「それをゆっくりと時間をかけて、取り戻さないといけない。なんとしてでも」
「え……?」
真剣な表情の坂埜に、優月はきょとんとする。
「断言するけど、君の心はとても強い。とくに生きようとする意志はね。それを尊重してあげなくちゃね? まずはそこからだよ。君の抱える地獄はようやく、過去のものとなったのだから」
優しい笑みに、さらに戸惑ってしまう。
「ささやかな願いですら、諦めて生きてきたんです。本当に死んでも、よかったのです。あたしはそれを望んでいた。けれど、あの人に助けられてから、戸惑ってばかりで。あたしのこれまでの〝普通〟って違っていたの? って思うようになって」
「その経験は、私からすれば〝異常〟なんだよ」
真面目な顔をして、坂埜が言う。
「それのどこが〝異常〟なのですか?」
優月は首をかしげる。
「もしかして君は、その絶望が当たり前、だと思っているのかい? 奪われて傷つけられるのが、当然だと? 君は絶望に染まりきる前、本当はなにを望んでた? ……よく思い出してみて?」
「……すぐには、答えられないです。もっと時をかけないと、分かりません」
すみません、と言おうとした優月だったが、坂埜に止められる。
「私も言い方が悪かったね、ごめん。でも、じっくり考えてみて。くどいようだけど、君は強い人だから。それだけは忘れないで」
その間に手当てがすみ、坂埜がヴォーグを呼びにいく。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
とびきりの優しい笑顔に戸惑いを浮かべつつ、優月は会釈をした。
「いくか」
ヴォーグに抱かれたまま、うなずいた優月は坂埜に言われたことを思い出した。
ヴォーグはなにかを必死に考えていそうな、優月を見ながら、無言で歩く。
今回はやけに長かったから、大事な話でもしたのかもしれない。
言いたくなるまで放っておくのも悪くはないだろう、なんて思っていた。
洋館に着くと考え込んでいる優月の肩を叩いて、現実に引き戻す。
慌てた様子だったが気にしないようにして、優月の部屋に入りベッドに彼女を下ろす。
「少し待ってろ」
首をかしげる優月を置いて、ヴォーグが部屋を出る。
自室に戻ったヴォーグはリヴォルバー二挺とライフルをテーブルに置く。
それは優月を、怯えさせないためでもあるのだ。
なにかあれば取りに、戻ればいい。
ふうっと息を吐き出したヴォーグは意を決して、優月の部屋のドアを叩く。
「なーに?」
きょとんとした優月を見つつ、ヴォーグは口を開く。
「暗いとだめだな」
ヴォーグは枕元にあるランプをつけた。
「眩しい……」
かなりの明るさに、目を細める優月。
「和蝋燭に比べたら大分明るいしなぁ」
ヴォーグは思わず苦笑し、サイドテーブルの隣に腰を下ろす。
「え……?」
真剣な表情の坂埜に、優月はきょとんとする。
「断言するけど、君の心はとても強い。とくに生きようとする意志はね。それを尊重してあげなくちゃね? まずはそこからだよ。君の抱える地獄はようやく、過去のものとなったのだから」
優しい笑みに、さらに戸惑ってしまう。
「ささやかな願いですら、諦めて生きてきたんです。本当に死んでも、よかったのです。あたしはそれを望んでいた。けれど、あの人に助けられてから、戸惑ってばかりで。あたしのこれまでの〝普通〟って違っていたの? って思うようになって」
「その経験は、私からすれば〝異常〟なんだよ」
真面目な顔をして、坂埜が言う。
「それのどこが〝異常〟なのですか?」
優月は首をかしげる。
「もしかして君は、その絶望が当たり前、だと思っているのかい? 奪われて傷つけられるのが、当然だと? 君は絶望に染まりきる前、本当はなにを望んでた? ……よく思い出してみて?」
「……すぐには、答えられないです。もっと時をかけないと、分かりません」
すみません、と言おうとした優月だったが、坂埜に止められる。
「私も言い方が悪かったね、ごめん。でも、じっくり考えてみて。くどいようだけど、君は強い人だから。それだけは忘れないで」
その間に手当てがすみ、坂埜がヴォーグを呼びにいく。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
とびきりの優しい笑顔に戸惑いを浮かべつつ、優月は会釈をした。
「いくか」
ヴォーグに抱かれたまま、うなずいた優月は坂埜に言われたことを思い出した。
ヴォーグはなにかを必死に考えていそうな、優月を見ながら、無言で歩く。
今回はやけに長かったから、大事な話でもしたのかもしれない。
言いたくなるまで放っておくのも悪くはないだろう、なんて思っていた。
洋館に着くと考え込んでいる優月の肩を叩いて、現実に引き戻す。
慌てた様子だったが気にしないようにして、優月の部屋に入りベッドに彼女を下ろす。
「少し待ってろ」
首をかしげる優月を置いて、ヴォーグが部屋を出る。
自室に戻ったヴォーグはリヴォルバー二挺とライフルをテーブルに置く。
それは優月を、怯えさせないためでもあるのだ。
なにかあれば取りに、戻ればいい。
ふうっと息を吐き出したヴォーグは意を決して、優月の部屋のドアを叩く。
「なーに?」
きょとんとした優月を見つつ、ヴォーグは口を開く。
「暗いとだめだな」
ヴォーグは枕元にあるランプをつけた。
「眩しい……」
かなりの明るさに、目を細める優月。
「和蝋燭に比べたら大分明るいしなぁ」
ヴォーグは思わず苦笑し、サイドテーブルの隣に腰を下ろす。
