毎年2月後半から転勤者、役職、職種ごとに発表される人事異動の内示で、支店内が都度ざわつく。
この時期の風物詩だ。
向瑛理が所属する営業部は、一度配属されると部署異動がほぼ無い。あるとしたら他部署への異動願いや職種転換希望を出した人のみ。
毎年1人異動してくるかどうかの閉鎖的な部署でもある。
瑛理は今のところ、異動予定は全くないので、毎年人事異動は新配属の営業があるかな?くらいで騒ぐほどではない。
変わり映えはしないが環境の変化があまり得意ではない瑛理にとっては過ごしやすい環境で助かっている。
年度末まであと1ヶ月、日中は春に向かっているが、まだ朝晩は風が冷たい日が続いていたある日、瑛理は会社の最寄りの小さな居酒屋で、大学時代からの友人・結奈と向かい合っていた。テーブルの上には空になりかけたグラスと、取り分けられたままの胡瓜とトマトスライス。
脂っこい物を大量に食べられなくなってくるお年頃、一旦箸休めをしていた。
話題はお互いの推しの話と、一定数の30代独身女性がよくする、リアル恋愛はもう無理じゃないかトーク。(ここは瑛理と結奈の偏見が入っています。)
「だからさあ、結局リアルの恋愛は面倒だ、ということでファイナルアンサー?」
結奈がストローをくるくる回しながら、いつもの調子で言う。
「それ言ったら元も子もないけど、FA。」
瑛理は苦笑しつつも、新しく届いたグラスを傾ける。
「理想の恋愛だな、と思う私の好きなBLドラマは全部”愛重め”。お互い愛し愛されて、ちょっと攻めがぐいぐいいって、執着する感じでそれが成立してる関係。ああいうの、最終的にハッピーエンドで最高じゃない?」
「それ、常に人道に反しないハッピーエンドのドラマを見てるから成立するやつだから。他の恋愛ドラマ見てみ?最近三角関係、不倫、浮気ばっかりじゃん。どろどろだよ?」
「わかってるよ。私は苦手だからそういう系が入る恋愛ドラマ観てないの。ドラマでくらい綺麗な恋愛してよ、幸せになってよって思うんだよね。ハッピーエンド至上主義最高!リアルに近いどろどろドラマは全拒否です。」
瑛理は肩をすくめた。
——とはいえ、だ。
現実問題、ドラマでよく見る理想的な恋愛が存在しないことは瑛理だってわかっている。
泥沼ドラマほどじゃないだろうと思っていたら、今の会社に入ってから、社内不倫や浮気がバレて修羅場だ、みたいな話が時々耳に入る。酷いと他の支店を巻き込んでの期中異動、みたいな。
瑛理にとっては、あまりに現実味のない話なので、もちろん人として最低だなと思いつつ、スケジュール管理どうしてるんだとかどうでもいいことを考える。
一途な人を見つけるのって大変だな、と他人事。
それに、瑛理は愛重めなBLドラマは大好きだけど、自分がその“愛重め”に耐えられるかといえば、話は別で……
必要以上に人に踏み込まれるのは苦手だし、スキンシップなんてもってのほかだし、頭では理想を語れても、現実では距離を取りたくなる。
「瑛理、そもそも急に近寄られたり、触られるの無理じゃん。」
「うん、無理。」
「じゃあ無理じゃん。」
「うるさいな。」
軽口を叩き合っていると、空いていた隣の席にスーツ姿の男性二人が座った。
ちらりと横目で見れば、どちらも整った顔立ちのいわゆる“イケメン”だ。思わず、瑛理は声のトーンを少しだけ落とす。
——さすがに、この話題は聞かれたくない。
結奈も同じことを思ったのか、会話は自然と当たり障りのないというか、主に結奈の最近の推し活について自然とシフトした。
注文を終えた隣の二人が、ぽつぽつと話し始める。聞くつもりはなかったのに、距離が近いせいで、どうしても内容が耳に入ってきてしまう。
そして——。
しばらくして。
一人が、突然、泣き出した。
(え、え……!?)
