小屋と御膳房以外にユェシャンがよく訪れるのは洗い場だ。
後宮の西側にある洗濯房は、房とは名ばかりのほぼ屋外。井戸があり、石畳みの上には大きな木桶が並んでいる。
屋根がある場所はほんの一部で、雪がちらつく日はその場所が取り合いになる。
今朝は寒風が身に染みるものの空は快晴で、洗濯日和になりそうだ。
後宮に来た当初は、見慣れぬ顔のユェシャンの素性を疑う者もいた。
『あんた、どこの所属だい?』
しかし彼女たちは、ユェシャンがこう答えるとサッと顔色を変えて途端に黙り込む。
『十三妃様の宮です』
十三妃――その言葉が後宮において免罪符のようになっていることに、ユェシャンは小気味良さを感じている。
呪われた毒婦には誰も触れたくないのだ。
その顔を見ただけで呪われるというのが後宮での通説らしい。
中には、十三妃と聞いただけでまるで呪われでもしたかのようにぶるぶる震えだす宮女までいる。
しかし呪われなどしないことは、彼女たちが身をもって証明している。
なにせ、目の前に本物の十三妃がいるのだから。
「よいしょっと」
木桶に水を汲み、サイカチの莢を浸けてこすれば、ぶくぶくと泡が立ってくる。
この泡が、油汚れを落とす洗剤となる。
あのあばら家の壁に絡みつく木樹木のひとつがサイカチだと気づいた時、ユェシャンは歴代の十三妃に感謝した。
きっと誰かが植えたにちがいない。
「本当に十三妃様なんているの? 輿入れの儀もなかったし、あの洗濯物も粗末な衣だけど」
「第一妃様がお茶に誘っても返事もよこさないらしいわよ。どれだけ傲慢なんだか」
ユェシャンは、洗濯に精を出す振りをしながら背後のヒソヒソ声に耳をそばだてた。
輿入れの儀とはなんだろうか。
ほかの妃たちは、後宮へ入る際に歓迎を受ける儀式でもあったのだろうか。
ユェシャンは最後だったため、妃たちがどのように輿入れしてきたのか知らない。
(それより、わたしの荷物はどうなっちゃったのかしら)
輿入れの際に持参した献上用の薬草類は、皇帝のもとへ届いたのだろうか。
ユェシャンの私物も、まずは確認をしてからと対応した女官に言われて没収されたままだ。
着の身着のまま、あのあばら家に案内されたっきり誰も訪れない。
当然、第一妃・桃凛の使いの者が伝令を持ってきた記憶もない。
なぜお茶の誘いを無視していると噂されているのかは知らないが、嘘を吹聴するのは勘弁してほしい。
宮女たちは、ユェシャンが洗い場に姿を現すたびに十三妃の噂をしながらサイカチの泡を興味津々な様子でチラチラ見る。
しかし誰も尋ねてはこない。
十三妃が持参した怪しいなにかだとでも思っているのだろう。
洗い終えた洗濯物を持って戻る途中、ほかの宮女たちの立ち話が聞こえた。
「リェンメイ様の狆が処刑されるらしいわよ」
「まあ……犬のせいにするの?」
「犬をかばって降格にはなりたくないんでしょ」
「あの狆、普段はおとなしい女の子なのにどうしちゃったのかしらね……」
ユェシャンは視線を地面に落とした。
昨日のあの子の潤んだ大きな黒目が脳裏をよぎる。
(殺されてしまうの……?)
