冷酷無情な射手の吸血鬼に救われた、人として生きることを諦めた娘

 翌日の夜、ヴォーグは武装し、最後に黒の指ぬきグローブを嵌める。
 ふうっと息を吐き出し、優月がいる部屋へ。
「……出かけてくる」
「いってらっしゃい。死なないでね?」
「ああ……」
 歯切れ悪く返事をしたヴォーグは、スタスタと部屋を出た。
 
 ――なんか引っかかるな。
 対象者の許へ駆け出しながら、先ほどの優月に言われた言葉を思い出す。
 ――誰もあんなことを言う人間など、いなかったからかもしれない。まあ、今は依頼に集中だな。
 考えることは後で、いくらでもできる。
 
 駆けていると、対象者の姿が見えた。
 酔っ払っている。
 指ぬきグローブを外し、近くに井戸があったので、水を汲む。
 その間になにごとかを叫んでいたが、ヴォーグは無視をする。
 騒いでいる男の首根っこをむんずとつかんで、井戸の近くまで引き()っていく。
 暴れる男を難なく押さえ、頭だけを木のバケツにつける。
 しばらくして、酔いが醒めたであろうころに、押さえていた手を離す。
「なにすんだ、てめぇ!」
 男が初めて、意味のある言葉を発した。
「いつまでも酔っている貴様に、腹が立ってな」
 黒のハンカチを懐から取り出して、両手を拭いているヴォーグが低い声で言う。
「なんだとこら!」
 男の怒りを買うが、ヴォーグは涼しい顔をして、ハンカチを仕舞う。
「坂本実だな?」
 ヴォーグは両手に、指ぬきグローブを嵌めながら、問う。
「なんで名前、知ってんだよ?」
「そんなの、どうでもいいだろうが」
 怒りを滲ませる、ヴォーグ。
「なんの用があって、こんな真似してんだよ?」
「酔い覚まししただけなのに、ずいぶんな言われようだが。まあいい。貴様の命をもらいにきたんだよ」
 ヴォーグは、口端を吊り上げて嗤う。
「なんで⁉」
 心外なという、顔をする坂本。
「誰かから巻き上げた金で、酒を呑んでなにが楽しいのかさっぱり分からんな。貴様に恨みを持つ者がいる。俺はただの代行者だ」
 慌てて刀を構えた坂本を、冷ややかに睨みつける。
「こんなところで、死んでたまるか!」
 怒りに任せた攻撃を、その身で受けるヴォーグ。
「こんなくらいで、引くんじゃねぇよ」
 驚いた坂本に、ヴォーグは言い放つ。
 胸から斜めに斬り裂かれているのにもかかわらず、その声は静かである。
「なんなんだ、お前ええええ⁉」
 恐怖を覚えた、坂本が叫ぶ。
「貴様なんぞに、言うわけがないだろうが」
 ヴォーグは冷ややかに吐き捨てつつ、得物を構えた。
「なにをしようってんだ……?」
 リヴォルバーを見たのが、初めての坂本が首をかしげる。
「こうするんだよ」
 ヴォーグは言うやいなや、右手に構えたリヴォルバーの引き金を引いた。