瑛理は思わずグラスを持つ手を止める。
結奈も気になったようで目が合う。
どうやら名古屋への転勤が決まり、付き合っていた彼女に報告したところ、「じゃあ別れよう」とあっさり言われたらしい。三年付き合い、プロポーズも考えていたというのに。
しかも。
本命は東京にいて、二股だったからちょうどよかった、と。
(うわ……それは……)
さすがに、えりも同情せざるを得なかった。
——その時だった。
「やっぱりリアルは裏切られるから、もうアイドルガチ恋でいいじゃん!」
結奈が、グラスをドン、とテーブルに置いた。
店内の空気が、一瞬で揺れる。
「ちょ、ちょっと酔ってるの?すみません〜。落ち着いて!」
慌てて瑛理が取り繕うが、当の本人はどこ吹く風だ。
いつのまにか結奈が新しく注文したグラスが空いている。
——ペースが早い!
「結奈、ゆいちゃん?アイドルも裏切るじゃん。熱愛出るじゃん。だったらアニメでいいじゃん。」
——わかってる。ツッコミどころは、そこじゃない。
瑛理は自分はほぼ素面だと思っていたが、知らないうちに酔いが回っていたのか完全に方向を見失っていた。
その時、隣から笑い声が漏れる。
泣いていない方の男性だ。泣いていた男性の涙は止まったようで、目がぱちくりして唖然としている。
「二人とも、おもしろすぎるでしょ。」
「あ、すみません。気にせず泣いててください。」
「ふはっ、聞いた?“泣いててください”だって。」
「……いや、そこは止めるとこでしょ!?」
ようやく口を開いた“泣き虫くん”に、結奈が即座に返す。
「いや、泣いた方がスッキリするじゃん。ねえ?」
「うんうん、泣け泣け青年!」
——どう考えても、初対面の距離感じゃない。
それでも、どうせ二度と会わないだろうという気軽さが、四人の間に妙な一体感を生んでいた。
「どうせなら聞きます?こいつの失恋話。」
「力にはなれないけどいい?ていうか、ほぼ聞こえたんですけど。」
「忘れろ忘れろ〜!プロポーズ前にわかってよかったじゃん!」
「運が良かったと思いなさいな!」
「そうかなあ……」
「また泣いてる〜!枯れるまで泣きな〜!」
軽口の応酬の中で、瑛理はふと口にした。
「涙は、そっちの人がいくらでも拭いてくれるでしょ。」
「そこ、私たちが拭いてあげる、とこらじゃ?」
「無理だもん、知らない人に触るの。」
あっさり言い切ると、ゆいが横から補足する。
「瑛理はね〜、頑張ったけど無理だったんだよね。」
「うん。だから私はもう、ハッピーエンド確定のやつでドキドキしてればいいの!」
そう言って笑うものの、少しだけ視線が落ちる。
少し瑛理の気持ちが落ちたのを察した結奈が、すぐに明るく返した。
「はいはい、記憶消したんでしょ?忘れな〜!」
「だね!今はこの泣き虫くん!」
空気を変えるように声を張る。
「イケメンだし、すぐ次見つかるって!」
「そうそう、若そうだし!」
「いや、俺ら三十一だから。」
「男の人はアラサーがモテます!」
瑛理はふざけて敬礼ポーズをしながら言う。
「年上からのありがたい意見だから聞いておきなさい!」
「え、年上!?すみません!」
「そ、年上。むしろ同い年くらいに見えてたなら嬉しいくらいだから。」
笑いが広がる中、ふと前を見ると——。
結奈が、うとうとと揺れていた。
「……かわいい」
小さな声が聞こえた気がした。
顔を声の方に向けると、“泣き虫くん”が結奈を見ていた。
(え、ここでラブストーリー?)