飼い犬のしつけがなってなかったのなら、その咎は飼い主が受けるべきだ。
一度後宮内を駆け回ったぐらい大目に見てもいいのではないか。
しかし後宮は、さまざまな陰謀が渦巻いている。
妃の順番は、そのまま皇帝から寵愛されている順位を示していて変動もある。
隙あらば上位の妃を引きずり降ろそうと、日々水面下で腹の探り合いや陰湿ないやがらせが横行しているらしい。
リェンメイは第四妃。これを口実に降格させてやろうと狙っている輩がたくさんいるのだろう。
万年最下位の十三妃である蟲氏の妃は、そういう意味で気楽ではある。
瑞華国の皇帝は、国内の十三の氏族からひとりずつ妃を召し上げて後宮に住まわせるのが慣わしだ。
元は十二氏族だった制度に十三番目として蠱氏が加わったのは、四代前の御代からだという。
なんでも当時の皇帝が命を狙われ、それを助けたのが山奥で暮らす蠱氏一族だった。
皇帝は族長の娘をいたく気に入り、後宮へと連れ帰った。薬草やまじないの知識が豊富な彼女は、皇后の座にまで上り詰めたという。
それ以降、十三番目の氏族として蠱が追加された。
正直ありがた迷惑だ――そう思っているのはユェシャンだけではない。
この扱いを見るにつけ、皇帝をはじめ後宮の誰もが十三妃の存在を疎んじ、いないも同然に扱っている。
ただし呪われるのが怖いのか、ぼろっちい宮をあてがい食事も要求すれば出してもらえる。
だからユェシャンは、宮女の振りをして自ら食事を受け取りに行き、洗濯もしている。
族長の娘といっても蠱氏は娘を蝶よ花よとは育てない。
山奥で遭難しようとも、ひとりで逞しく生きていけるだけの知識と技術を叩き込まれるのだ。
小屋の裏手で洗濯物を干したユェシャンは、目の前に広がる薬草畑の手入れに取りかかった。
歴代の十三妃たちがここでどう生活していたのか、その一端がわかる。
ここで暮らしはじめた当初は、ただ雑草が生い茂っているだけだと思っていたのだが、よく見れば宝の山のような畑だったのだ。
『これは止血薬になるわね。こっちは……すごい、こんなに珍しい物が!?』
ユェシャンは夢中になって畑をきれいに整備していった。
おまけに、食用の根菜類まで植わっている。
主のいない間は、花を咲かせこぼれ種でまた実る自然の周期を繰り返していたのだろう。
(これで万が一、食事がもらえない日でも飢えをしのげる!)
歴代の十三妃の痕跡を紐解き、宮女の振りをして後宮内を闊歩する。
現在、皇帝にはまだ正妃がいない。
第一妃のタオリンがあたかも皇后のように振る舞い、彼女の取り巻きになっている妃たちと、それに反発する一派も存在することは確認できた。
皇帝の寵愛を巡って妃たちが壮絶な争奪戦を繰り広げるのは、後宮のあり方としては正しいのだろう。
しかしユェシャンは、顔すら見たことのない皇帝シュンウェイにまるっきり興味がないため、妃同士の争いに巻き込まれるのはごめんだと思っている。
ユェシャンは二年間、ひとりで慎ましやかに逞しく生きてきた。
その気になればいつだって後宮を抜け出せる自信がある。
実行しなかったのは、この暮らしもまんざらではないと思っているからだ。
荷葉飯を分け合って食べた狆がどうなってしまうのか気にはなるが、こんな立場では助けようがない。
(せめてここへ逃げてくれば、匿ってあげられるのに……)
もどかしい思いを抱えながらその日を過ごし、夕餉を受け取りに行こうと回廊を歩いていたユェシャンの耳に、揉めているような声が聞こえてきた。
中庭のほうからだ。
「この子ではありません。どうして信じていただけないのですか」
「そうは言っても、狆を飼っているのはあなただけなのですよ?」
声の主は、第四妃リェンメイと第一妃タオリンだった。
リェンメイは狆を胸に抱き、いまにも泣き出しそうな顔をしている。
