冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 両腕を刺し貫いている短剣を強引に引き抜き、優月を見下ろす。
 両手を縄できつく固定されていたため、その辺に転がっていたナイフで縄を切る。
 抵抗したのだろう。両手首には内出血の痕が残っている。
 優月が目覚める様子はない。
 抱きかかえようかとも思ったが、このまま出るまで座らせておいた方がいいか、と考え直した。
 手を組ませて、そのまま車椅子を押す。
 情報をくれた女の様子を見に行ったが、看守に殺されていた。話しているときには気づかなかったが、右手がなかった。
 看守は文字通り、主の手先なのだろう。
 優月が目を覚ました時に骸を見ることがないよう、ロングコートで上半身を包む。目覚めたときに驚くだろうが、仕方ない。骸を見せるよりはマシだ。目覚めたら、耳を押さえてもらえればよし。
 ヴォーグは無言で、看守二人の頭を撃ち抜く。
「悪い。あの時、居場所を教えてくれて感謝している。ここの連中は全員殺していく。それがせめてもの手向けだ」
 ヴォーグは低い声で言うと、女の骸に向かって一礼し、目的の主がいる場所へと優月とともに向かった。
 その道中、優月が声を出す。
「ん……」
「目が覚めたか?」
「うん、って、なんで真っ暗なの?」
 廊下の端に移動したヴォーグは、優月の問いに答える。
「まあ、骸を見ないための幕だと思ってくれ。これだけ聞いておきたい」
「分かった。なに?」
「気を失うほど何をされた?」
 ヴォーグの声には、真剣さと怒りが込められていた。
「昔言われたのと同じ言葉を告げられて、痛くて苦しいのに、それを嘲笑ったり……。とにかく、あたしが最も嫌がることを、してきた」
 優月は震える声で、告げた。
「分かった。俺が肩を叩くまで、耳を塞いでいてくれ。しばらくじっとして」
「……うん」
 うなずいた優月は、もぞもぞと動いた。
 動かなくなった優月を見つめたヴォーグは、優月が見える位置に移動し、雑兵どもに声を張る。
「邪魔をする気か?」
「黙って通らせるわけにいかねぇ!」
 武装した彼らを、ヴォーグは冷ややかに睨む。
「貴様らなんぞ、枷にもならん」
 言い放ちながら、ヴォーグはまずは手前にいた男二人の心臓を打ち抜く。
 倒れそうになる骸を蹴り飛ばし、彼らの陣形を崩す。
 それで周囲は大混乱に陥る。
 射程に収まる男達から、沈めていく。
 近くにきた男が、刀を振り下ろす。
 右脇腹で刃を受け止め、頭を撃ち抜く。
 涼しい顔で、右脇腹に引っかかっている刀を外して捨てる。
 痛みを感じていない素振りに、男達は青い顔をする。
「なんなんだよ、こいつ……!」
「俺の正体なんか、どうでもいいだろうが」
 ヴォーグは吐き捨てながら、右手に構えたリヴォルバーに左手で弾込めをする。