一瞬そう思ったが、すぐに頭を振る。
——いやいや、安直すぎる。別れたばかりでこの発言はいただけない。
瑛理はお会計ボタンを推し、店員が伝票を持ってきてくれたところで、立ち上がる。
「相方が限界なので、またどこかで!」
結奈を支えながら、軽く手を振る。
「次会えたら連絡先交換しましょ!ドラマみたいに!笑」
「奇跡が起きたらね!」
そんな軽口を交わして、店を後にした。
飲む前よりもさらに冷たくなっている夜風に当たりながら歩く帰り道。
「……やらかした。」
結奈が頭を抱える。
「面白かったからいいじゃん。」
「久々に同年代の異性と話したわ。」
「私は会社にいるけど、あんな素出したの久々。」
笑いながらも、どこか満たされた気持ちが残る。
改札で別れ、ひとり歩き出す。
(ちょっと、楽しかったな)
そんなふうに思えるくらいには。
——ただの、一期一会のはずだった。
その数週間後。
4月1日。
朝から支店内は新しい異動者の荷物の整理や、年度末の締め作業を行い忙しない雰囲気が漂っている。
瑛理も例外ではなく、電車が少し遅れて始業ギリギリで滑り込む。
瑛理の目の前に来る予定の新メンバーは上長とすでに打ち合わせに入っているみたいだ。
少し時間を空けて落ち着いたころに支店全体へ向けて異動者の挨拶が始まる。
ふと、前で並ぶスーツの列を見た瞬間、瑛理の時間は止まった。
(……え?)
そこに並んでいたのは——。
あの夜、隣で泣いていた男と、笑っていた男。
完璧な営業スマイルを貼り付けたまま、瑛理の頬がひくりと引きつる。
笑っていた男と、視線が合う。相手は少しだけ目を見開いて、そして、笑った。
——一瞬で、バレた。絶対こっち見て笑った。
しかも、
泣き虫くんは別部署。
そしてもう一人は——自分のいる営業部へ配属。
(あ、終わった)
瑛理は心の中で、静かにそう呟いた。
この時期の風物詩だ。
向瑛理が所属する営業部は、一度配属されると部署異動がほぼ無い。あるとしたら他部署への異動願いや職種転換希望を出した人のみ。
毎年1人異動してくるかどうかの閉鎖的な部署でもある。
瑛理は今のところ、異動予定は全くないので、毎年人事異動は新配属の営業があるかな?くらいで騒ぐほどではない。
変わり映えはしないが環境の変化があまり得意ではない瑛理にとっては過ごしやすい環境で助かっている。
年度末まであと1ヶ月、日中は春に向かっているが、まだ朝晩は風が冷たい日が続いていたある日、瑛理は会社の最寄りの小さな居酒屋で、大学時代からの友人・結奈と向かい合っていた。テーブルの上には空になりかけたグラスと、取り分けられたままの胡瓜とトマトスライス。
脂っこい物を大量に食べられなくなってくるお年頃、一旦箸休めをしていた。
話題はお互いの推しの話と、一定数の30代独身女性がよくする、リアル恋愛はもう無理じゃないかトーク。(ここは瑛理と結奈の偏見が入っています。)
「だからさあ、結局リアルの恋愛は面倒だ、ということでファイナルアンサー?」
結奈がストローをくるくる回しながら、いつもの調子で言う。
「それ言ったら元も子もないけど、FA。」
瑛理は苦笑しつつも、新しく届いたグラスを傾ける。