今朝聞いた噂は、半分本当だったのだろう。
狆が処分されそうになっているのは事実だが、リェンメイは自己保身のために可愛がっている狆を犠牲にするつもりはないらしい。
「昨日のあの時間、この子はたしかにわたくしと一緒におりました」
「それをどうやって証明できて?」
「そんな意地悪なことをおっしゃらないでください」
アリバイを示せと迫るタオリンに、リェンメイがプイッと背を向ける。
その拍子に、ユェシャンに狆の顔がよく見える角度になった。
耳と首に桃色の飾りをつけた、行儀のよさそうな狆だ。
「あら……?」
ユェシャンは小さく呟いて首を傾げる。
怯えているせいだろうか、昨日の狆とはどうも顔つきがちがう。
それに体も小さい。
(もしかすると……)
ここでユェシャンの思考を邪魔すかのように、遠巻きに見ていた宮女たちの輪から悲鳴が上がった。
「きゃあっ!」
「狆よ!」
どこからともなく現れた狆が、駆け回っている。
リェンメイの狆はしっかり彼女の腕に抱かれたままだ。
「あの子だわ……!」
いま走り回っているのが、昨日ユェシャンが会った狆にちがいない。
宮女たちの足元をひとしきり駆け回って混乱させた狆は、どこかへ走り去っていった。
皆がぽかんと呆気に取られている中で、最初に声をあげたのはリェンメイだった。
「ほら、ごらんなさい。この子ではなかったと、これでわかったはずです」
もう一匹いることが確認できたのだから、タオリンも一旦引き下がるほかない。
「それはどうかしら。まだあなたの狆が犯人ではないときまったわけではありません」
尚も疑いの目を向けるタオリンに、リェンメイはフンッと鼻を鳴らす。
「言いがかりは程々にしてくださいませ」
リェンメイは狆を大事そうに抱えて、宮へと戻っていった。
その姿を悔しげな表情で見送ったタオリンが、見物していた宮女たちを振り返る。
「早急にさきほどの狆を捕らえなさい。捕らえた者には褒美を与えます」
宮女たちの目の色が変わり、狆が逃げ去っていった方向へ走っていく。
ユェシャンは、正妃のような振る舞いをするタオリンと現金な宮女たちの様子を呆気にとられながら眺めていた。
後宮の西側にある洗濯房は、房とは名ばかりのほぼ屋外。井戸があり、石畳みの上には大きな木桶が並んでいる。
屋根がある場所はほんの一部で、雪がちらつく日はその場所が取り合いになる。
今朝は寒風が身に染みるものの空は快晴で、洗濯日和になりそうだ。
後宮に来た当初は、見慣れぬ顔のユェシャンの素性を疑う者もいた。
『あんた、どこの所属だい?』
しかし彼女たちは、ユェシャンがこう答えるとサッと顔色を変えて途端に黙り込む。
『十三妃様の宮です』
十三妃――その言葉が後宮において免罪符のようになっていることに、ユェシャンは小気味良さを感じている。
呪われた毒婦には誰も触れたくないのだ。
その顔を見ただけで呪われるというのが後宮での通説らしい。
中には、十三妃と聞いただけでまるで呪われでもしたかのようにぶるぶる震えだす宮女までいる。
しかし呪われなどしないことは、彼女たちが身をもって証明している。
なにせ、目の前に本物の十三妃がいるのだから。
「よいしょっと」
木桶に水を汲み、サイカチの莢を浸けてこすれば、ぶくぶくと泡が立ってくる。
この泡が、油汚れを落とす洗剤となる。
あのあばら家の壁に絡みつく木樹木のひとつがサイカチだと気づいた時、ユェシャンは歴代の十三妃に感謝した。
きっと誰かが植えたにちがいない。
「本当に十三妃様なんているの? 輿入れの儀もなかったし、あの洗濯物も粗末な衣だけど」
「第一妃様がお茶に誘っても返事もよこさないらしいわよ。どれだけ傲慢なんだか」
ユェシャンは、洗濯に精を出す振りをしながら背後のヒソヒソ声に耳をそばだてた。
