「あのクズども。面倒な呪いをかけやがって」
ヴォーグが、美しい顔を歪める。
「そのクズどもはどうしたんだい?」
「俺が全員殺した。あんな連中に、生きる価値などない」
野々宮の言葉に、ヴォーグが答える。
「まあ、そいつらに相当腹が立った、ってのは分かるよ。旦那が助けていなければ、お嬢ちゃんにも会えなかったわけだね」
野々宮は苦笑する。
「だろう? あんな奴らに、くれてやる命なんか、ひとつもねぇよ」
ヴォーグは低い声で、吐き捨てた。
「確かにね。お嬢ちゃん」
野々宮が優月に、視線を向ける。
「は、い」
優月はまだ怯えているようで、震えている。
「座ったままでいいから、今着てる着物の状態を見せておくれ。あと、採寸もしてしまおう」
優月は震えながらうなずき、ヴォーグに視線を向ける。
優月を小さな椅子に座らせ、ヴォーグは無言でロングコートをめくると、コートを持ったまま背を向けた。
あらわになったのはくすんだ色をした、継ぎ接ぎだらけの着物。元の色はなんだったのか、想像すらできない。かなり使い古されていて、破けそうになっているところも散見される。
「っ⁉ ……これは、想像以上だよ」
「想像以上……?」
優月は首をかしげる。
「お嬢ちゃん、心の傷を癒すには時がかかる。でも、いつまでもこんなものを着ていちゃあ、だめ。心まで暗くなってしまうから。はい、採寸もできたし」
野々宮はそこまで言うと、店の女達に聞こえるように声を張った。
「全部聞いたね? ほら、布をあててなにが合うか探すよ! さっさとおいで!」
「ただいま!」
女達がいくつもの反物を抱えて、奥の部屋になだれ込んでくる。
その光景を目にした優月は、目をぱちくりさせた。
「色んなの、探してきたねぇ」
女達が一列になって、反物をひとつずつ野々宮に見せていく。
野々宮による、色の選定が始まった。
だめなものはだめと、瞬時に切り捨てていく。
そうして女達がコロコロと入れ替わること、数分。
「これ、いいんじゃないかい?」
野々宮が反物を受け取って、優月の前へ。
差し出されたのは、青系の勿忘草色の反物。
「いい色……。だけど」
優月が小さな声で言い、唇を噛む。
「どうした?」
顔を背けている、ヴォーグが尋ねる。
「あたしは他人に、なにもかもを奪われた。大事なものが増えることが、怖いの。そういうものは決まって、他人に奪われるか、壊されて終わる。だから……!」
言っているうちに、涙を流す優月。
野々宮はそんな彼女の背を、優しく撫でる。
「大事なものなど増やさなければいい、と言いたいのか。なあ、聞かせてくれよ」
ヴォーグは少し明るい声で、尋ねる。
「なに、を……?」
優月は泣きながら、目をぱちくりさせる。
「お前は今まで生きるために、人としての生き方を諦めた。過去はどうしようもねぇが、未来なら変えられる。なんでもいい、お前が今したいこと、望みを」
ヴォーグの声は、いつになく優しい。
ヴォーグが、美しい顔を歪める。
「そのクズどもはどうしたんだい?」
「俺が全員殺した。あんな連中に、生きる価値などない」
野々宮の言葉に、ヴォーグが答える。
「まあ、そいつらに相当腹が立った、ってのは分かるよ。旦那が助けていなければ、お嬢ちゃんにも会えなかったわけだね」
野々宮は苦笑する。
「だろう? あんな奴らに、くれてやる命なんか、ひとつもねぇよ」
ヴォーグは低い声で、吐き捨てた。
「確かにね。お嬢ちゃん」
野々宮が優月に、視線を向ける。
「は、い」
優月はまだ怯えているようで、震えている。
「座ったままでいいから、今着てる着物の状態を見せておくれ。あと、採寸もしてしまおう」
優月は震えながらうなずき、ヴォーグに視線を向ける。
優月を小さな椅子に座らせ、ヴォーグは無言でロングコートをめくると、コートを持ったまま背を向けた。
あらわになったのはくすんだ色をした、継ぎ接ぎだらけの着物。元の色はなんだったのか、想像すらできない。かなり使い古されていて、破けそうになっているところも散見される。
「っ⁉ ……これは、想像以上だよ」
「想像以上……?」
優月は首をかしげる。
「お嬢ちゃん、心の傷を癒すには時がかかる。でも、いつまでもこんなものを着ていちゃあ、だめ。心まで暗くなってしまうから。はい、採寸もできたし」
野々宮はそこまで言うと、店の女達に聞こえるように声を張った。
「全部聞いたね? ほら、布をあててなにが合うか探すよ! さっさとおいで!」
「ただいま!」
女達がいくつもの反物を抱えて、奥の部屋になだれ込んでくる。
その光景を目にした優月は、目をぱちくりさせた。
「色んなの、探してきたねぇ」
女達が一列になって、反物をひとつずつ野々宮に見せていく。
野々宮による、色の選定が始まった。
だめなものはだめと、瞬時に切り捨てていく。
そうして女達がコロコロと入れ替わること、数分。
「これ、いいんじゃないかい?」
野々宮が反物を受け取って、優月の前へ。
差し出されたのは、青系の勿忘草色の反物。
「いい色……。だけど」
優月が小さな声で言い、唇を噛む。
「どうした?」
顔を背けている、ヴォーグが尋ねる。
「あたしは他人に、なにもかもを奪われた。大事なものが増えることが、怖いの。そういうものは決まって、他人に奪われるか、壊されて終わる。だから……!」
言っているうちに、涙を流す優月。
野々宮はそんな彼女の背を、優しく撫でる。
「大事なものなど増やさなければいい、と言いたいのか。なあ、聞かせてくれよ」
ヴォーグは少し明るい声で、尋ねる。
「なに、を……?」
優月は泣きながら、目をぱちくりさせる。
「お前は今まで生きるために、人としての生き方を諦めた。過去はどうしようもねぇが、未来なら変えられる。なんでもいい、お前が今したいこと、望みを」
ヴォーグの声は、いつになく優しい。