「理想の恋愛だな、と思う私の好きなBLドラマは全部”愛重め”。お互い愛し愛されて、ちょっと攻めがぐいぐいいって、執着する感じでそれが成立してる関係。ああいうの、最終的にハッピーエンドで最高じゃない?」
「それ、常に人道に反しないハッピーエンドのドラマを見てるから成立するやつだから。他の恋愛ドラマ見てみ?最近三角関係、不倫、浮気ばっかりじゃん。どろどろだよ?」
「わかってるよ。私は苦手だからそういう系が入る恋愛ドラマ観てないの。ドラマでくらい綺麗な恋愛してよ、幸せになってよって思うんだよね。ハッピーエンド至上主義最高!リアルに近いどろどろドラマは全拒否です。」
瑛理は肩をすくめた。
——とはいえ、だ。
現実問題、ドラマでよく見る理想的な恋愛が存在しないことは瑛理だってわかっている。
泥沼ドラマほどじゃないだろうと思っていたら、今の会社に入ってから、社内不倫や浮気がバレて修羅場だ、みたいな話が時々耳に入る。酷いと他の支店を巻き込んでの期中異動、みたいな。
瑛理にとっては、あまりに現実味のない話なので、もちろん人として最低だなと思いつつ、スケジュール管理どうしてるんだとかどうでもいいことを考える。
一途な人を見つけるのって大変だな、と他人事。
それに、瑛理は愛重めなBLドラマは大好きだけど、自分がその“愛重め”に耐えられるかといえば、話は別で……
必要以上に人に踏み込まれるのは苦手だし、スキンシップなんてもってのほかだし、頭では理想を語れても、現実では距離を取りたくなる。
「瑛理、そもそも急に近寄られたり、触られるの無理じゃん。」
「うん、無理。」
「じゃあ無理じゃん。」
「うるさいな。」
軽口を叩き合っていると、空いていた隣の席にスーツ姿の男性二人が座った。
ちらりと横目で見れば、どちらも整った顔立ちのいわゆる“イケメン”だ。思わず、瑛理は声のトーンを少しだけ落とす。
——さすがに、この話題は聞かれたくない。
結奈も同じことを思ったのか、会話は自然と当たり障りのないというか、主に結奈の最近の推し活について自然とシフトした。
注文を終えた隣の二人が、ぽつぽつと話し始める。聞くつもりはなかったのに、距離が近いせいで、どうしても内容が耳に入ってきてしまう。
そして——。
しばらくして。
一人が、突然、泣き出した。
(え、え……!?)
瑛理は思わずグラスを持つ手を止める。
結奈も気になったようで目が合う。
どうやら名古屋への転勤が決まり、付き合っていた彼女に報告したところ、「じゃあ別れよう」とあっさり言われたらしい。三年付き合い、プロポーズも考えていたというのに。
しかも。
本命は東京にいて、二股だったからちょうどよかった、と。
(うわ……それは……)
さすがに、えりも同情せざるを得なかった。
——その時だった。
「やっぱりリアルは裏切られるから、もうアイドルガチ恋でいいじゃん!」
結奈が、グラスをドン、とテーブルに置いた。
店内の空気が、一瞬で揺れる。
「ちょ、ちょっと酔ってるの?すみません〜。落ち着いて!」
慌てて瑛理が取り繕うが、当の本人はどこ吹く風だ。
いつのまにか結奈が新しく注文したグラスが空いている。
——ペースが早い!