輿入れの儀とはなんだろうか。
ほかの妃たちは、後宮へ入る際に歓迎を受ける儀式でもあったのだろうか。
ユェシャンは最後だったため、妃たちがどのように輿入れしてきたのか知らない。
(それより、わたしの荷物はどうなっちゃったのかしら)
輿入れの際に持参した献上用の薬草類は、皇帝のもとへ届いたのだろうか。
ユェシャンの私物も、まずは確認をしてからと対応した女官に言われて没収されたままだ。
着の身着のまま、あのあばら家に案内されたっきり誰も訪れない。
当然、第一妃・桃凛の使いの者が伝令を持ってきた記憶もない。
なぜお茶の誘いを無視していると噂されているのかは知らないが、嘘を吹聴するのは勘弁してほしい。
宮女たちは、ユェシャンが洗い場に姿を現すたびに十三妃の噂をしながらサイカチの泡を興味津々な様子でチラチラ見る。
しかし誰も尋ねてはこない。
十三妃が持参した怪しいなにかだとでも思っているのだろう。
洗い終えた洗濯物を持って戻る途中、ほかの宮女たちの立ち話が聞こえた。
「リェンメイ様の狆が処刑されるらしいわよ」
「まあ……犬のせいにするの?」
「犬をかばって降格にはなりたくないんでしょ」
「あの狆、普段はおとなしい女の子なのにどうしちゃったのかしらね……」
ユェシャンは視線を地面に落とした。
昨日のあの子の潤んだ大きな黒目が脳裏をよぎる。
(殺されてしまうの……?)
飼い犬のしつけがなってなかったのなら、その咎は飼い主が受けるべきだ。
一度後宮内を駆け回ったぐらい大目に見てもいいのではないか。
しかし後宮は、さまざまな陰謀が渦巻いている。
妃の順番は、そのまま皇帝から寵愛されている順位を示していて変動もある。
隙あらば上位の妃を引きずり降ろそうと、日々水面下で腹の探り合いや陰湿ないやがらせが横行しているらしい。
リェンメイは第四妃。これを口実に降格させてやろうと狙っている輩がたくさんいるのだろう。
万年最下位の十三妃である蟲氏の妃は、そういう意味で気楽ではある。
瑞華国の皇帝は、国内の十三の氏族からひとりずつ妃を召し上げて後宮に住まわせるのが慣わしだ。
元は十二氏族だった制度に十三番目として蠱氏が加わったのは、四代前の御代からだという。
なんでも当時の皇帝が命を狙われ、それを助けたのが山奥で暮らす蠱氏一族だった。
皇帝は族長の娘をいたく気に入り、後宮へと連れ帰った。薬草やまじないの知識が豊富な彼女は、皇后の座にまで上り詰めたという。
それ以降、十三番目の氏族として蠱が追加された。
正直ありがた迷惑だ――そう思っているのはユェシャンだけではない。
この扱いを見るにつけ、皇帝をはじめ後宮の誰もが十三妃の存在を疎んじ、いないも同然に扱っている。
ただし呪われるのが怖いのか、ぼろっちい宮をあてがい食事も要求すれば出してもらえる。
だからユェシャンは、宮女の振りをして自ら食事を受け取りに行き、洗濯もしている。
族長の娘といっても蠱氏は娘を蝶よ花よとは育てない。
山奥で遭難しようとも、ひとりで逞しく生きていけるだけの知識と技術を叩き込まれるのだ。
小屋の裏手で洗濯物を干したユェシャンは、目の前に広がる薬草畑の手入れに取りかかった。
歴代の十三妃たちがここでどう生活していたのか、その一端がわかる。
ここで暮らしはじめた当初は、ただ雑草が生い茂っているだけだと思っていたのだが、よく見れば宝の山のような畑だったのだ。
『これは止血薬になるわね。こっちは……すごい、こんなに珍しい物が!?』
ユェシャンは夢中になって畑をきれいに整備していった。
おまけに、食用の根菜類まで植わっている。
主のいない間は、花を咲かせこぼれ種でまた実る自然の周期を繰り返していたのだろう。
(これで万が一、食事がもらえない日でも飢えをしのげる!)
