思われたその時。
「よくも、全員を殺したな!」
 声だけで指示を出していた男が、姿を見せる。
「仲間の意識なんか、ないだろうに」
 ヴォーグは低い声で、吐き捨てる。
「バレた?」
 気安く話しかけてくる男に、苛立ちをあらわにするヴォーグ。
「それくらい分かる。所詮は雑魚。駒くらいにしか、考えていなかったんだろ?」
「なに? 頭も切れる暗殺者とか、めっちゃ怖いけど」
 笑いながら言う男に、顔をしかめた。
「面白がっているようにしか、見えないがな」
「しかも後で通れるようにまで計算してるとか、ほんと何なのあんた?」
「貴様に明かすようなことは、なにもない」
 ヴォーグは吐き捨てて、銃口を向けて狙いを定める。
「つれないな。まあ、遠慮なく殺せるからいいか」
 満面の笑みで言った男が、剣を手に突っ込んでくる。
 剣を右腕で封じ、左手に構えたリヴォルバーの引き金を三回引く。
 腹に弾丸を喰らった男は、剣を手離して、距離を取る。
「痛いじゃんか」
 腹からの鮮血が止まらない中で、男が不満げに言う。その直後、血を吐く。
 ヴォーグは右腕に新たな傷を負うも、気にするような素振りは一切ない。
「そりゃな。俺は殺すつもりだし?」
 くつくつとヴォーグが嗤う。
「次の一撃で決めるっ!」
「やってみろ」
 ヴォーグはただ挑発する。
 男は勢いのある一撃を繰り出してきたが、ヴォーグは左腕でそれを受け止める。
「なっ!」
 男は驚いた顔のまま額に弾丸を撃ち込まれ、鮮血をだらだらと流したまま、倒れる。
 確認する必要もなし。どう見ても即死である。
 左腕にのめり込んでいる剣を抜き捨て、廊下に敵の姿がないことに気づく。
 あるのは夥しいほどの骸の山のみ。
 優月の許へと戻ったヴォーグは、あえて作った道を通って、廊下を抜ける。