「結奈、ゆいちゃん?アイドルも裏切るじゃん。熱愛出るじゃん。だったらアニメでいいじゃん。」
——わかってる。ツッコミどころは、そこじゃない。
瑛理は自分はほぼ素面だと思っていたが、知らないうちに酔いが回っていたのか完全に方向を見失っていた。
その時、隣から笑い声が漏れる。
泣いていない方の男性だ。泣いていた男性の涙は止まったようで、目がぱちくりして唖然としている。
「二人とも、おもしろすぎるでしょ。」
「あ、すみません。気にせず泣いててください。」
「ふはっ、聞いた?“泣いててください”だって。」
「……いや、そこは止めるとこでしょ!?」
ようやく口を開いた“泣き虫くん”に、結奈が即座に返す。
「いや、泣いた方がスッキリするじゃん。ねえ?」
「うんうん、泣け泣け青年!」
——どう考えても、初対面の距離感じゃない。
それでも、どうせ二度と会わないだろうという気軽さが、四人の間に妙な一体感を生んでいた。
「どうせなら聞きます?こいつの失恋話。」
「力にはなれないけどいい?ていうか、ほぼ聞こえたんですけど。」
「忘れろ忘れろ〜!プロポーズ前にわかってよかったじゃん!」
「運が良かったと思いなさいな!」
「そうかなあ……」
「また泣いてる〜!枯れるまで泣きな〜!」
軽口の応酬の中で、瑛理はふと口にした。
「涙は、そっちの人がいくらでも拭いてくれるでしょ。」
「そこ、私たちが拭いてあげる、とこらじゃ?」
「無理だもん、知らない人に触るの。」
あっさり言い切ると、ゆいが横から補足する。
「瑛理はね〜、頑張ったけど無理だったんだよね。」
「うん。だから私はもう、ハッピーエンド確定のやつでドキドキしてればいいの!」
そう言って笑うものの、少しだけ視線が落ちる。
少し瑛理の気持ちが落ちたのを察した結奈が、すぐに明るく返した。
「はいはい、記憶消したんでしょ?忘れな〜!」
「だね!今はこの泣き虫くん!」
空気を変えるように声を張る。
「イケメンだし、すぐ次見つかるって!」
「そうそう、若そうだし!」
「いや、俺ら三十一だから。」
「男の人はアラサーがモテます!」
瑛理はふざけて敬礼ポーズをしながら言う。
「年上からのありがたい意見だから聞いておきなさい!」
「え、年上!?すみません!」
「そ、年上。むしろ同い年くらいに見えてたなら嬉しいくらいだから。」
笑いが広がる中、ふと前を見ると——。
結奈が、うとうとと揺れていた。
「……かわいい」
小さな声が聞こえた気がした。
顔を声の方に向けると、“泣き虫くん”が結奈を見ていた。
(え、ここでラブストーリー?)
一瞬そう思ったが、すぐに頭を振る。
——いやいや、安直すぎる。別れたばかりでこの発言はいただけない。
瑛理はお会計ボタンを推し、店員が伝票を持ってきてくれたところで、立ち上がる。
「相方が限界なので、またどこかで!」
結奈を支えながら、軽く手を振る。
「次会えたら連絡先交換しましょ!ドラマみたいに!笑」
「奇跡が起きたらね!」
そんな軽口を交わして、店を後にした。
飲む前よりもさらに冷たくなっている夜風に当たりながら歩く帰り道。
「……やらかした。」
結奈が頭を抱える。
「面白かったからいいじゃん。」
「久々に同年代の異性と話したわ。」
「私は会社にいるけど、あんな素出したの久々。」
笑いながらも、どこか満たされた気持ちが残る。
改札で別れ、ひとり歩き出す。
(ちょっと、楽しかったな)
そんなふうに思えるくらいには。
——ただの、一期一会のはずだった。
その数週間後。
4月1日。
朝から支店内は新しい異動者の荷物の整理や、年度末の締め作業を行い忙しない雰囲気が漂っている。
瑛理も例外ではなく、電車が少し遅れて始業ギリギリで滑り込む。
瑛理の目の前に来る予定の新メンバーは上長とすでに打ち合わせに入っているみたいだ。
少し時間を空けて落ち着いたころに支店全体へ向けて異動者の挨拶が始まる。
ふと、前で並ぶスーツの列を見た瞬間、瑛理の時間は止まった。
(……え?)
そこに並んでいたのは——。
あの夜、隣で泣いていた男と、笑っていた男。
完璧な営業スマイルを貼り付けたまま、瑛理の頬がひくりと引きつる。
笑っていた男と、視線が合う。相手は少しだけ目を見開いて、そして、笑った。
——一瞬で、バレた。絶対こっち見て笑った。
しかも、
泣き虫くんは別部署。
そしてもう一人は——自分のいる営業部へ配属。
(あ、終わった)
瑛理は心の中で、静かにそう呟いた。