歴代の十三妃の痕跡を紐解き、宮女の振りをして後宮内を闊歩する。
現在、皇帝にはまだ正妃がいない。
第一妃のタオリンがあたかも皇后のように振る舞い、彼女の取り巻きになっている妃たちと、それに反発する一派も存在することは確認できた。
皇帝の寵愛を巡って妃たちが壮絶な争奪戦を繰り広げるのは、後宮のあり方としては正しいのだろう。
しかしユェシャンは、顔すら見たことのない皇帝シュンウェイにまるっきり興味がないため、妃同士の争いに巻き込まれるのはごめんだと思っている。
ユェシャンは二年間、ひとりで慎ましやかに逞しく生きてきた。
その気になればいつだって後宮を抜け出せる自信がある。
実行しなかったのは、この暮らしもまんざらではないと思っているからだ。
荷葉飯を分け合って食べた狆がどうなってしまうのか気にはなるが、こんな立場では助けようがない。
(せめてここへ逃げてくれば、匿ってあげられるのに……)
もどかしい思いを抱えながらその日を過ごし、夕餉を受け取りに行こうと回廊を歩いていたユェシャンの耳に、揉めているような声が聞こえてきた。
中庭のほうからだ。
「この子ではありません。どうして信じていただけないのですか」
「そうは言っても、狆を飼っているのはあなただけなのですよ?」
声の主は、第四妃リェンメイと第一妃タオリンだった。
リェンメイは狆を胸に抱き、いまにも泣き出しそうな顔をしている。
今朝聞いた噂は、半分本当だったのだろう。
狆が処分されそうになっているのは事実だが、リェンメイは自己保身のために可愛がっている狆を犠牲にするつもりはないらしい。
「昨日のあの時間、この子はたしかにわたくしと一緒におりました」
「それをどうやって証明できて?」
「そんな意地悪なことをおっしゃらないでください」
アリバイを示せと迫るタオリンに、リェンメイがプイッと背を向ける。
その拍子に、ユェシャンに狆の顔がよく見える角度になった。
耳と首に桃色の飾りをつけた、行儀のよさそうな狆だ。
「あら……?」
ユェシャンは小さく呟いて首を傾げる。
怯えているせいだろうか、昨日の狆とはどうも顔つきがちがう。
それに体も小さい。
(もしかすると……)
ここでユェシャンの思考を邪魔すかのように、遠巻きに見ていた宮女たちの輪から悲鳴が上がった。
「きゃあっ!」
「狆よ!」
どこからともなく現れた狆が、駆け回っている。
リェンメイの狆はしっかり彼女の腕に抱かれたままだ。
「あの子だわ……!」
いま走り回っているのが、昨日ユェシャンが会った狆にちがいない。
宮女たちの足元をひとしきり駆け回って混乱させた狆は、どこかへ走り去っていった。
皆がぽかんと呆気に取られている中で、最初に声をあげたのはリェンメイだった。
「ほら、ごらんなさい。この子ではなかったと、これでわかったはずです」
もう一匹いることが確認できたのだから、タオリンも一旦引き下がるほかない。
「それはどうかしら。まだあなたの狆が犯人ではないときまったわけではありません」
尚も疑いの目を向けるタオリンに、リェンメイはフンッと鼻を鳴らす。
「言いがかりは程々にしてくださいませ」
リェンメイは狆を大事そうに抱えて、宮へと戻っていった。
その姿を悔しげな表情で見送ったタオリンが、見物していた宮女たちを振り返る。
「早急にさきほどの狆を捕らえなさい。捕らえた者には褒美を与えます」
宮女たちの目の色が変わり、狆が逃げ去っていった方向へ走っていく。
ユェシャンは、正妃のような振る舞いをするタオリンと現金な宮女たちの様子を呆気にとられながら眺めていた。

